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日 本 の 鉄 道 を 知 り ・ 学 ぶ 殿 堂 の 姿 と は ?

−10月14日オープンの鉄道博物館見学記−


TAKA  2007年11月04日



鉄道博物館のメイン ヒストリーゾーンの車両展示


 ※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。

 今年の秋の鉄道に関する話題は色々多いですが、その中で最大の話題は「鉄道博物館」のオープンでしょう。
 鉄道の車両を見る事が出来る博物館的な施設は、関東でも「 青梅鉄道公園 」や「 碓氷峠鉄道文化むら 」等が有りますし、民鉄でも東武鉄道の「 東武博物館 」や東急電鉄の「 電車とバスの博物館 」や東京メトロの「 地下鉄博物館 」が有ります。しかし何といっても今まで鉄道を見る事が出来る最大級の博物館で象徴的な施設が万世橋の「 交通博物館 」でした。
 私も小学校の時に友人と 交通博物館 を見に行った事が有ります。実際その時私も一緒に言った友人も置いてある保存車両や模型などに子供心で胸躍ら興奮した事を覚えています。特に東京近郊に住んでいて鉄道に興味の有った子供達は、どのような形で有れ交通博物館を訪れ私と同じ様に興奮を覚えた経験を持つ人が多いのではないでしょうか?
 その交通博物館が手狭さや老朽化等の理由で惜しまれながら2006年5月14日に閉鎖されてから約1年半、交通博物館が東京の中心部の万世橋から北関東の鉄道の大拠点で「鉄道の街」といえる大宮駅の近くに拡大・移転して新たに今回鉄道博物館として10月14日にオープンしたのです。正しく「今年最大級の鉄道イベント」と言う事が出来る事です。
 流石に注目を集めている鉄道博物館のオープンだけ有り当日の14日は「満員入場規制」が行われましたし、その後も アドマチック天国タモリ倶楽部 で取り上げられるなど世間でもかなりの注目を集めています。(実際アドマチック天国は見たが、第一位の鉄道博物館の中でベストテンを行い15分近く放送していた)

 この様に注目を集めている鉄道博物館なので、鉄道系の博物館は「小学校の時の交通博物館」以来行った事の無い私でしたが、今回は流石に「東京ドーム並みの広さ」で「交通博物館の資料に加えて新たな資料を集め」て「保存車両も交通博物館に加えて日本全国から集めてきた」という様に、新しく出来る鉄道博物館は交通博物館以上に内容が充実してて素晴らしいと言う前評判は色々な所から聞いていました。
 しかし現実として仕事をしている以上平日に訪問する事はなかなか難しく、しかも此れだけメディアで取り上げられると休日は大混雑なのは火を見るより明らかです。その中で訪問する機会を探っていましたが、丁度10月26日金曜日の夕方仕事の最後が大宮で終わりしかも4時前には仕事が終わり大宮駅に居れる状況になり、其処から訪問すれば2時間は鉄道博物館を見る事がで来ました。本来なら「2時間ではとても廻りきれない規模」とは聞いていましたが次の機会を待てば何時になるかは分かりません。なので「取りあえず中を見に行こう」と言うレベルで思いきって鉄道博物館を訪問して見ました。
 そういう訳で「駆け足訪問」でしかも季節はずれの台風が迫る状況で屋外施設が全部閉鎖という「最悪」に近い状況での訪問になりましたが、雨の平日の夕方と言う事も有りそんなに混雑に悩まされず見て廻る事が出来ました。今回は鉄道博物館の駆け足訪問記を私の撮って来た「ヘボ写真」を中心にご覧頂き、未だ鉄道博物館に行かれて居ない方には「鉄道博物館の素晴らしさ」を感じていただければ幸いです。
 今回は「鉄道博物館」と言うチョット違う場所なので、何時もと嗜好を変えて保存車両を中心とした写真主体の訪問記にしてみました。では私の写真を中心としたバーチャル「鉄道博物館」見学の旅を是非ともお楽しみ下さい!

