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存続の生命線「利用促進策」に努力する地方ローカル線を訪問して
-2010年GWのひたちなか海浜鉄道を訪ねて-
TAKA 2010年 05月 05日
「メイド・復古カラーリング・観光客誘致・駅猫」ひたちなか海浜鉄道の利用促進策は飛び道具ばかり!? |
☆ ま え が き 〜活性化策で知名度を上げるローカル線は和歌山電鐵だけで無い!?〜
「地方ローカル線問題」と言う話は、交通や鉄道に興味が有る人間にとって見ると「如何なる形であれど無視出来無く触れる問題」で有ると思います。各言う私も、幣HPの中でも何回かこの問題に関して色々な鉄道を取り上げて来ました。
その中でも何処の会社でも大なり小なり取り組んで居るのが「利用促進策」で有ると言えます。しかしこの「利用促進策」ですが、この業界は他と比べると必ずしもその様なマーケティングが上手で無く、利用促進策が上手く行って居なかったりイマイチ積極的で無い会社も有ります。
その問題に関して、私が「集客・利用促進・活性化」で成果を挙げて居る例として取り上げてきたのが「和歌山電鐵」です。和歌山電鐵に関して言えば、言うまでも有りません。全国区の知名度を持つ「執行役員スーパー駅長たま卿」様の存在と其れを上手く活用して居る和歌山電鐵(と言うか両備グループ)が大きな成果を挙げて居ます。
今まで何回も和歌山電鐵は訪問して「執行役員スーパー駅長たま卿」様を中心に色々な物を見て来ましたが、私の身近な関東でも「色々な利用促進策」を打ち頑張って居る鉄道が有る事に(遅まきながら)気が付きました。それがひたちなか海浜鉄道です。
偶々「猫繋がり」では有りませんがひたちなか海浜鉄道那珂湊駅に居る「駅猫おさむ」の話をネットで見る機会が有り、「駅猫おさむ」は「執行役員スーパー駅長たま卿」の二番煎じかな?と思って居ましたが、別の所で「
メイドトレイン
」の話を知り、其れ以外にも色々な地道な活性化・利用促進策を展開して居る事を知りました。
と言う事で今年のGWの遠出の一環として、色々な利用促進策を打って居るひたちなか海浜鉄道を見に行く事にしました。さて、定期外客の獲得に向けて多種多様な施策を打って居るひたちなか海浜鉄道の現状は如何なる状況なのでしょうか?
「参考サイト」 ・
ひたちなか海浜鉄道HP
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おらが湊鉄道応援団HP
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茨城県公共交通活性化会議HP
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ひたちなか海浜鉄道湊線
(wikipedia)
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☆ 2010年のGW 利用促進策盛り沢山の「ひたちなか海浜鉄道」 (2010年 5月1日・5月4日)
さて・・・。最初に5月1日にひたちなか海浜鉄道を訪問した目的は、テレビで放送されたと言う「駅猫おさむ」を見に行く事でした。
「ローカル線と猫」という話は、和歌山電鐵の「執行役員スーパー駅長たま卿」様や会津鉄道の「
ネコ駅長バス
」等が有名ですが、「二匹目のドジョウ」ならぬ「三匹目のドジョウ」と言えるひたちなか海浜鉄道の「駅猫おさむ」が一体どんなものか?有る意味興味が有り一度訪れる事にしました。
西に「執行役員スーパー駅長たま卿」が居れば東には「駅猫おさむ」が居るぞ!!
