このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
素晴らしいデザインの駅と招き猫がローカル鉄道に人を呼ぶのか?
−新しく改築した和歌山電鐵の「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅を訪ねて−
TAKA 2010年08月15日
新しく建てられた水戸岡鋭治氏デザインの「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅 |
☆ ま え が き
和歌山電鐵。私のHPでも何回も取りあげて居る会社ですが、有る意味「ローカル線再生の成功事例」と言える会社です。
南海電鉄から貴志川線の運営を引き継いで4年チョットが経過して居ますが、和歌山電鐵は「いちご電車・おもちゃ電車」など色々な「人を引き付ける仕掛け」を作り出して居ますが、その象徴が三毛猫の「たま駅長」で有る事は誰が見ても間違い無いと思います。
その「たま駅長」が今では「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」にまで昇格して居ますが、和歌山電鐵では「たま電車」や「たまグッズ」など色々な「人の関心を呼ぶ仕掛け」を造って居ますが、今度はスーパー駅長を務めて居る貴志駅の駅舎を建て替える事になり、
8月4日に貴志駅改築の竣工式
が行われました。
「たま電車」に続いて第二弾の仕掛けと言える「たま駅舎」が完成したのですから、流石に見に行かなければ気が済みません。と言う事で夏休みを利用して8月14日の土曜日に和歌山電鐵の貴志駅新駅舎を訪問することにしました。
☆ 「TAMA MUSEUM STATION」和歌山電鐵 貴志駅 訪問記(8月14日)
さて「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅ですが、8月4日に竣工式が開かれたのは知って居ましたが流石に平日に和歌山を訪問するわけには行かず、夏休みを利用して8月14日の土曜日に日帰りで和歌山を訪問して「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅を見てみることにしました。
左:「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅の全景 右:特徴的な檜皮葺の屋根とネコの目をモチーフにしたステンドグラス
8月14日午前中に貴志駅を訪れましたが、流石にお盆休み中の土曜日と言うことも有り、電車で訪れた客・バスツアーで来た客等多数の観光客で貴志駅前は溢れて居ました。
その中で今までの平屋で古い駅舎の変わりに今回建てられたのが「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅です。
今回の改築された建物も平屋ですが、檜皮葺の大きな屋根が存在感を示しながら「ネコの目」をイメージしたステンドグラスがアクセントになり、同時に下部の壁の漆喰の白色とレンガの薄い茶色が全体を引き締め非常に良いデザインとなって居ます。
左:新しく作られた「スーパー駅長たまの駅長室」 右:建物の外には写真撮影用の「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」の看板が有る
又建物の中には「たま駅長の駅長室」が造り付けられていて居て、30分毎に列車が到着するたびに「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま」様の御尊顔を拝しようと多くの人が並んで居ますが、流石にお疲れか?後ろを向いて奥の方に隠れてしまって居ます。
左:貴志駅の中に有る「たまカフェ」 右:「たまカフェ」で売られて居た「ももジュース&ももジェラート」
「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅には「スーパー駅長たまの駅長室」だけでなく、「TAMA MUSEUM STATION」と言うだけ有り色々な施設が有ります。
その中でも特に良かったのが「たまカフェ」です。待合室をかねたスペースに「たま関連の展示品」や「たまをモチーフにした椅子」が置かれて、其処に和歌山電鐵直営ながら県の「ふるさと雇用再生特別基金事業」を使い地元紀ノ川市の果物を使った「たまカフェ」が運営されて居ます。
多くの地域外の人が集まる観光客の拠点となりつつ有る貴志駅です。其処に地元との協業として「地元の人を雇い地元の名産を提供する」場所を造る事は地元に対しても効果が有ると同時に色々なアピールが出来大きな効果が有ります。
実際非常に美味しかったですが「ももジュース&ももジェラート」等は地元の品を使っての商品で、此処で食べなければ「紀ノ川市にももの産地が有る」事を知る事は無かったでしょう。そう言う意味では地元アピールにも効果が有ると言えるでしょう。
左:たま駅舎の天井裏(ステンドグラスからの青い光とたまをモチーフにした天井裏を走るネコの人形が印象的) 右:ライトアップされた上棟式の時の「幣串」
又建物を良く見ると、気が付くとアクセントに小技を効かして楽しめる様になって居ます。
天井の梁には「たまの人形」がさり気なく置かれていて、気が付く人には「たま駅長が天井裏を走りまわって居る」と見える様になって居ます。 加えて外観のアクセントとなって居る「たまの眼」部分のステンドグラスの所から天井裏に青い光が入って来て、天井裏の暗い景色にアクセントを加えて居ます。
又天井裏に置いて有る、建物上棟時に建物の安全を祈願して飾る「幣串」をライトアップして飾っています。今まで色々な建物を見て来ましたが、今では上棟式を行う事も減り「幣串」も殆ど見無くなった今の時代に、伝統の物をさり気なく展示する姿勢には関心させられました。
☆ 「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅の素晴らしい所は何処だろう?