「参考HP」 鉄道博物館オフィシャルHP

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 ☆ 先ずは鉄道博物館までの導入部分のエントランスは?

 鉄道博物館はJR大宮工場の傍に有り、JR大宮駅から埼玉新都市交通ニューシャトルに乗り一つ目の駅の大成駅まで乗ってのアクセスになります。都心の万世橋の交通博物館に比べると不便になった事は否めませんが、鉄道に関して北関東の中心の大宮駅からニューシャトルで3分ですから極端に不便とは言えませんし、ニューシャトルも「新交通システムを学ぶ一つのツール」と言う考え方をすれば、アクセスも一つの展示物と考えれば苦にならない距離といえます。
 ニューシャトル大成駅は鉄道博物館開業に合わせて大改修が図られ、ホームも拡幅されバリアフリー設備も整っています。只此れだけの博物館の最寄駅なのですから、待合スペースだけで無くもう少し店の類を置いて賑やかさを出しても良かったかもしれません。ニューシャトルの改札を出れば直ぐ鉄道博物館のアプローチになっていて鉄道博物館は直ぐ其処です。このアプローチ区間にはD51の先頭部分や腕木式信号・台車などが置いて有り雰囲気を出すと同時に、床のタイルに東北・上越新幹線のダイヤが書き込まれているなど、結構凝った演出が有り鉄道博物館への期待を膨らませてくれます。

  
左:エントランス入口脇に有るD51  右:メインエントランス正面に置かれた彫刻家・流 政之氏による彫刻「ぽっぽや」

 入場料は1,000円でSuicaを用いたシステムで入場管理がされています。其処は「さすがJR東日本系の施設」と言う感じですが、今や交通系の主流ICカードシステムのSuicaを体験できるのですからそれも又「交通を学ぶ」と言う点では意味の有る事と言えるでしょう。
 入場ゲートを入ると目の前はエントランスです。エントランスにはモニュメントの「ぽっぽや」が置いて有り、その奥は大きな硝子のカーテンウォールになっていて鉄道博物館の隣を走るJR宇都宮線・高崎線・川越線が見える様になっています。屋上に上がると東北・上越新幹線も間近に見る事が出来ますが、この様に実際走っている鉄道路線を間近に見る事が出来て「実物も体感できる」と言う点が、鉄道博物館の大きな売りの一つです。此れは「大宮」と言う場所に鉄道博物館を持ってきた効果の一つといえます。


 ☆ 鉄道博物館のメイン ヒストリーゾーンの車両展示を見てみよう!

 鉄道博物館の最大の売りはヒストリーゾーンに展示されている「保存車両の多さ」です。万世橋の手狭な場所にあった交通博物館に比べ敷地も非常に大きくなった事も有りますが、実物の車両が(ガラスの中で保存の御料車を含めて)35両の各時代の車両が保存されているのは特筆すべき内容であると言えます。これらの車両はかなりの努力が払われて集められたと聞きますが、この車両を保管・展示する為に大宮に移転したのであれば、これは納得といえます。
 ヒストリーゾーンの全景は頭の写真の通りですが、此処には中央の転車台を中心に車両が展示されています。
 ヒストリーゾーン1階の展示は「 日本の鉄道の黎明期(明治)全国に広がる鉄道網(大正)特急列車の誕生と通勤輸送の始まり(戦前・戦後)大量輸送と電化時代(昭和30年代)全国に広がる特急網(昭和40年代) 」と言う年代別に設定された5つのゾーンと、「 新幹線の誕生鉄道による貨物輸送御料車の歴史 」と言うテーマ別の3つのゾーンの合計8つのゾーンに分かれて、其々の年代・テーマに沿った保存車両が展示されています。
 それでは保存車両の一部になりますが、鉄道博物館で撮影して来た保存車両の写真をご覧下さい。

  
左:(1)鉄道記念物・重要文化財の1号機関車(150形式蒸気機関車)  右:(2)国鉄バスの第一号車(保存車両には未カウント)

  
左:(3)日本初の本格大型ガソリンカーキハ41000形式気動車  右:(4)戦前の"省電"を代表するクモハ40形式電車

  
左:(5)東海道線電化時の輸入電機ED17形式電気機関車  右:(6)準鉄道記念物で初の国産電気機関車ED40形式電気機関車

  
左:(7)特急・急行用蒸気機関車の代表格C57形式蒸気機関車  右:(8)"戦前特急の華"東海道本線の特急用一等展望客車マイテ39形式客車

  
左:(9)東海道本線全線電化時代の象徴 一時代を築いたEF58形式電気機関車  右:(10)"走るホテル"で時代を変えた20系 ナハネフ22形式客車

 鉄道博物館の保存車両の保存の仕方の一つの特徴は「時代にあったシチュエーションでブースが再現されている所が何箇所か有る」と言う点だと思います。今回の写真の中では(4)も通勤のホームが再現されていますし(8)は燕・富士などのマイテ39形展望車を連結して東海道本線を特急が走っていた戦前の東京駅のホームが部分的に再現されています。その究極は481系・455系が保存されている(11)(12)のブースです。このブースに居た解説員の人の話を脇で聞いていましたが、このブースは昭和47年の上野駅を再現していて、ホームの乗車案内の看板等も当時の物を使っているとの事でした。しかも此処ではボンネット特急の481系の正面のヘッドマークの交換風景が再現されていました。此処まで拘ると「さすが!」という感じになります。
 この様な演出による再現を「情景再現」と案内していますが、屋内の展示場ですからその様な細かい再現ブースを作れると言う側面は有るにしても、資料的裏付けの下で「分かりやすいように」状況が再現されているのは、見ていて理解を膨らませるのに非常に役に立って居ます。私も今年で35歳になり決して「若い」年代ではないですがそれでも昭和47年生まれです。と言う事はこの(11)(12)で再現している上野駅の状況の時に正しく生まれたのです。当然の事ですが生まれた時の風景など覚えて居ません。(しかも私は昭和47年を1日しかすごしていない!)ですから35歳の私ですらこの保存車両の内乗った事が有る・走っているのを見た事が有るのは「101系・DD13・EF66・ED75・新幹線0系・新幹線200系」程度です。(481系・455系は記憶に無い・・・)ですからかなり年配の人で無ければ似たり寄ったりの状況であるといえます。その状況の中で過去のイメージを膨らませる為にその「補助資料」として「情景再現」が有るのは、大きな手助けになり非常に為になるといえます。

  
左・右:(11)(12)在来線近代化で一時代を築いた車両群 昭和47年の上野駅を再現したブースに置かれている(左から)ED75形式電気機関車・クハ481形式電車・クモハ455形式電車

  
左:(13)昔は高速貨物の象徴で今はブルートレインの象徴EF66形式電気機関車  右:(14)世界一有名な電車? 日本の新幹線の永久の象徴0系新幹線電車

 ここに写真を載せている保存車両はごく一部です。しかもこれらの車両はガラス貼りの中に保存されている御料車以外は身近で見る事が出来ます(中に乗れる車両もある)。そしてここに保存されている車両には鉄道記念物・重要文化財に指定されている車両もあります。此れだけの車両が1箇所に集められて展示されていて、車両から見る鉄道の歴史を流れに沿って見る事が出来るというのは非常に重要であるといえます。
 実際1号機関車から新幹線200系まで順序だって見ていけば、日本の鉄道の歴史を駆け足で見る事が出来ます。確かに保存車両は色々な鉄道を扱う博物館に多数保存されていますが、ここまで系統立てて車両が集められているのは他には殆ど無いでしょう(大阪の 交通科学博物館 もDF50形DL・キハ81形DC・80系電車など鉄道博物館に無い歴史的重要車両もあるが、「系統立てて」となると鉄道博物館の方が上と思います)。その点から見ても鉄道博物館が今までの交通博物館の保存車両に加えて色々な所から集めてきた35両の保存車両の質的レベルは非常に高いといえます(本当なら鉄道博物館+交通科学博物館の保存車両で展示をすれば日本最強だろう!)。
 その様に見れば鉄道博物館の保存車両は、今の段階で「日本で最高に近いレベルの鉄道保存車両群」と言う事が出来るでしょう。間違い無く一見の価値は有ると思います。しかもこの保存車両群は一部は中央の転車台を使い入れ替えをする事が出来ると聞きます。という事は将来的には他の歴史的に重要な車両が新たに保存される可能性がある事になります。その様な将来も楽しみにしたいと思います。


 ☆ 鉄道博物館のもう一つのカギは「鉄道の仕組みを実体験で学べる事」

 保存車両群と並ぶ鉄道博物館のもう一つのカギは「鉄道の仕組みを体験しながら学べる」様な施設が充実している事です。
 巷では鉄道博物館目玉の一つといわれている「 D51シュミレーター 」が注目を集めていますが、鉄道博物館で「鉄道を実体験できる施設」はそれだけでは有りません。新幹線200系と205系のシュミレーター2台・211系と209系のJR東日本が運転士教育用に使用している2台のシュミレーターに加えて、駅を再現した駅構内ラボに有る103系のカットモデルでドア閉め等が体験できます。
 しかも極めつけは、実際にATS-P同等の保安装置を有し実際のシステムに則って極低速ですが列車に乗り列車を運転する事が出来る「ミニ運転列車」でしょう。傍から見れば「おもちゃの列車」と見えるでしょうが、分かり易い「ミニ列車」を実際のシステムのミニチュア版で運転出来ると言うのは、「鉄道という物のシステム」を理解するのに大きな手助けになる事は間違い無いといえます。私が訪ねた日は雨天の為ミニ運転列車は運転中止でしたが、運転されていれば子供を中心に多いに利用されていた事でしょう。
 子供(特に男の子)は「車・鉄道・飛行機」等の交通系の物に一度は興味を持ち好きになるものですが、車は一家に一台有り大概は家族の誰かが運転できて非常に身近なものですが、鉄道は身近に走っていても誰彼も運転できる訳では無く、「職業人」もしくは「鉄道好きの大人」でなければどの様に運転しているのか説明するのが難しいものです。しかもそれを子供に分かりやすく説明する事は詳しい人でも非常に困難であるといえます。その「子供の興味」に答える事が出来るのがこれらの「鉄道を体験できる」展示物でしょう。特に「鉄道に興味を持った」子供に「鉄道はどの様に動いているのか?」を教えるのに「ミニ運転列車」は最適で有るといえます。

  
左:ATS-P同等の保安装置が有り運転しながら鉄道システムが学べる ミニ運転列車   右:実際にドア閉め等も体験できる103系が有る駅構内ラボ

  
左・右:鉄道博物館では蒸気機関車シュミレーター等で運転を体験する事が出来る

 その様な「鉄道の仕組みが分かる」動的なシュミレーターなどに加えて、要所要所にある「展示物」「 ラボラトリー展示 」「 ラーニングゾーンの原理・仕組み展示 」という静的な展示物が動的な展示物で掴んだイメージを補完して、鉄道の「もっと深い所」を理解するのに上手く機能して居るといえます。
 実際保存車両展示の所でも書きましたが、保存車両で歴史を辿る場合でも抜けが有ります。例えば長距離電車の進化と言う側面で考えても和寒様が「 長距離電車略史 」で、80系湘南電車(昭和25年)→151系こだま(昭和33年)→0系新幹線(昭和39年)と長距離電車は進化してゆく(私は見解的には難しいが80系と151系の間に小田急3000形SE車(昭和32年)が入ると考えるが・・・)と述べられている様に、湘南電車・特急こだま・新幹線どの電車にしても、「電車」という鉄道技術はある日突然発生した物では無く徐々に系統だてて発展したものです。しかし鉄道博物館には80系・SE車は有りません。80系は交通科学博物館に保存されていますし、SE車は小田急電鉄海老名車庫で保管されています。ですから電車特急の元祖151系は保存されていてもその前段階が鉄道博物館の保存車両群にはポッカリ欠落している事になります。
 しかし鉄道博物館では写真の様にその欠落部分を「模型&ビデオ」という展示物で上手くフォローして、展示物と保存車両を見れば「如何にして電車は技術的に発展していったのか?」という事を学べるようになっています。流石に「博物館」というだけ有りその技術史的な流れのフォローに関してもちゃんと行っていて、だからこそ安心して「ここを見れば鉄道のかなりの部分を浅くだが学べる」と言う事が出来ます。

