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環 状 八 号 線 走 行 記
-半世紀かけて遂に全通した「環状八号線の最新区間」を走行して-
TAKA 2006年09月07日
「環状八号線」と言えば、正式名称「東京都市計画道路環状第8号線」と長い名称が付いていますが、大田区羽田空港〜北区岩渕町44.2kmを結ぶ環状道路で、東京西部の環状交通及び東京に入る関越・中央・東名・第三京浜と言う高速道路間を結ぶ路線として、「東京で車を良く運転する人であれば一度は通った事有る道路」であると同時に、非常に混雑する道路の為ラジオの渋滞情報等で必ず出てくる道路であり、通った事無くても聞いた事は有る道路で有ると思います。
実際東京区部で都市計画されている環状道路の中で、環状七号線(環七)と並んで利用の多い路線ではありましたが、環状七号線が1985年に開通していますが、環状八号線は1946年都市計画決定・1956年着工していた物の今まで全線開通していませんでしたが、着工から半世紀経過した2006年5月28日に最後まで残っていた環八北側に当たる練馬区南田中地区・練馬区北町〜板橋区若木地区が開通し遂に全線開通しました。
(参考HP)・東京都HP「
未来につながる東京の大動脈!〜環状第8号線全線開通〜
」
・日経コンストラクション「
着工から半世紀,環八が5月28日に全線開通
」
・WikiPedia「
東京都道311号環状八号線
」 私も練馬区民でこの未開通地域には土地勘もあり用事等で車でも良く利用する地域の為、今回の開通は非常に興味を持って見つめていました。実際この開通の一歩前に開通した「練馬中央陸橋〜春日町トンネル」間が出来て目白通り〜川越街道間が繋がっただけでかなり便利になったので、特に南田中地区の開通で練馬区東部地域⇔杉並・世田谷方面への車の移動がどれだけ便利になるか非常に興味が有りました。
開通後既に何回も通った道では有りますが、自分で運転すると危なっかしくて写真も取る事が出来ません。今回偶々助手席に乗り環八開通区間を通る事が出来ましたので、同乗の助手席から写真を取りながら観察した遂に開通した「悲願の東京区部環状道路」について書いてみたいと思います。
☆ 環 状 八 号 線 走 行 記
環状八号線は良く利用する道路ですが、私の場合仕事で車を使い移動するのは東京の東部〜都心or南西〜西部地域が多いので、環八の北部区間(環八中の橋以北の区間)は大概朝夕の時間帯に通過する場合が多く、加えて今までは環八の工事の為井荻トンネルが工事で一車線規制だった為、抜道経由で逃げる事が多くそんなに利用しませんでした。
只環八その物に関しては、昔は「抜け道一筋(「井荻土地区画整理事業」で出来た千川通り〜青梅街道(八丁交差点)を使うと環八より10分以上早かった)」でしたが、井荻トンネル開通&井荻踏切解消で環八がかなり早くなり、近年は目的地によっては環八を使う様になってきていました。その点では環八は「井荻トンネル」と言うバイパス完成でかなり使いやすくなったと言えます。
今回9月5日午後3時過ぎに国立→板橋と車で移動する時に、「最短移動経路は何処かな?」と相談したら、「東八道路→(中の橋交差点)→環状八号線→(環八高架下交差点)→都道447号線→中仙道」と言う経路が出てきたので、「距離的には遠回りでは無いか?」と指摘したら「環八が完成したから早いぞ!」と言われ、それでは環八新規開業区間の実力を試してみよう」と思い、提示のルートで環八新規開業区間を通行してみる事にしました。
環八井荻トンネルに入り暫く走ると、今まで無かった明り取りの区間(昔の井荻トンネル出口)が先に見えその先で2車線のトンネルが左→笹目通り・右→環八と分岐しています。未だ環八が開通してから数ヶ月の為既存の笹目通り谷原方面への通行量の方が多く7:3位の比率でした。笹目通りは谷原経由で関越に接続していますし、真っ直ぐ行けば新大宮バイパス経由で埼玉方面にも行けます。その点では今まで通りかなりの通行量が有るはずです。それが1車線では将来的にボトルネックになり此処が頭での渋滞になりかねません。この日は両方向スムーズに流れていましたが、将来的には環八外回りの井荻トンネル内で渋滞が発生するのではないか?と気になりました。
「(1)新規開業の南田中区間の大部分を占める練馬トンネル」
井荻トンネル内を左に曲がり、早速環八の新規開業南田中区間に入ります。この区間は井荻トンネル〜練馬中央陸橋(目白通り)の間が殆ど全部地下トンネルになっています。都市計画決定されていた区間では有りますが沿道は住宅地です。その為周囲の環境もあり用地買収が出来ていても開削のトンネルにしたのでしょう。しかし明り取りが有るので音も排気ガスも外に出てしまうでしょう。その点が環境にどれだけ影響を与えるのか?今後注意深く見て行く必要が有るかもしれません。
