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元旦限定のバーゲン「企画商品」を一体誰が使ったのか?

−2009年1月1日 JR東日本からのお年玉!?「正月パス」を使って見る−



TAKA  2009年02月15日



「正月パス」はお年玉か?バーゲン商品か?



 ※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。

 ☆ 元旦に「初参り」も良いが「お得な切符」で一足伸ばす誘惑に駆られて「正月パス」でショートトリップ

 2009年、今年の正月は暦の廻りが良く一番長いパターンでは12月27日〜1月4日の9連休になり、本当の意味での「長期連休」が実現しました。
 私の場合「確実に取れる長期休暇」が正月しか無いため、本当ならば絶好の「長期・遠距離旅行」の機会で、実を言えば9月の段階から「何処に出かけようかな?」と長期休暇でないと行けない「欧州・米州」方面の旅行を含めて色々と「机上の計画」を考えて居ました。
 しかしながら多忙にかまけて旅行の申込をしないでウダウダと時のみが経過して行き正月が近づいてきた段階で、休みな筈の12月29日に仕事関係の忘年会が入り結局冬休みの外出可能期間が12月30日〜1月2日の4日間に制約され、近場の3泊4日旅行(韓国or沖縄)に変更しようと迷って居ましたが、2008年9月のリーマンショック以降の景気悪化もあり私の中でも自粛・緊縮ムードが高まり、今年は何年ぶりかの「寝正月」とする事にしました。

 けれども、流石に1週間以上「家でジッとしている」訳には行きません。流石に何処かに日帰りで気分転換に出かけようと思い、「何かいい日帰り旅行は無いかな?」と直前まで考えて居た所、偶々JR東日本の駅のポスターで発見したのが「 正月パス 」でした。
 JR東日本が発売して居る「乗り放題型」のフリー切符は、「 3連休パス土日きっぷ 」が有りますが、今回利用した正月パスは形としては3連休パスと同じ形で「正月1日だけ限定で使えるフリーパス」という感じのフリー切符です。
 東京に住んで居る私はJR東日本の駅で色々と広告が出て居るので、「3連休パス・土日きっぷ」の存在についてはかなり詳しく知って居ました。しかし仕事も有りナカナカ泊まりがけの旅行に出る機会が無く「充実している」といえるJR東日本のフリー切符を使う機会が無かったので、今回「1日限定のフリー切符」と厳しい条件でしたが、此れを使って「元旦の気分転換ショートトリップ」に出る事にしました。

 私自身「広範囲でフリーで1日乗り放題」の切符を使っての旅行は、過去に1回まだ中学生だった約20年前の国鉄分割民営化時の「 謝恩フリー切符 」を使って、小学生の弟と二人で日帰り旅行に出た事しか有りません。
 この時には、切符購入時には池袋西口で徹夜して並んで購入し、国鉄最終日のフリー切符有効日には弟と二人で「東京⇒会津若松⇒新潟⇒長野⇒名古屋⇒東京」と大根雑の列車に乗りながら廻ったものの、「観光」的な物は会津若松で鶴ヶ城見学と親戚の先祖の墓参りをしただけで、それ以外は「もの凄く混んで居た」というイメージしか残らず、その為その後約20年間「期間限定の特別なフリー切符」を使っての旅行から私を遠ざける事になりました。
 今回そのトラウマから脱して、再び「期間限定の特別なフリー切符」を利用する事になりましたが、この様な切符は「フリー切符だから少しでも多く乗って元を取りたい」という欲望と「珍しい路線に沢山乗りたい」「折角だから何か観光もしたい」との希望が交錯して、(それが楽しいという事もありますが)プランを組むのに非常に悩む事になります。
 その為、今回の旅行では「雪が見たい」「普段は乗らないローカル線に乗りたい」という希望を満たす為に「長野・福島方面、山形方面、三陸方面」の3方面に絞りプランを考えた上、結局「善光寺初参り」「喜多方ラーメン」という観光要素に「飯山線・只見線」という「雪深いローカル線」を絡めた下記の様な旅行ルートを組んで、「正月パス」を使った日帰りの旅に出る事にしました。20年前には「非常に苦労した」フリー切符の旅は果たしてどんな結果になったのでしょうか?