  
左:電車の原理が分かる101系&台車の展示  右:181系電車の展示の前にある「湘南電者→小田急SE車→151系」という日本の電車技術の進歩を説明する模型&説明ビデオ

  
左:車両工場での電車の整備が分かる「車両工場ラボ」  右:鉄道の原理や仕組みが分かるラーニングゾーンの原理・仕組み展示

 加えて一番根本的な所である「鉄道の原理」という点で、誰にでも分かるように簡単に説明している「ラーニングゾーン」の展示物は、ミニ運転列車と並んで「大人が見るにはチョット恥ずかしい」ですが、子供に「鉄道の仕組み」を教え分からせるには最適の施設であるといえます。ラーニングゾーンの仕組み・原理展示では、車輪・レールの仕組みから動力・ブレーキの仕組みや信号・閉塞・ATS・ATCの仕組みまでが分かり易い図説や模型などで解説しており、「鉄道はどんなシステムで動かしているのか?」と言う事を子供に理解させるのに最適の展示がそろっています。
 又「鉄道が好きだ」と言う視点での見方で欠けそうな基本的側面、鉄道と言う運行システムとしては(重要だが)裏方の整備に関して、JR東日本大宮総合車両センターの内容を展示した「車両工場ラボ」などの「テーマを決めた展示コーナー」といえる「ラボラトリー展示」で、普通は目にする事が出来ない裏方だが鉄道と言うシステムとしては非常に重要な「整備」「駅務」「運転管理」などについて分かりやすく学べる施設が有ると言うのも重要で有るといえます。
 この様に鉄道博物館には「鉄道の仕組みを理解させる」という点でも、色々な展示物や体験施設が揃っています。私は駆け足で見ていたので「さらりと流し見る」だけでしたが、特に鉄道に興味を持ち出した子供に取っては「鉄道とは何か?」を学ぶのに最適な施設・展示物が揃っていて、「ここで一通り見て体験すれば鉄道のシステムの概略は分かる」というだけの物が揃っています。これは保存車両・シュミレーターにばかり目が行きそうですが、鉄道博物館の「隠れた素晴らしい点」であるといえます。


 ☆ 鉄道博物館を見て感じた事。それは「鉄道」その物を如何にして広めていくか?の重要性

 今回駆け足でしたが話題の鉄道博物館を見てきましたが、保存車両・D51シュミレーター等我々鉄道が好きな大人も、保存車両を見て歴史を感じその上で十分楽しめ学ぶ事が出来る施設であるとは感じましたが、それ以上に今後の鉄道に関して「ユーザー」となり得る子供に対して「鉄道とは如何なる物か?」という事を、車両等の単品でなくシステムとしてその仕組みを学ぶ事が出来る施設であるのが大きなポイントであると感じました。
 「博物館」で有る以上、基本的には「特定分野に関し価値のある事物、学術資料、美術品等を収集・保存し、学芸員等の専属職員が研究し、来訪者に展示している施設」と言う概念の下で運営される施設であり、鉄道博物館は鉄道に関する博物館なので鉄道に関する資料を収集・保存・研究し来訪者に展示する施設として、役割を十二分に果たしているといえます。
 しかも鉄道博物館では、保存車両等の保存物を見るだけでなく、シュミレーターやラーニングゾーンで実際に体験する事が出来るのですから、博物館として「合格」と言うレベルを通り越して「文句無し」と言うレベルでしょう。有る意味鉄道博物館は普通の博物館以上のレベルの「体験型の博物館」という事が出来ます。此れだけの施設が作れたのであれば、都心だが手狭な万世橋の交通博物館を大宮に移転させて改めてオープンさせた価値はあるといえます。

 その様な「鉄道について知る・学ぶ」と言う点からも素晴らしい鉄道博物館の施設ですが、今後はこの素晴らしい施設を如何にして「鉄道を知る為の施設」として活用して行くか?という所に鉄道博物館の「成否のカギ」が有るといえます。
 今地方では「鉄道に乗った事がない」などという子供たちも居るやに聞きます。そこまでいかなくても鉄道が子供たちの身近な「興味を感じる物」であっても、車などに比べれば鉄道は子供に取り身近で無く遠い存在になりつつあるといえます。そうなると将来鉄道に対し理解のある基礎層となるべき良質な鉄道ファンが減少してしまう事になります。鉄道を事業として見れば「ファンで無く一般の人達が多数利用してくれれば関係ない。要は利用者の絶対量が問題」という事になります。それは収入の面から見れば正しくその通りです。只鉄道に対する理解を得ると言う点で考えれば「良質のファン」が存在すると言う事は「理解者を得る」という点で鉄道会社にも意味の有る話です。
 但し其処には「良質な」と言う前提条件がつきます。鉄道会社に取って見れば「正しい知識を持ち鉄道に理解を示してくれるファン」は意味の有る存在ですが、「正しい知識も無く下手をすれば営業妨害をやり兼ねないヲタク」は百害有って一理無しの存在でしか有り得ません。となると鉄道会社にして見ても「良質な鉄道ファン」を作り出す事は一定の意味のある話ですし、その予備軍たる子供たちに「正しい鉄道に関する知識」で「鉄道に関して理解を深めてもらう」という事は意味の有る事になります。
 だからこそ鉄道会社は鉄道展や見学会や車両基地公開などの「イベント」を行い、自社の鉄道についてのPRを行うのです。ただそれらは「イベント」であり意味がある物だとは思いますが一時的な物に過ぎないといえます。そうなるとやはり「恒久的な施設の存在」と言うのが「鉄道ファン」という名の「自社のファン」を育成する上で意味を持つ事になります。そこで鉄道業界で最大の存在でリーディングカンパニーであるJR東日本影響下の 東日本鉄道文化財団 が「日本及び世界の鉄道に関わる遺産・資料に加え、国鉄改革やJR東日本に関する資料を体系的に保存する」事だけで無く、鉄道システムの変遷を産業史として物語る「歴史博物館」・鉄道の原理・仕組みと最新の鉄道技術について体験的に学習する「教育博物館」と言う構想の下で鉄道博物館を作った事に大きな意味が有ると考えます。
 誰にでも分かり易い良質な教育・学習の出来る博物館の存在は、鉄道について理解を深め鉄道に理解の有る人の裾野を広げて行く事に非常に大きな意味が有ると思います。その意味からも鉄道博物館は100点とはいえなくても、かなりレベルの高い優良な博物館で有ると思います。