この日ひたちなか海浜鉄道を訪れたのは夕方でした。しかも半分は観光目的が有ったので「お魚市場での買い物&食事」と「阿字ヶ浦での温泉」の間の限られた時間での那珂湊駅だったので、そんなに長い事は居れなかったのですが・・・。
最初那珂湊駅に降りた時には「駅猫おさむ」を見かける事が出来無かったので、駅前で出店を出して居る有名な?屋台「
勝福
」で名物の「マグロカツサンド」を食べてからお魚市場に行った後帰りに「おさむグッズ」を駅で買ったら、駅員さんが駅の中で寝て居る「おさむ君」を見せてくれたので、寝て居るのを邪魔しない様に写真をパチリ撮らせてもらいました。
その後列車が来るまで、駅員さんが「目ヤニが出て居たので獣医から貰った目薬を点そうとしたら逃げられた」と話されたので、「家のネコもそうですよ!!。ネコは勘は鋭いですからね〜」などと、猫について話してました。でもその間「駅猫おさむ」はずっと寝たままでした・・・。
和歌山電鐵貴志駅の「執行役員スーパー駅長たま卿」と比べると「普通のネコ」と言う感じが強く正直言って比べてしまうと愛嬌が無い「駅猫おさむ」でしたが、此方もグッズが造られたりキャラクターが造られたり既にテレビ等の取材を受けるなど着実に知名度も上がって居るようですし、茶トラ?の仲間のネコも一緒に居るようですから、今後とも那珂湊駅に元気に居付いてくれるでしょう。
和歌山電鐵の「執行役員スーパー駅長たま卿」もそうですが、猫の存在は人の心を和ませます。そういう意味で「駅猫」の存在は人を引き付ける一定の効果が有ると思います。それに「猫好き」の裾野は広いですから知名度が上がれば一定の集客効果も期待出来ます。そういう点では「今後も要注目」かもしれません。
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その5月1日の訪問で、他にも色々な試みが行われて居る事を現地で知り「その辺りをもう一度見ておこう」と思い、3日後の5月4日にもう一度ひたちなか海浜鉄道を再訪しました。
5月4日再訪で一番最初に見に行ったのが、阿字ヶ浦〜ひたち海浜公園間のシャトルバスです。
国営ひたち海浜公園は阿字ヶ浦駅から近くバスで5〜6分歩いても20分で着く距離に有ります。この地域では「国営ひたち海浜公園」は「阿字ヶ浦海水浴場」「那珂湊のお魚市場」と並ぶ有名な観光地であり、
昨年度の入場者数が約150万人
を数える程でしかも土日祝日は周辺道路は結構な混雑と言う状況に有り、確かに湊線を使ったシャトルバスが有れば便利な話で、過去に「
交通総合フォーラム
」の友人とその様な話をした事も有りました。
まあひたちなか海浜鉄道自体が設立当時の社名検討で「
将来的にはDMVによる阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園までの運行等に期待を込めて
」と言う事を考えていた経緯も有ったので、今回のような「シャトルバス」が実現したのかもしれません。
先ずは王道の「ひたちなか海浜公園利用客の誘致」
先ず起点の勝田駅では常磐線のホームに大きな看板を立てて、ひたち海浜公園・那珂湊への観光とひたち海浜公園へのシャトルバス運行をPRしています。まあこの場所でPRしても「勝田〜ひたち海浜公園間のシャトルバス利用客の転移」しか望めない側面も有りますが、PRの努力は評価出来ると思います。
それで乗換駅の阿字ヶ浦に行ってシャトルバスの状況を見てみたら・・・、午後2時過ぎだったので阿字ヶ浦→海浜公園の利用客は少なかったですが、海浜公園から来たバスは「大型路線バスに立ち客多数」と言う驚く状況でした。そのシャトルバスの客の大部分が2両編成のひたちなか海浜鉄道の車両に乗っていき、結局の所シャトルバスの接続を受けたひたちなか海浜鉄道の列車も立ち客が結構出る状況で発車して行きました。
GW期間中は
結構な本数のシャトルバス
が運行されていて、同時に「湊線1日乗車券+シャトルバス+海浜公園入場券で1,000円」のチケットが売られていた為、ひたちなか海浜鉄道に取っては結構な誘発効果が有ったと思います。一日当り500人の利用客があればGWの休み全体で約3000人の利用客増が見込めます。この人達が1,000円のチケットを買ってくれれば30万円の収入になります。この効果は大きいと思います。
まあこの企画に関しては「シャトルバスを路線バスからもう少し味の有るバスに出来れば・・・」「阿字ヶ浦の駅で何かイベントが出来ればもう少し魅力が上げられる?」「JRとタイアップして水戸・東京方面からの企画キップを出来ないか?」等々未だ課題も有ると思いますが、ひたちなか海浜鉄道を使って「那珂湊・阿字ヶ浦・ひたち海浜公園」の回遊コースを造れれば、地域全体にも波及の効果を及ぼせるでしょう。そういう意味では「可能性は有るのでは?」と感じます。
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さて、阿字ヶ浦でシャトルバスを見た後は、戻る列車で噂の「メイドトレイン」に乗って見ることにしました。
今年3月には水戸で「
コみケッとスペシャル5in水戸
」が開かれており、このイベントとコラボして「
パッケージにはアニメキャラの少女をデザインした納豆カレーの販売
」や「
茨城空港コスプレ大会
」等々色々なイベントが開かれており、その一環としてひたちなか海浜鉄道・鹿島臨海鉄道で「
メイドトレイン81号・82号
」を含む各種のイベントが行われました。
今回これらのイベントが好調だった様で、GW中の5月4日にひたちなか海浜鉄道で「
メイドトレイン83号
」が運行される事になり、メイド喫茶などは行った事の無い私ですが(本当ですよ!!)「この様な集客策の有り方」を見る為に、5月4日にひたちなか海浜鉄道を再訪しました。
コミケとのコラボ企画が当り「メイドトレイン」が定番化か!?