1月1日 正月パスでの鉄道旅行行程
・東京6:24⇒長野8:04(あさま501号)〜善光寺初参り〜長野9:59⇒越後川口12:51(飯山線)・越後川口12:57⇒13:09小出
・小出13:17⇒17:18会津若松(只見線)17:22⇒喜多方17:37(ラーメン夕食)18:50⇒20:54新津20:58⇒21:17新潟21:29⇒23:13大宮(Maxとき352号)

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 ☆ 「正月パス」で遠出に必須な「東京 朝発・夜着」の新幹線の状況は?

 確かに約20年前に私が経験した「謝恩フリー切符」は、10万枚限定発売という事で買うのにも「徹夜で並ぶ」という状況の上に利用した人達が「少しでも遠くへ行こう・少しでも沢山乗ろう」という目的で動いた為に、新幹線や一部夜行列車は大根雑して混乱すら引き起こした事を覚えて居ます。
 実際の所今回は他にも「3連休パス・土日きっぷ」など「似た感じの商品」が定期的に売り出されて居るので、必ずしも「正月パス」に集中する事は無いとは予想出来ます。そういう意味ではこの「フリー切符」販売で混雑する可能性は低いと言えます。

 とは言っても、JR東日本が駅構内に多数のポスターを貼りかなりの宣伝をして其れなりの知名度を得て居ると予測出来る状況です。実際は「繁忙期で有る年末年始の中で唯一の閑散期で有る元旦」に「(私の様に)意外に暇にしている人達がフリー切符に釣られて動く」とも言えますし「幾らお得感のあるフリー切符でも元旦に客が動くのか?」という問題も有ります。
 という事で、私が乗った上記のルートで実際にどれ位人が利用していたのだろうか?という事を、利用の実感として見たいと思います。只・・・問題は車内の混雑の状況は見れても利用者のどれ位が「正月パス」の利用客は分からない点に有ります(目印が何にも無いし雰囲気でしか分からない)。
 しかしながら、「どれ位の人が利用して居るか?」という雰囲気は分かります。それを基にしてチョット考えて見たいと思います。

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 先ずは私の行程の中で2回使った「新幹線」の状況です。この様な「フリー切符」では、新幹線はその速達性が大きな武器となり、「より多く乗りたい」「より遠くまで移動したい」という「基を取る行動」を達成するには重要なツールとなり、東京圏から「正月パス」を利用して遠出を使用とする人達の大部分は使用すると思いますので、此処の状況は正月パスの利用率を見るのに一つの物差しになると思います。
 実際フリー切符では「より多く乗りより遠くへ移動したい」という気分になると書きましたが、その為には「新幹線で距離を稼ぐ」必要が有ります。私もご他聞に漏れずその様な考えを持って居たので、一番良い方法は長距離新幹線で有る「はやて・つばさ」を使い青森・秋田方面へ行くのが良いのですが、遠出すると「電車に乗るだけ」になってしまうので、今回のプランでは長野新幹線で長野(善光寺)に向かい、帰りは新潟から上越新幹線で帰る事にしました。
 先ずは行きに使った「長野新幹線」です。利用したのは長野新幹線の始発列車に当る東京6:24⇒長野8:04のあさま501号でした。