 近年鉄道趣味の世界に「ヲタク的鉄道趣味者」が増えてきたのでは?と痛感して感じます。(私も世間から見れば鉄道趣味者であろうから人の事は言えないが)昔に比べて鉄道趣味者の鉄道への理解が悪くなってきて社会的に「異端」と見られるような状況になってきているといると感じます。しかも間違い無く、年齢が下がれば下がるほどファンの(特に知識の)レベルは悪くなっているのではないか?と感じます。
 それはネットの中で特に顕著に感じます。一部の鉄道趣味の掲示板等を見れば一目瞭然「一体何をいっているのだ!」といいたくなるほどレベルの低い話や誤った知識で行われている議論などを良く見る事が出来ます。昔は鉄道雑誌に国鉄・JRの幹部クラスの人でしかも鉄道を趣味的にも見ている様な方が記事を書かれるなど、実務の知識に裏付けされた趣味活動が行われていてそれらの雑誌をよく読んでいた私など非常に勉強になった記憶が有りますが、今では特に鉄道趣味層の低年齢層ではその様な事は見る影も有りません。
 では何故低年齢層の趣味者にこの様な低レベルな状況が発生しているのか?それは「趣味の行動が正しい知識に裏付けされていないから」では無いでしょうか?偏った正しくない知識からは偏って正しくない議論しか行われません。そうすると趣味層自体が偏屈化して社会から隔絶した存在となり鉄道趣味と言う趣味自体が「社会の異端」に追いこまれてしまいます。
 しかし鉄道趣味は鉄道という社会で動いている物に対して興味を示し趣味活動を行う物で有り、実際の社会的な動きが中心として存在している物です。その中で鉄道趣味層の社会からの異端化が進んでしまえば、鉄道趣味自体が社会からも鉄道その物からも乖離してしまう事になります。それは鉄道趣味その物の自滅を意味します。
 その様な事は鉄道趣味者だけで無く、そこを特定ヘビーユーザー層&サポーター層として有る一定の位置付けをする鉄道事業者としても好ましい事では有りません。避けるべき物です。では如何したら良いのか?それはやはり鉄道趣味者に低年齢の時代から正しい知識と正しい興味の方向性を植えつけてあげる必要でがあるのではないでしょうか?其処で鉄道博物館のような鉄道というシステム全体の「歴史的資料を保管・展示・解説」すると同時に「仕組み・原理・技術を分かりやすく解説」する様な教育的な施設の存在が重要になってくるのでは?と感じます。若年層を正しく教育して鉄道への興味を広めさせその裾野を広げて行く為には鉄道博物館のような施設が啓蒙の為に重要であると考えます。鉄道博物館のその存在意義の大きな点にその様な事が有るのでは?と感じます。

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 その様な堅苦しい話を抜きにしても、鉄道博物館は本当に鉄道の事を知る為には最適な施設であるといえます。特に子供にも分かりやすく楽しみながら鉄道を知る事が出来る施設になっているのは非常に大きなポイントで有ると今回駆け足で見た私の目からも感じられました。
 鉄道に興味を持っているお子さんをお持ちの家庭の方、鉄道博物館は是非お勧めです。此れが夏休み時期であれば「 夏休みの自由研究 」の手助けになる事は間違い無いといえます。其処まで「研究のネタ探し」とまで力を入れなくても、1日すごせる充実した施設で有る事は間違いないですし、其処で鉄道の原理から歴史・システムまで見るだけで無く体感しながら学ぶ事が出来るというのは、施設として大きなポイントで有ると思います。
 鉄道に興味を持つお子様をお抱えの保護者の方々、是非一度お子様を連れて鉄道博物館に行ってみて下さい。子供が楽しめて知識を深められるのと同時に(この記事を見る人の大部分は鉄道に興味のある方々でしょうから)保護者も楽しむ事が出来ると思います。まして飲食施設等も揃っていますから1日居ても問題ありません。極めつけは低料金で有る事。1人当り大人1,000円・小中高生500円・幼児200円という料金は内容から見たら割安といえます。その上追加料金が必要な物はD51シュミレーター(500円)・ミニ運転列車(200円)だけですから、交通費に入館料・中での昼食を入れても家族連れで行っても遊園地などに行くより格安で有る事は間違い有りません。しかもお弁当で作って行きパノラマデッキで新幹線を見ながら家族和気藹々と食事をしたら子供の思いでに残る事は間違い有りません。
 鉄道に興味さえあれば舞浜の遊園地に行くより格安で子供の勉強になる鉄道博物館、はっきり行って素晴らしい所です。複数回リピートするには(目新しさと言う点で)厳しい物が有るかもしれませんが、一度は行ってみる価値は有るといえます。関東に在住で適齢で鉄道に興味を持つお子様をお持ちの保護者の皆様。是非お勧めです!行ってみて下さい!。



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