「(2)都営大江戸線練馬春日町駅前を潜る春日町トンネル」
練馬中央陸橋を過ぎると、一部地上を走った後又大江戸千練馬春日町駅前の区間を春日町トンネルで通過します。この区間は南田中区間・北町若木区間より一歩先に完成した区間ですが、チョット前まで「道の真ん中に有る御稲荷さん」が有るなど地上区間で用地買収に苦労していたようです。いくら畑と住宅の混在地でも流石に23区内だけ有り用地買収は生半可では無かったようです。
又この区間は今まで関越道まで川越街道や笹目通り経由か外環道を使っていた練馬区北東部・板橋区・北区の住民に取り関越道への新たな最短ルートになります。これにより川越街道・笹目通りの混雑緩和や練馬区内生活道路へ流入していた通過交通の移転が期待できます。そういう意味でも道路ネットワークの完成は大きな意味が有ると言えます。
「(3)昭和の時代に造られた環八既開業区間@平和台駅前〜練馬自衛隊間」
春日町トンネルを過ぎると、未開通の南田中区間・最近開通した春日町区間と北町・若木区間を結ぶ区間になりますが、この平和台〜川越街道区間は昭和の時代から出来ていた区間で、今までの地下トンネル・立体交差で信号が殆ど無かった区間から一転して「片側2車線だが歩道も狭く植樹も少なく防音壁も無い」区間になります。
有る意味未来から現代に引き戻されたと言う事もできますが、逆にこの区間は平和台駅前を中心に駐車場の多いスーパー(ライフ)や量販店(ヤマダ電器)等のローサード店が多数あり、北町の川越街道と環八の北町一丁目交差点のドンキホーテと並んで意外に広い地域から人を集めています。(私もその一人)そういう点では現代的なトンネルの多い道路も良いのですが、「道が賑わいを造る」と言う点ではチョット問題ありなのかな?と言えます。
「(4)川越街道との立体交差@練馬区北町一丁目」
「(5)北町若木トンネルの入口部分(奥には東武東上線が通る)」
川越街道を過ぎると立体交差〜北町若木トンネルとアップダウンの多い区間になります。首都高中央環状王子線の飛鳥山トンネル前後区間程ではありませんが、一路陸橋の上に上がり其処からトンネルに吸い込まれるのは正しくジェットコースターの様な感じです。信号も少ない事も有り制限速度OVERの速度でどの車も軽快に流れています。(環八の南田中区間(練馬トンネル内)と北町若木区間(若木トンネル先の明かり区間)で白バイ・ネズミ捕りの情報が結構有ります。道は良いですが走る時には注意して下さい!)
北町若木トンネルは東武東上線を潜る為に作られたトンネルです。陸橋でも良かった気がしますが、「この先北側が崖で下がっている」「東上線の側道からか派地北側に入る側道を作る」にはスペースが狭い」等の理由も有ったのか、この区間は(練馬トンネルに比べると)チョット短いトンネルになっています。このトンネルは距離が短いからか明り取りではなく換気塔での換気になっています。この差は「トンネルの距離」なのか?それとも「他の理由」が有るのか?興味が湧きます。
「(6)首都高速5号線&都道447号線(赤羽西台線)との立体交差@環八高架下交差点」
「(7)環八新規開業区間(北町若木地区)の終点@板橋区相生町(先の高架は都営三田線、この先で中山道と交わる)」
北町若木トンネルを抜けると、地上に出てアップダウンの有る地形を盛土構造で抜けます。この辺りも雑然とした比較的古い住宅街です。環八はその住宅街に接する訳でなく別世界のように隔絶された道路となっています。この西2〜3kmの所には新大宮バイパスが川越街道〜笹目橋を結んで通っていますがこの道も環八と同じ様に街と隔絶し孤立した道路となっています。何故この様な街と隔絶した道路が作られたのか?疑問には感じます。
地上区間を暫く走ると、その先は首都高5号線が見えてきて、首都高5号線と首都高の側道である都道447号線の間を立体交差ですり抜けて、今まで国道122号線〜中仙道(国道17号線)〜都道447号線の間で供用されていた環状八号線と合流します。此処までで今回の環八新規開業区間が終了する事になります。
既存の供用区間に入ると、道幅等は変りませんが平面で信号の有る「普通の環八」に戻ります。逆に言えば今回の新規開業区間(及びその直前に開業した春日町区間)が立体交差主体で普通の道路としては非常に高規格であると言えます。
その様な高規格道路が完成した事は、東京北西部の道路交通にとって極めて大きな意義が有ると言えます。私もこの地域の住民なのでその受ける恩恵は非常に大きいと言えます。その事は今回利用して改めて感じさせられました。距離的には迂回ルートで有るにも関わらず荻窪から環八を利用して志村経由で板橋まで約1時間で行く事が出来ると言うのは日常的にこの地域で車を利用する人間に取っては正しく驚きです。此れも正しく環八建設と言う「インフラ構築」の成果で有ると言えます。その恩恵を改めて感じさせられました。
☆ 地域に「高規格道路」が出来る効果とは?