今までも何回かイベントの度に訪れていた和歌山電鐵ですが、いや〜今回も驚かされました。正しく百聞は一見にしかずでした。
和歌山電鐵自体は「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」や「たま電車」等を見ても明らかな様に、「話題を作る仕掛け・驚かせる仕掛け・楽しませる仕掛け」を作るのが上手いと思える会社ですが、今回の貴志駅改築でも和歌山電鐵設立当時から関係していたデザイナー水戸岡鋭治氏がデザインを担当しその力が発揮されて居ると思います。
やはり和歌山電鐵自体は「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」で知名度が売れて居る事から、建物のコンセプトを「TAMA MUSEUM STATION」に明確に据えて「何処にでもたま駅長が居る」駅にしたのも、あの駅の魅力の一つだと思います。
又その様なキャラクターを前面に出す駅で随所に「たま」が居る状況になって居ますが、建物自体が本当に良く出来た「本物」の建物で予め「たま駅長」の存在を意識したデザインの為、「たま駅長」のキャラクターを付けても軽くなりません。
そう言う意味で「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅は「本物」の建物で有るといえますし、色々考えられて非常に良くデザインされて居ると思いますし、施工もあそこまで良く造ったと思います。色々な意味で「世界一の地方鉄道の駅舎として名を馳せるだろうという期待」は決して絵空事では無いと思います。
しかも駅舎建設に伴って造った「たまカフェ」で、上手く地元の紀ノ川市と協業して地元の産品を基にした商品を売るなどしていますし、此の頃では地元の産直センターとの間のアクセスも確保する様になりました。この様に地元との連携も前より一歩踏みだして居ると言えます。
でも「ももジュース&ももジェラート」本当に美味しかった!!。これを上手くアピールしてあの味を都市部の人達に知ってもらえれば、観光出来てくれる可能性の有る人々に和歌山電鐵の良いアピールになるかもしれません。
この様な「和歌山電鐵の可能性を色々な点で引き出す可能性」を、駅舎新築一つで引き出す事が出来る可能性を示した事は非常に大きいと思います。有る意味和歌山電鐵の規模で「世界一・日本一を目指して」1億円とも言われる建設費を投じて駅舎建設を決断した小嶋光信和歌山電鐵社長も凄いですし、「世界一・日本一」の目標にデザインで答えて此れだけ素晴らしい駅舎を造った水戸岡鋭治氏も凄いと改めて感じました。
☆ 「TAMA MUSEUM STATION」貴志駅が示した「和歌山電鐵成功の可能性」とは何なのか?