私が乗ったメイドトレインが15時半過ぎの列車の那珂湊→勝田間で、既に終盤になりつつある時間帯であった事も有りメイドさんが車販で扱っていた商品はほぼ売り切れて居り、しかも誰かのインタビューを受けていた為「此処で撮影フリー券2,000円出すのは勿体無い」と思い遠くから眺めて居るだけでして居ました。
まあ私自身はそんなに楽しめませんでしたが、車販の物も結構売れていた様ですし2,000円払って撮影自由の「PASS」シールを手に入れていた人も多数居ました。其れを目的に「800円の1日フリーキップ」を買った人も多数居たようです。其処から考えて「増客・増収効果」は其れなりに有ると言えます。
それに「メイドトレイン」という珍しい列車になれば「話題効果」も有るでしょうし、この様な事に興味を示すヲタクの方々はその為には財布の紐が緩み易い傾向が有ると思います。かなり「コアな層」を狙ったイベントですが、層がコアでも金を多く出してくれればかなりの効果を望めます。そう考えれば、この様なイベントも上手くタイミングと内容を考えて行えば、又別の客層を引き付ける事ができて「ひたちなか海浜鉄道に興味を示す人達」を増やす事が出来ると言えます。
そういう意味では今回の「メイドトレイン」の様な企画を「ゲリラ」的に行う事で、興味の有る事には比較的金を投じる事に抵抗を示さないコアなヲタク層を取りこみ増収を図る効果と話題を造る効果は有るのでは?と感じました。
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☆ (結論に変えて)改めて考えよう。ローカル線再生に必要な物は何だろうか?
今回、GWに2回に渡りひたちなか臨海鉄道を訪問しましたが、「駅猫」だけでなく「ヲタ好み」から「観光客誘致策」まで多種多様な利用促進策を実施していて、それらが一定の成果を挙げて居る状況を直接見る事が出来ました。
先ず「ローカル線の集客」で大当たりを出して知名度全国区になったのが和歌山電鐵の「執行役員スーパー駅長たま卿」様であり、その効果は何回も幣HPでも取り上げましたが、あまりに有名で有ると言えます。まあ実際問題として「執行役員スーパー駅長たま卿」に関しては、知名度と集客効果と言う「明」の側面に対して「動物にアソコまでさせるのは・・・。たま駅長のみが浮いて知名度が上がっていて波及効果が乏しい」という「暗」の側面も有るのは間違い有りません。
しかしながら「執行役員スーパー駅長たま卿」の知名度が和歌山電鐵の経営と貴志川線と言う地方公共交通の維持に、確実に貢献して居る事は間違い有りません。
和歌山電鐵の成功を見ると、確かにひたちなか海浜鉄道の状況は少々物足りないともいえます。しかし和歌山電鐵は「執行役員スーパー駅長たま卿」様という「ホームラン」に頼って居る状況に対して、ひたちなか海浜鉄道は「ヲタから観光客まで」ウイングを大きく広げて集客策を打ち「ヒット連打」で稼ぐ様な状況になって居ます。
個人的には「ヲタ」は好きでは有りません。しかし今回メイドトレインに関しては「撮影撮り放題は2,000円」という料金を設定して居てパスを購入して居る人も多かったですし、鉄ヲタに関してもリバイバルカラーの旧型車両撮影の為に800円の「1日乗り放題」の切符を買って居る人も多かったように見えました。
ひたちなか海浜鉄道は茨城県に立地しており人口の多い東京に非常に近い所に有ります。東京は人口が多い分色々なコアな好みの人も其れなりに居ます。「観光」だけに絞れば色々な場所が有る分競争相手が多くなりますが、「観光」に加えて「コアな好みの層」に向けてウイングを広げて企画を打てば競争が無く数が少なくても熱狂的な層を引っ張って来れます。