この度半世紀架けてやっと完成した「環状八号線」ですが、今回の新規開業区間を初めて通ったのが2ヶ月前の釣行の帰りでした。その時は川口で人を降ろし122号都県境から何時もの環七神谷陸橋経由で練馬へ戻ろうとした時に、同乗者が「もっと近い道が有る」と行って指示したのが環八平和台経由のルートでした。その時も「こんなに凄い道が出来たんだ」と驚いた事を覚えています。
その点では私も地元だけ有り、「環八完成のメリットを大いに受ける」一人で有ると言えます。ここで結論に変えて「地域に高規格道路が出来る効果」と言う点について、私見を基にして述べて見たいと思います。
・やっと整備が進んできた東京23区西部の環状道路ネットワーク
環八が今回完成した事で、東京都23区西部地域の一般道の環状道路ネットワークは完成した事になります。
東京都内は誠意道路整備が進んで居ますが、首都である事で人の流れや物流が多い為に車が飽和状態となり各所で渋滞が発生しています。その東京の道路ネットワークの中でも「放射道路」の整備に対し「環状道路」の整備が劣っているのは周知の事実です。その象徴が特に酷い環七・環八の渋滞で有ると言えます。
しかし近年〜近い将来にかけて今までの努力が実り、特に東京23区西部の環状道路の整備が進んでいます。2002年の首都高中央環状王子線開通や今回の環八全線開通もそうですし、今後首都高中央環状新宿線や中央環状新宿線工事終了後は地上の山手通りが豊島区要町〜渋谷区大橋の間で幅員30mの道路として拡幅整備されます。又来年度の地下鉄13号線開通後は今は工事で規制の多い明治通りも片側2車線+路側帯+歩道の道路として再整備されて、かなり通行しやすくなる筈です。
この様に97年の
井荻トンネル
完成以来東京23区西部の環状道路は劇的に整備が進んでいると言えます。特に細かい道路の整備が遅々と進まない事も有りますが、これだけ整備が進んでも「23区西部で頼れる南北道路は山手通り・環七・環八だけ」と言う現実は改善されませんが、この3本の道路を縦軸にして各放射道路を横軸とした東京23区西部の道路ネットワークはこれで一通り「使える道路ネットワーク」になったと言う事が出来ます。
・東京23区西部の環状道路ネットワーク整備の効果は?
実際私の学生時代(90年代前半)は環七・環八を走る事は自殺行為で「生活道路すり抜けの抜道命」でしたが、今は余程酷い渋滞情報が有る時や慢性的渋滞区間以外は普通に環状道路を通れる様になっています。此れも環状道路整備が進んだ効果で有ると言えます。
この事は色々な意味で効果が有ると言えます。例えば「渋滞解消による経済損失緩和・環境改善」の効果が有るのも当然ですし、抜道通過自動車減少による市街地生活道路の環境改善等の効果も有ると言えます。(実際に近年抜道がかなり空いてきた)他にも色々な意味で効果が発生していると言えます。
この効果は大きいと言えます。実際の社会全体の「経済効果」と言う様なマクロの指標は資料を持ち合わせていないので分かりませんが、私の周りと言う極めてミクロな側面でも環状道路ネットワークの完成特に今回の環八南田中・春日町・北町若木区間の完成により、沿線住民が社員に多い私の会社などは東京南西部・東京北部への移動時間が劇的に減少し仕事の対応可能範囲が広がったと言う効果も有ります。
この様な効果を受けて居るのは私の会社だけでは無いでしょう。練馬区東部・板橋区西部・北区北部地域の会社・住民では大なり小なりこの様な効果を受けて居ると用意に推察できます。その様な点から考えても環状道路ネットワーク整備進展でかなりの有形無形の効果が発生している事は間違いないと思います。
・しかし未だ足りない首都圏広域環状道路ネットワーク
只「東京23区西部」と言う限定した地域で見るとかなり整備が進んだと言う環状道路ネットワークですが、これを東京全域・首都圏と言うもっと広域のレベルで見ると、これでも未だ整備が全然足りないと言う事が出来ます。
今首都圏で整備が進んでいる環状道路は「
首都高中央環状線
・
東京外環自動車道
(外環道)・
首都圏中央連絡自動車道
(圏央道)」と言う「3環状道路」が計画されていますが、この中で中央環状線・圏央道はかなり建設が進んできていますが、重要路線である外環道練馬以南など着工の目処すら立っていない状況です。