この様に見ると、単体でも「TAMA MUSEUM STATION 和歌山電鐵貴志駅」の出来栄えは素晴らしい物が有ると思いますが、やはり和歌山電鐵の凄いのは「よくも何も無いローカル線にあれだけ人を集めた」という点と、其れを上手く鉄道の再生に結びつけた点に尽きます。
確かに「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」の存在は非常に大きいと思います。
「たま駅長」の知名度は全国区ですし、多くの観光客は「たま駅長」を目当てに昨日も貴志駅に来ていたのは間違い無いと思います。実際昨日も多くの観光客が電車・観光バスを使ったツアーで貴志駅に来て居ました。
それらの観光客が電車に乗って来てくれれば多分1日乗車券650円の運賃は落としてくれるでしょう。それでも「たま駅長」目当てに500人来てくれれば325,000円の収入です。原価が少なく済んで此れだけの収入ですから此れは馬鹿に出来ません。
左:「たま電車」を撮影する女性観光客達 右:貴志駅の向かいには和歌山電鐵が「たまグッズの臨時売店」を出店
しかし和歌山電鐵が凄いのは「たま駅長を見に来る人達を運賃収入以外の収入に結び付けて居る」点です。実際たま駅長を見に来る人達の大部分は「普通の家族連れ・普通の人達」です。少なくとも鉄道マニアのような人は少なく「たま電車」を見て写真を取って居る人達も普通の女性だったりします。この様な人達は観光目的で来て居ますから記念品等の「グッズ」を買ってくれます。しかも和歌山電鐵の場合「たま駅長」をキャラクターとして絵にして居るので、その絵を使って独自の「たま駅長のキャラクターグッズ」を造る事が出来ます。
又和歌山電鐵を利用して来なく運賃収入を落とさないバスのツアー客も「たまグッズ」が有れば買って行きます。実際14日の貴志駅には「たまグッズ臨時売店」が出店して居て、礒野専務自らが陣頭に立ってグッズを売っていて、私も和歌山駅で買ったのに又グッズを買ってしまいましたが、このグッズの売上は馬鹿に出来ません。
実際和歌山電鐵の21年度の収支は『営業損益は9809万円の赤字・グッズ販売や水害の損失の営業外損益を加えた経常損益は7620万円の赤字』となって居ます。此れを読めば営業外損益で2189万円盛り返した事になります。その営業外収益の全てが「グッズ販売の収益」とは言いませんが、水害に伴う営業外損失が有った事を考えれば3000万円前後の収益がグッズ販売で上がって居る事になります。この金額は千葉のいすみ鉄道の「グッズ売上が1959万円・利益が約300万円」の約10倍になります。此れは非常に大きいと言えます。
これは「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」効果としては非常に大きいと言えます。昨年の決算の数字を見れば、「たま駅長が居なければ此処まで来れなかった」と言うのは過言では無いと思います。
その「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」効果を大きくする効果を狙って、和歌山電鐵は「たま電車」を始め色々な施策を打って居るのは間違い無いと思いますが、今回の「TAMA MUSEUM STATION 和歌山電鐵貴志駅」もその狙いを持って戦略的に造られた駅と言う事も出来ると思います。
「高々駅舎一つ」ですが「去れど駅舎一つ」です。其処に「有る観光資源」を良く考えてそれを最大限に引き立てる駅舎を造って本業のローカル鉄道の再生に寄与する物を造ったと言う事に関して、率直に評価したいと思います。
しかも「たまカフェ」は地元産品の宣伝や雇用に寄与し、「たまグッズ」は地元の店で造って居る物も多く有り、「和歌山県勲侯爵和歌山電鐵執行役員スーパー駅長たま卿」の人気が高まって多くの観光客が来れば、その波及効果が地元にも及ぶ様な流れが出来つつ有り、その流れの中に「TAMA MUSEUM STATION」も置かれて居ると言えます。
此れだけ立派な駅ですから、両備グループの小島代表が言う様に「日本一、世界一の駅舎が、再生のみならず紀の川市・和歌山市・和歌山県の観光の大きな資源としてプラスになる」駅になって欲しいし、「しっかりした考えに基いた良い建物を造る事が他に色々な効果を及ぼす」実例になって欲しいと思います。
※「
TAKAの交通論の部屋
」トップページへ戻る
※「
交通総合フォーラム
」トップページに戻る。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |