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公共交通機関に於ける「端末アクセス手段」の整備の必要性とは?
−神奈川中央交通が実施の「自転車ラックバス」を見て−
TAKA 2009年05月25日
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● 参考のサイト(主に神奈川中央交通ニュースリリース)
・「
バスと自転車のコラボレーション…前面に自転車を載せられる路線バスを運行!
」(神奈川中央交通HP)
・「
自転車ラックバス 運行開始
」(神奈川中央交通HP)
※本記事は5月6日にmixiの日記に書いた物を加筆・修正の上再掲載しています。予めご承知置きください。
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☆ まえがき -公共交通で不便を感じる事とは?-
私自身は、日本で一番公共交通の密度が高いと言っても過言出ない東京に住ん居るので、こう言うのも何ですが、正直言って「公共交通機関を使って移動する」と言うことで不便を感じる事が沢山有ると感じます。
各個人で感じる点は異なるとは思いますが、私自身は「運転をしなくて良い・定時性が高い」という点にはメリットを感じる物の、「乗換をしなければならない・確実に座れない・大荷物が持てない・駅やバス停から歩くのが大変」等々の点に関しては不便に感じる事が多いと言えます。
確かに、公共交通利用のメリットも多く有るのは事実です。しかし(私に取っては)不便な点が看過出来ない物で有るのは、前にmixiでも書きましたが「公共交通強制使用期間(要は運転免許停止期間)」中に、これらの不便な事でかなり苦労して痛感しました。
その内、(感覚に個人差が有るにしても)私が公共交通を利用して一番つらかったのは、「駅やバス停から歩くのが大変」という点です。実際目的地が全て駅前ならば良いですが、必ずしもそうは行かず駅から遠い目的地も結構有り、其処へのアクセスの為に結構タクシーを使い月に740円のタクシーの領収書が20枚近く溜まる状況を見て、「コレは堪らない」と「公共交通強制使用期間」明けには又車移動に戻って仕舞いました。
さてさて、何故私がそんなにタクシーを使うのか?
それは、公共交通利用の場合は駅・バス停〜目的地までのフィーダーアクセス手段に徒歩orタクシーしか選択肢が無いからです。全ての目的地が「駅・(頻度の高い)バス停から1km以内」に有れば良いですが、幾ら公共交通が発達している東京でも山手線の外側に出れば「駅・バス停から1km以上歩く」という場所は沢山有ります。
その様な所にいく場合、私は「フィーダー移動の不便さ」 を考えるとやはり車移動がメインになります。この様な状況から考えると、私みたいな「歩くのが億劫な人間」の場合、幾ら「公共交通を利用しなさい!!」と言われても、端末フィーダー輸送が整備されない限り運転免許が有れば車に乗り続ける事になるでしょう。
こんな「徒歩移動を億劫がる」私みたいな人間を公共交通に転移させるには…。そうです「端末フィーダーアクセス」に便利な手法を提供すれば良いのです。その手段を考える事は、公共交通の利便性向上に取っては非常に重要な事で有ると言えます。
☆ 神奈中の「自転車ラックバス」試乗記 (09年05月04日)
その「公共交通の端末フィーダーアクセス手段」の改善方法として有効な手法の一つが、「公共交通機関への自転車持ち込み」です。端末フィーダーアクセスとしてタクシーよりコストが低く徒歩より機動力が有る自転車を持ち込める様にすれば、私みたいな「徒歩を億劫がる」事で自動車に逸走する人間の一部を公共交通機関に取り込む事が可能になります。
実際そんな事は交通事業者も気が付いて考えることで、地方ローカル線では「サイクルトレイン」と言う名称で「電車に自転車を載せるサービス」が実行されています。しかし都市部では「混雑する車内に自転車を持ち込むのは困難」と言うことが有るのでしょう、(折り畳み等自転車に手を入れない形での)公共交通機関への自転車持ち込みは、殆ど行われて居ないのが実状です。実際「端末フィーダーアクセス」へのフォローが行き届いていない公共交通機関は沢山有ると思います。
その様な状況に有る中で、神奈川中央交通が今年の3月26日から辻堂駅南口〜茅ヶ崎駅南口間の路線で「自転車ラックバス」を始めました。
このバスは、バスの前方に2台自転車を乗せられるラックを付けて、自転車を乗せられる様にしたバスです。
神奈川中央交通は、厚木で「バス停での駐輪場整備」等バス停までのフィーダーアクセスについて、自転車などが使い易いようにフォローする取り組みを積極的に行って居ますが、今回の「自転車ラックバス」は其れをもう一歩進めた施策で有ると言えます。
この様な「公共交通の端末フィーダーアクセス」に対応した新機軸のバスですが、3月に登場したのは知って居ましたがナカナカ訪問する機会が無く、GWの最中の5月4日に隣の藤沢のショッピングモールまで仕事の現調に行った序でに、「自転車ラックバス」試乗をして来ました。
左:比較的簡素な形で付けられて居る自転車搭載用のラック 中:バス自体はノンステップで無くてワンステップバス 右:内装も特に変えては居ない
さて5月4日の昼頃に、試乗と言う意味合いで辻堂駅南口〜茅ヶ崎駅南口間の自転車ラックバスを1往復半(一度茅ヶ崎⇒辻堂間で電車を利用)乗って来ました。
辻堂駅南口〜茅ヶ崎駅南口間では「辻02・辻12・辻13」の3系統で運行しており、辻12系統に片道・辻13系統に1往復乗って来ましたが、その間乗ったバスでは乗客こそ多数だったものの、丁度雨が降り出した時間だった事も有るのか?自転車で自転車ラックを使った客はゼロで、すれ違った自転車ラックバスも自転車ラックの利用はゼロと言う「自転車ラックバスを見に来た」立場で言えば、チョット寂しい状況でした。
確かにGWの中で唯一の「雨の日」で自転車に乗るには条件の悪い日だったと言うことも有るのでしょうが、それを考慮に入れても、この利用率は寂しい数字と言わざる得ません。
その「利用率が低い」理由として、まだ地域全体に「自転車ラックバス」の知名度が広がっていないと言うことも有るのでしょう。しかし海岸沿いの平坦区間で路線距離も数キロしか無いこの区間で「何で駅まで行くのに自転車直行で無くバスに自転車を載せなければならないのか?」とチョット感じました。その辺りが寂しい利用率の要因の一つかもしれません。
但し、写真にも有る通りこの自転車ラックはバスのフロントバンパー部を改造するだけで、比較的簡単に付けられそうな構造がメリットの反面、ラックには自転車が2台しか積めない事、自転車のラックへの搭載は自分で行う事を考えると、そんなに頻繁に使われる事も想定して居ない感じがしました。
この神奈中の自転車ラックバスは(5月1日以降は)9:00〜17:00と20:00〜24:00まで自転車ラックが使用可能になっており、流石に朝・夕ラッシュ時はラック搭載に時間が掛かる様で使用は出来ないようです。
この様な「限定的な対応」から考えて、有る意味神奈中としては「自転車アクセスが多い路線はバス停駐輪場で対応」して「自転車アクセスが少ない路線は自転車を載せられるラックを付ける事で選択肢を与える」という事で、自転車での端末フィーダーアクセスに対応しようと考えて居るのかも知れません。
☆ 「自転車を運べる公共交通」はどの様な場面で有効なのか?
今回「非常に簡易な形でのバスへの自転車搭載を可能にした実例」と言う事で、神奈中の「自転車ラックバス」を見に行きましたが。既存バスの構造を虐める事が無く簡単に取りつけられるこのラックは、「自転車を公共交通端末フィーダーに使う」事へ向けての一つの支援する手段になると思います。
少なくとも改造が簡単な事は見れば分かる話ですし設置費用も低額で済みそうな感じがする事からも、此処で有る程度成功すればかなりのスピードで全国に広がる可能性が有るシステムで有るとは感じられました。
けれども、今回の自転車ラックバスは辻堂駅南口〜茅ヶ崎駅南口間と言う「導入路線」にチョット疑問を感じるのも又事実です。
神奈中の「自転車ラックバス」は「湘南海岸に並行して整備されたサイクリングロードが沿線にあるのがこの路線への導入理由の一つ」と言う話を聞いて居たので、バスは湘南海岸沿いの国道134号線を走り「片道は自転車でサイクリングして帰りはバスに載せてください」と言うイメージを想像して居ました。
しかし辻堂〜茅ヶ崎間のバス路線「辻02・辻12・辻13」の3系統は、東海道線と国道134号線の間の住宅地の中を走る道路に設定されていて、「湘南海岸をサイクリング」というイメージでは有りません。しかも海岸地帯の平坦な地形です。自転車の苦手な坂道をバスでパスすると言う形態で有る訳でもありません。そんな中で神奈中はどの様な状況・ニーズを想定してこの路線に「自転車ラックバス」を導入したのでしょうか?
そのヒントは、(私が乗ったバスには既に切れて居ましたが)バスに備え付けのアンケートに有る質問項目「傘をさしながら、大きな荷物を持ちながらなど不安定な運転を避けるための利用」「飲酒後の利用」等がヒントなのかも知れません。其処から想定出来るのは「日常の自転車利用の中で、自転車に乗りづらい状況の時にチョット自転車をバスに載せて利用して下さい」という利用なのかもしれません。
まあこの自転車ラックバスは自転車を2台しか載せられない以上「非常用的な使い方」が主眼になるのは仕方ないのかも知れません。そういう意味では自転車利用に取っては「非常」である「昼から振り出しの雨の日」の訪問日に利用が無かったのはチョット残念な気がしました。
只この「自転車ラックバス」は試みとしては非常に面白い物で有るとは間違い無いとは思いますが、「端末フィーダーアクセスに自転車を利用する事に対するフォロー」という点で考えると、(東京の交通機関では難しいのかも知れませんが)神奈中バスだけの単独試行と言うのは物足りない感じがします。
他の交通機関でも自転車の持ち込みが出来るようにしてネットワーク化を図る事と、(特に電車で)簡単に車内に持ち込める「折りたたみ式自転車」的な物を開発し、「バスでは外にラック・電車では折畳んで車内に持込」という、「自転車を簡単に持ち運べる」ネットワーク的な流れを総合的に造る事が、将来的に端末フィーダーアクセスに自転車利用を促進する事で公共交通利用を促進させる為に必要なのかも知れません。
そういう意味では、今回の試みは「自転車と公共交通のコラボ」と言う点では新たな試みの一つと言えますが、今社会が「公共交通」だけでなく「自転車」に注目をしだして居る流れを踏まえると、現状においての努力は評価できますが「此処からもう一歩進む」事も必要なのかも知れません。
逆に言えば、東京のような大都会で無く都心部で簡単に自転車が使えるような都市でしかも都心部が平坦な都市、具体的には高松や岡山などで「家から自転車でバス停まで行って自転車ラックバスに自転車を載せて都心部で自転車で回遊する」様な利用形態の方が、総合的なネットワークを造る中での「最初の動き」として好ましいのかも知れません。その辺りは今後神奈中の今回の結果を踏まえて考えて行く事が必要と言えます。
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