実際2010年と言う近未来までのスパンで見ても、中央環状線が葛西〜小菅〜板橋間で完成し東〜北方向の環状交通をカバーし07年度池袋〜西新宿間・09年度西新宿〜大橋間で完成するまで進んでいて、圏央道は2009年度までの完成予定が八王子南IC〜桶川JCT・海老名北JCT〜海老名北IC・つくばIC〜江戸崎IC等の細切れ区間で完成の状況で(参照:
圏央道の目標完成年度
)、一番遅れている外環道は今完成の大泉JCT〜三郷南IC以外は何処も完成していない状況です。この様な完成状況なので2010年の段階で放射の高速道路間の移動に使える環状高速道路が、中央環状線(東名⇔中央⇔東北⇔常磐⇔東関道)・外環(関越⇔東北⇔常磐)・圏央道(中央⇔関越)でしか使え無いと言う御寒い状況に有ります。
その為幾ら東京都内で環状道路が整備されてきても、関東を通り抜ける通過交通が首都高速を使い東京都内に流れ込み首都高都心環状線に集中し首都高か苦戦の混雑を招くと同時に、特に交通量の多い東名・中央からの車が外環・中央環状線の部分完成区間を目指して東京IC・高井戸ICで降りて東京23区西部の環状道路特に環八・環七に流れ込んできます。東京23区西部の環状道路である山手通り・環七・環八は東京都内とその近郊の車の流動だけでなく、これ等の広域移動の車の流れも引き受けてしまっています。そのために大規模な渋滞を引き起こすのです。
ですから特に「3環状道路」の整備が遅れている東京西域地域の「広域環状道路ネットワーク」の整備が、東京23区西部の環状道路ネットワークの機能向上のためにも必要不可欠で有ると言えます。後7〜8年で首都高中央環状線・圏央道は全面開通する予定です。しかし特に環八の通過交通量削減に効果の高い外環道大泉JCT〜東名JCT間は大深度地下による建設構想が進んでいますが、具体的着工も完成も決まっていません。これが出来るまで環八をメインにした東京23区西部の環状道路は徐々に緩和されると言えども広域通過自動車に起因する渋滞に悩まされる事になります。
その意味でも整備が進んだ一般道による「東京23区西部の環状道路ネットワーク」のより一層の機能発揮のためにも、3環状道路と言う首都圏広域環状道路ネットワークの整備をスピードを上げて進める必要が有ると言えます。
* * * * * * * * * * * * * * *
今回地元に開業した「環状八号線」を通って見て、改めてそのインフラの威力に驚かされました。通った時の印象が「一般道路ではなく高速道路に近いな」と言う感じでした。実際今回の完成で井荻トンネル南入口〜春日町トンネル出口間で信号が1箇所、志村〜北町間でも信号が1箇所と言う状況であり、正しく「高速道路に近い一般道路」と言う事が出来ます。
この効果は非常に大きいと言えます。昔は一般道なのに井荻トンネルの1.2km区間に信号がない事に喜んでいましたが、今やそれ以上の信号のない一般道路区間が誕生した事になります。ましてや地下ですから「地域の分断」と言う問題も有りません。そういう点ではきわめて優れた道路で有ると言えます。
この様な「信号のない一般道路」は色々な意味で効果をもたらします。例えば環七の豊玉南2丁目〜高円寺駅入口の約2kmの区間も本線には信号が有りませんが、この区間に信号が無いので渋滞していても比較的流れる事により関東バスの高円寺〜赤羽・練馬線の利便性が高く、関東バス&中央線が西武新宿線の需要を食っているような現象が発生しています。此れも形を変えた「信号が無い一般道路の効果」と言う事が出来ます。
その点で言えば今回開業で全通した環八も特にインフラの優れている北部〜北西部で車交通の速達性向上だけでなく、整備され速達性の有る道路による都市内中距離直結バス路線(赤羽〜荻窪やその間で赤羽や荻窪から春日町・平和台・東武練馬等の駅間を結ぶ路線)などと言う新たな交通が発生するかも知れません。そういう点で考えると色々な意味で「可能制を広げてくれた道路」であると言う事が出来るのではないでしょうか?
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