その様な環境の中で、「一般の人向けの観光系企画」と「各種ヲタ向け企画」をバランス良く設定して居る状況を見ると、傍目から見ると「脈絡の無い」イベント企画も「旅客誘致」に上手く寄与して居るのかな?と感じました。
その様な細かな積み重ねで「ヒット連打」作戦が結構上手く行って居るのでは?と感じます。実際ひたちなか海浜公園〜阿字ヶ浦間のシャトルバスは大当たりで2両編成で立ち客が多数出て居ましたし、その観光客が那珂湊駅で降りて「おらが湊鉄道応援団」のボランティアから「那珂湊のマップ・(割引を受けられる)湊線乗車証」をもらい、それを持って観光案内を受けた後、那珂湊市街(お魚市場等)に出て行く観光客も多く見ました。
この様に見るとひたちなか海浜鉄道の利用促進策は、結構手堅く行われて居るのに加えて、地域との連携・波及効果も上手く考えて行われて居る様に見えて、和歌山電鐵のやり方も有りですがひたちなか臨海鉄道のやり方も有りかな?と感じました。
これだけ利用促進策を行って居るひたちなか海浜鉄道ですが、ひたちなか海浜鉄道は実を言えば和歌山電鐵と比べても決して厳しい経営状況では有りません。ひたちなか海浜鉄道はひたちなか市から「
湊鉄道線存続支援事業
」で手厚い補助(
平成21年度継続事業で127,248千円
)を受けて居る事も有り、開業初年度(平成20年度)のひたちなか海浜鉄道の利益余剰金(マイナスであれば累積赤字額とニアイコール)は約600万円と大きな金額では有りません。(
賃借対照表
しか公表されて居ないので何とも言えませんが)これは決して「解消が厳しい金額」では有りません。
此処まで来ると、補助を増やすより「如何にして収入を増やすか?」と言う点で勝負だと思います。実際ひたちなか海浜鉄道は開業2年目の昨年度も「
人員で約2%増・収支も若干改善
」という好調で、開業3年目の本年度は各種試みで寄り一層の改善の可能性が有るといえます。
まあ私の個人的考えでは、ローカル線の再生に関しては「とにかく如何なる手段でも客を集めて収入を稼ぐのが第一」だと思って居ます。確かにプロセスも大切ですが生き残れなければ意味は有りません。究極の目的は「客を増やし売上を上げて収支を改善・均衡化して地域の公共交通機関ローカル線を安定継続化させる事」であり、その目的を達成する事こそが一度廃線問題が浮上した事で「死線を彷徨った」鉄道にとって先ず最初に大切と言えます。
そういう意味では、今までは「執行役員スーパー駅長たま卿」が活躍する和歌山電鐵(とその親会社の両備グループ)に注目して居ましたが、此れだけ「良い線」を来ていて「駅猫おさむ」や「色々なイベント」などの活性化策が当りつつあるひたちなか海浜鉄道にも「これからは注目しないとな」と今回感じました。
私自身「三毛猫でも黒猫でも客と金を招く猫は良い猫だ」とは思って居ましたが、今回ひたちなか海浜鉄道を見ると「ヲタでも金を落としてくれるヲタは良いヲタだ」という事を再認識させられました。(下世話な話ですが)「ローカル線の再生」には「金を引っ張ってくる」事が大切です。観光客が落とそうとヲタが落とそうと金には色は付いて居ません。そういう意味ではヲタと言う特定層にもウイングを広げたひたちなか海浜鉄道のやり方も一つのやり方です。
実際問題「ローカル線の再生は一日にしてならず」で色々困難な道のりが有るでしょうし、現実として「活性化の処方箋」は個々の事例に寄り全く異なると思います。しかしプロセスは異なれども目的は「地域公共交通としての鉄道の安定」と「鉄道として生き残れる収益を稼ぐ事」で有ると思います。今後もこの目的の達成に向けて、ひたちなか海浜鉄道も「考えられるありとあらゆる活性化策」を用いて頑張って欲しい物です。
※「
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