あさま501号 東京⇒長野 利用状況①
 
左:鉄道マニアが写真を撮って居る?正月朝6時の東京駅 右:あさま501号の自由席にはデッキに立ち客多数

 元旦東京駅に着いたのは5時45分頃でした。新幹線は原則として始発6時以降発車で、しかも運転時間2時間程度の近距離である長野新幹線の始発は東北方面への「やまびこ」等の後に出発するので、駅売店で朝食の駅弁を仕入れた後、先ずは駅ホームの状況を見ました。
 あさま501号の指定券を買い、ホームに上がると先発の新幹線に乗る人等が多数居ました。乗客のかなりの人達は大きな荷物を持って居ます。「元旦早朝の始発新幹線」に乗る人となると「遅い帰省客or正月パスの利用客」という位に限定されると考えても過激では無いと思います。
 そう見ると大きい荷物を持つ人=帰省客・荷物の少ない旅支度の人=正月パスの利用客と見て間違い無いかもしれません。比率は3:1位の感じで帰省客の方が圧倒的に多い感じがしました。又「正月パス」利用客と思しき人でも、「如何にも鉄ヲタ」的に写真をバシバシ撮り回る人は比較的少なく見えました。この辺りは特徴的なのかもしれません。

あさま501号 東京⇒長野 利用状況②
 
左:指定席はほぼ満席(只朝で指定席は買えた)右:終点長野では帰省の荷物・土産物を持った人が多数下車

 今回「正月パス」は4回まで指定席券が取れるので、当日朝ですが出発前に指定席を購入しました。この段階で偶々C席が押えられましたが、みどりの窓口での話では、指定席残数は少なかった様です。実際あさま501号に乗り大宮〜高崎間で車内を一巡して見ましたが、(写真に有る通り)指定席はほぼ満席で自由席はデッキに立ち客がかなり出る位の混雑率でした。直前でも指定席が取れた・自由席利用客が多かったという事は、かなりの利用客が帰省客だったのかもしれません。
 大宮から私の隣の2席には、如何にも「正月パスを使って旅行しています」感じ満々の親子連れが座り、私も早朝だったので高崎出発後には寝てしまい、起きたのは長野到着直前でした。長野新幹線終点の長野時点で、自由席は立ち客が無くなっており指定席も空席がチラチラ有る位にまでなって居ました。降車客を見てみると、やはり比較的大きな荷物を持った人が多く、この場面においては「帰省客がメイン」で有ったのは間違い無いと思います。
 実際「正月パス」は長野単純往復では元が取れません。此処からかなりの長距離移動をしなければ「正月パスを使った」意味は有りません。長野からの移動経路・ダイヤ等を考えるとその様な人も少ないという事からも、長野新幹線の場合「正月パス」の増客効果という影響は殆ど無かったと見て間違い無いでしょう。

Maxとき352号 新潟⇒東京(大宮) 利用状況
 
左:上越新幹線は2階建てMaxが主役だが・・・@新潟駅  右:最終上り上越新幹線は自由席・指定席とも空席多数

 帰りは新潟から上越新幹線上り最終のMaxとき352号新潟21:29⇒大宮23:13を利用しました。この列車も秋田・酒田方面からの上り最終いなほ号を受ける訳で無く新潟県内⇒東京間の輸送がメインの列車であり、「正月パス」を使い長距離移動をするには相応しい列車とは言えません。
 新津からの列車が遅れて、新潟駅には新幹線出発直前に到着し、在来線ホームから新幹線ホームまでダッシュする事になってしまいました。しかし元旦の夜9時半頃という事もあり、新潟駅構内は閑散として居り乗換の為に走っても障害は有りません。この様な状況ですから新幹線車内は閑散として居り新潟出発段階で乗車率は指定席・自由席共に2割橋の程度でした。しかも客層的には「大きな荷物を持って居ない」ので帰省帰りと言う訳で無く、「どんな要件で元旦の上り最終を利用して居るのか?」分からない感じの客層でした。
 Maxとき352号は新潟県内は各駅停車に止まって行きます。しかしながらこの列車は長岡で金沢方面から最終の「北越9号」を受けるものの越後湯沢では「はくたか号」を受けないので、長岡でチョット多めに乗ってくる以外は各駅とも数名/両程度しか乗って来ません。結果として大宮到着時点で乗車率が3割強という寂しい乗車率でした。
 結果として、やはり元旦という事が大きく影響して居るのか?東京行き最終新幹線の割りには寂しい乗車率でした。只11月に新潟に行った時に同じ時間帯の新潟駅を見ましたが、やはりそんなに人が多い感じはしませんでした。其処から見て上越新幹線自体が新潟でいなほ号連絡と越後湯沢ではくたか号連絡の役割を合わせて持って居る列車以外は、日常的に「輸送力過剰」でありその状況が元旦に余計現れたと言うのが、私の見た状況なのかもしれません。


 ☆ 閑散として居る筈の地方の長大ローカル線が「正月パス」で変貌か?

 私の今回の正月パス利用の旅行の本当の目的は「丑年だからこその善光寺参り」と「冬だからこその雪深いローカル線に乗りに行く」事であり、有る意味新幹線は「アクセス手段」であり、本命は雪深いローカル線で有る「飯山線・只見線」に乗ることでした。
 飯山線・只見線共に「雪深い所を走る」鉄道であり(飯山線の森宮野原は「駅における最高積雪量」の記録駅)、しかもどちらも国鉄再建時の「 特定地方交通線 」の特例要件(飯山線⇒ピーク時乗客が一方向1時間1,000人を超す・只見線⇒積雪で代替輸送道路が10日/年以上閉鎖)で廃止を免れた路線で有る事から、「有数のローカル路線」で有る事は間違い無く私の希望に合致する事は間違い無いと思い、正月パスで楽しみに出かけました。

飯山線 長野⇒越後川口 利用状況
  
左:長野駅で出発を待つ飯山線気動車 中:戸狩野沢温泉で1両編成に減ると車内には立ち客が・・・ 右:終点越後川口では上越線に乗り変えて次を目指す人が多数

 先ずは飯山線です。始発の新幹線に乗って長野に行っても接続が悪く、長野⇒新潟と県境を越える列車は8本しか無くしかも長野5:16発の次は9:59発と余り便利な状況では有りません。まあ今回はその接続の悪さの間隙を縫って善光寺参りを行ったので何とも言えませんが、流石に飯山線で県境を越える人が少ない証なのでしょう。
 しかしながら9:59発の列車は戸狩野沢温泉までは2両編成で、それでも立ち客のでる状況です。飯山までの近郊利用客や戸狩野沢温泉への観光客がかなり多い感じでした。実際「ピーク時乗客が一方向1時間1,000人を超す」の需要が有ったのは長野口ですし、戸狩野沢温泉までの区間列車も多い事から、この区間の利用客が比較的多い事は間違い有りません。
 その1両が減った戸狩野沢温泉で確かに「乗客が減った」物の、それでも立ち客が出る状況で、しかもそれがずっと新潟県に入っても続きます。客層を見ると結構大きな荷物を持つ人も居るので「観光客かな?」とも思ったのですが実際の所カメラを持った人も結構多く、鉄道マニア系の人も多いのかな?とは感じました。
 という訳で、飯山線の車内で大きなカメラを持った「如何にも鉄道マニア系」の人2人に「どんな切符で何処から来ましたか?」と聞いたら、2人は「18キップで大阪から」と「普通に切符を買い札幌から関西に行きその帰り」との事でした。それ以外の方に聞いて居ないのであくまで限定的な情報ですが、JR東日本管内で正月に乗る鉄道マニア=正月パスを使って居ないという状況で、しかも販売範囲のJR東日本管内に住んで居ない聞いた2人は「正月パス」の存在すら知りませんでした。此れだけで推測するのは危険ですが、正月パスを「乗り廻し」という形で使用している人は(飯山線内では)多く無いのかな?とは感じました。

只見線 小出⇒会津若松 利用状況
  
左:小出駅で出発を待つ只見線 中:只見線県境区間でも2両編成で立ち客が!! 右:「雪の中の交換シーン」ではマニアが多数撮影を・・・@越後川口

 飯山線に乗った後は、「秘境路線」と言う事の出来る程のローカル線で有る只見線に乗って見る事にしました。
 只見線は新潟県魚沼地方のの小出と福島県会津地方の会津若松を結ぶ路線でこの区間には国道252号線「六十里越」が通って居り、昔から南の八十里越え(現在は未だ国道が未開通)と並んで越後(魚沼)と会津を結ぶ重要な交通路で有ると同時に、一部は 只見川総合開発 に伴う電源開発の為に作られた路線です。しかしながら現在では六十里越を通る地域流動が減少して居る事に加え電源開発も終わり沿線の只見地域で過疎化が進み典型的なローカル線となっています。
 その様な情勢の変化により「過去の路線」となってしまい典型的なローカル線になって居ますが、国道252号線(六十里越)が冬季通行止めになる為、只見線は「国鉄再建時の特定地方交通線の例外」と認定されて今まで存続しています。しかしながら只見線は(特に中間部の只見地域で)「典型的な過疎ローカル線」と言う感じになっており、「全線通して運転して居るのは1日3本」「全線を通して使う人はほぼゼロ」と言う非常に厳しい状況になっています。

 只見線はその様なローカル線なので、今回の旅行では「冬の田舎のローカル線」の孤独な風情を楽しもうと訪問しましたが・・・。越後川口で飯山線を降りて上越線列車に乗り小出に着いたのは只見線の会津若松行き列車が出発する約8分前でした。列車が到着すると飯山線車内で見かけた人数人を含む20名近い人が跨線橋を渡り駅の構内の端に有る只見線ホームに向かいます。何時もはこんなに乗換客が居るとは思えません。(私を含めて)飯山線〜只見線を梯子する人が居る事から考えると、やはり「正月パス特需」なのでしょうか?
 ホームには430Dに用いられるキハ40系が2両編成で待って居ます。隣に留置されて居る車両を含めて2両編成です。只見線はそんなに需要の有るローカル線には見えません。今日はやはり「正月パス特需」を睨んで増結されたのでしょうか?
 その停車中の車内に入って見ると・・・驚きは倍増です。既に2両編成の列車の車内には先客が沢山居り座席が殆ど埋まって居る状況です。しかも「普通に乗って居る」感じの乗客ではなく大きな荷物を持った「家族連れ」やカメラを持った「如何にも乗る事が目的」の人達がかなりの割合を占めて居ます。
 実際乗客の中で「家族連れ」が4割・カメラ持ち等で「如何にもマニア」的な人が約半分・それ意外が普通の乗客という比率でした。小出から客の乗降を見ると家族連れの帰省客?と思しき人が入広瀬・只見・会津川口で数組みずつ降車すると同時に只見より先の駅でそれなりに乗車が有り、全線を乗り通す「乗る事が目的の客」が基礎となり結局会津柳津〜会津若松間では又立ち客が出る状況に逆戻りとなりました。
 又会津川口では10分強の運転停車と唯一小出行きの列車と交換しましたが、此方の会津若松行きも向こうの小出行きも両方ともカメラを持ったマニアの数が多く、両方の列車が長時間停車した会津川口の駅はさながら「撮影会」状態になって居ました。
 元々ローカル線の只見線は「青春18キップ」「土日きっぷ・3連休パス」などの「乗り放題きっぷ」発売の時期には良く混雑すると聞きます。今回の場合「正月パス」と「青春18キップ」両方の期間中だった為「どの切符を使った乗る事が目的の客が多かったか?」は分かりませんが、少なくとも傾向は今回の正月の只見線にも当てはまったのでは?と思います。

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 ☆ 果たして「正月パス」のユーザーは「時期を外した帰省客」か?「鉄道マニアの旅行」か?「普通の人が中距離日帰り旅行に出た」のか?

 今回、「正月パス」というお得なキップを買い普通は「日帰り旅行」などには出ない旅行に、偶々幾つかの偶然が重なって出る事になりました。まあ私的には12,000円のキップで「善光寺参り」をして「雪のローカル線」を見る事が出来たのですから、かなり「お得な旅行だった」と言う事が出来るでしょう。正月パスは基本的に「乗り放題キップ」なので、鉄ヲタ的な乗り潰しをすれば基本的には比較的簡単に元が取れます。しかし正月パスの有効な活用法は他にもあります。
 実際、今回辿ったルートを(指定席を含めて)正規にキップを買うと24,750円になりますが、正月パスでは12,000円で済みます。此れから考えると私の正月旅行は「正月パス」を使った事で約半分の費用で済んだ事になります。私の場合距離の出る青森・秋田方面には行って居ませんから、お得度合いは限定的と言えるかも知れません。実際東京⇒青森は片道で16,640円・東京⇒秋田は片道で16,810円・東京⇒盛岡は片道で13,840円と言うのが指定席普通運賃ですから、東北新幹線に乗り盛岡以遠の何処かに片道で使っただけで正月パスはかなりお得なキップになった事は間違い有りません。
 又日帰り旅行と言う点で見ると往復で12,000円を使えば元が取れるので「元が取れる旅行の範囲」はもっと近くなります。実際東京⇔新白河・上田・越後湯沢で指定席往復で運賃+特急料金が12,980円と言う事から、例えば「正月パスでガーラ湯沢に日帰りスキー」と言うパターンでも(少しですが)日常より正月パスでお得になります。

 この様な事から「正月パス」を使って元を取る方法は、「乗り潰し・遠方への片道利用・チョット遠い所への日帰り往復旅行」など複数あります。又想定される客層には「乗り潰し⇒鉄道マニア・遠方への片道利用⇒時期が外れた帰省客・チョット遠い所への日帰り往復旅行⇒普通の人がキップに引かれて旅行に出た」という様な人達が想像出来ます。
「正月パス」は元が取れる使い方で色々と工夫出来るキップで、その使い方から色々な利用層が想像できますが、実際の所正月元旦と言う特殊な日に販売したキップなので、複数の利用方法想定出来る中でどの様に利用されたのでしょうか?
 先ず、私が利用した経路の範囲内で見ると、基本的に「片道利用では元が取れない」範囲で有ったので、朝の東京駅でカメラを持って写真を取って居る鉄道マニアと、飯山線・只見線で「如何にも正月キップを使った乗り潰し」という鉄道マニアが居た以外は、そんなに「如何にもフリーキップを使って居ます」と言う人をそんなに見かけませんでした。
 しかし此れだけを見て「正月パス利用客が少ない」とは一概には言えません。実際正月元旦の始発〜7時台の新幹線は行き先に係わらず指定席が埋まって居る列車が多く、下の写真の空席案内を見れば分かりますが、(正月パスの範囲外の)東海道新幹線が始発と次の列車にしか×印が無いのに対して東北方面・上越方面には×印のオンパレードとなっています。此れを見れば同じ正月元旦にJR東日本の新幹線はかなり利用されて居る事は明らかです。しかも長距離の新幹線は殆ど一杯と言うのは状況から考えて「正月パス」で「乗り潰し・遠方への片道利用」が誘発された可能性は、東海道新幹線と比較して考えると想像出来ます。

 
左:正月5時台の東京駅窓口に並ぶ人達は荷物の多い帰省客がメインか?  右:長距離の元旦朝の「はやて・こまち・つばさ」の指定席は軒並み満席

 この様に考えると、実際の「正月パス」の利用客のかなりの部分は、「個札で乗る予定の帰省客」が時期等を外して(前日まで購入が条件なので飛び込み利用は考えづらい)正月に片道だけ格安キップとして利用したと言う例が一番多いのかな?と思います。それから一段以上落ちて「乗り潰しの鉄道マニア」と「普通の人が中距離日帰り旅行に出た」と言う人は続くのかな?と言うのが利用状況についての私の感想です。
 しかし冷静の考えれば、1日乗り放題で12,000円と言う価格で売り出して居る以上、正月元旦でも「帰省」という事象で本当に割引しなくても存在する需要が割安の「正月パス」に動いてしまった場合、JR東日本の収入的にはマイナスになってしまいます。しかも「帰省」という強い目的を持って居る以上「正月パスで誘発された」という利用増が少ないと考えれば、増収効果より減収の影響の方が大きくなり、ビジネスとしては「痛い結果」になりかねません。
 又私を含めてですが、「乗り潰しの鉄道マニア」と言うのは確かに「乗り放題のフリーキップ」の存在に誘発された利用層です。この人達はフリーキップが無ければ利用しない人ですから、収入がゼロより12,000円/人でも収入が得られれば増収になります。そう言う意味では望ましい客層ですが、絶対数が限られて居る事からこの層を主軸に据える事は限界があります。
 となると、JR東日本が「正月パス」で据えたい利用層の主軸は「普通の人が中距離日帰り旅行に出た」と言う客層かもしれません。この客層は潜在的需要は多いですし、元々「正月に個札で旅行に出よう」と考えていた人が正月パスに転移しても、減収幅が小さいので「元々予定客の正月パスへの転移<正月パスの存在に依る利用客誘発効果」という図式に持ち込み易い事は間違い有りません。そう考えれば、この客層が増える事がJR東日本としては好ましい効果で有ると考えられます。

 JR東日本の「正月パス」への狙いは、「如何見ても正月元旦には家や家の近くに居る傾向が強くて長距離需要が落ち込む」なかで「ダイヤ通り長距離列車は動かさなければならない」以上「どうやって列車を埋めて収入を増やすか?」と考えた中で、「とにかく12,000円の収入でも空席の列車を走らせるよりかは良い」と考えて正月パスを売り出したと考えます。
 鉄道事業はその規制等での制約で、需要が減ったからといってダイヤで決めた物に対して大幅に減便する事は出来ません。せめて出来る事は「休日ダイヤで運行する」位しか対応策は有りません。その様に「供給サイド」での調整が困難な以上、「需要サイド」で工夫をするしか無い中で、需要喚起策として考え出された事は間違い有りません。
 そう言う意味では、JR東日本の「正月パス」は明確な戦略を持って考え出された企画キップなのかな?と感じました。
 しかし、実際に利用して見た限りでは必ずしも「JR東日本の思惑通りになったのかな?」と感じる状況に多く出会いました。そう言う点で言えば今回の「正月パス」は、「狙いは分かるが・・・チョット狙い通りには行って居ない感じがするな」というのが私の率直な感想です。
 けれども、JR東日本が良く考えながらこの様な施策を打って居る事は間違い有りません。
 それは正月パスに付帯した「アンケート」が示して居ます。トップの写真にこのアンケートも写して居ますが、このアンケートを行う事でJR東日本は利用者の「需要地・目的地・旅行目的・需要誘発の有無」等の利用者の意向や状況が集められるようになっています。(後は正月パスでの他社への運賃配分の参考に使われるだろう)
 私もこのアンケートを提出しましたが、実際の所このアンケート結果が有れば上述の様な「予測」をしなくても十分結果を見る事が出来る事は間違い有りません。このアンケートに「自動改札のデータ」を組み合わせて考えれば、かなり正確な正月パスの利用状況が掴めると思います。
 まあ交通事業者に多い「売りっぱなし」でなく、ここまで事後に向けての調査を行うのは「さすがJR東日本だな!!」と思いました。交通事業者とて利用者のニーズを正確に掴んでダイヤやキップの設定をしなければお客さまは利用してくれません。その事をJR東日本は良く分かっているな!!と思います。だからこそ企画キップにあの様な「アンケート票」が着いているのだと思います。このアンケートの結果を受けて来年は「正月パス」がどの様に変わるのか?有る意味楽しみで有るといえます。




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