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関越道⇔中央道直結で首都圏の車の流れは変わるのか?

−あきる野IC〜八王子JCT間が開業した圏央道走行記−



TAKA  2007年07月08日




あきる野IC〜八王子JCT間開業を宣伝する横断幕@中央道


参考サイト:国土交通省関東地方整備局 「 三環状HP 」「 圏央道開通特設サイト
        NEXCO東日本 HP ・  NEXCO中日本 HP

※本記事は「 TAKAの交通論の部屋 」「 交通総合フォーラム 」のシェアコンテンツとさせて頂きます。

 「東京は道路が整備されていない」と言うのは昔から言われていた事ですが、その道路整備の不十分さの象徴は「整備が遅れている環状道路」で有る事は否定できないと思います。
 東京23区内では計画がほぼ完成している環状道路は内堀通り・外堀通り・明治通り・山手通り・環状七号線・環状八号線と不十分・完全に環状化していない(山手通り&環状八号線は計画自体西側しか存在していない)等々問題が有りますが、曲がりなりにも6本の環状道路が有ります。しかし一歩郊外に出ると完全に成立している環状道路は国道16号線(東京環状)しかありません。しかも国道16号線は色々なバイパスが出来ていますが、未だに片側1車線の区間が残るなど首都圏郊外の大都市(横浜・相模原・八王子・大宮・柏・千葉)を結ぶ道路でありながら、通行量に比してのインフラのレベルは極めて不十分な状況に有ります。
 その様な首都圏の環状道路の状況は一般道路だけでなく、高速道路に関しても言えます。有る意味その酷い状況は一般道路以上で有ると言えます。首都圏の高速道路(此処では「信号の無い道路=高速道路」と単純に分類する)で一周できる環状道路は首都高速都心環状線しかなく、計画上は 首都高速中央環状線 (以下中央環状線と略す)・ 東京外かく環状道路 (以下外環と略す)・ 首都圏中央連絡自動車道 (以下圏央道と略す)の所謂「三環状」約520kmが計画されていますが、未だに整備率は約4割と言う極めて不十分な状況です。
 首都圏の環状高速道路は、東京都心から見ると北東側〜北西側では中央環状線・外環の整備が進んでいて、関越〜東北〜常磐の各高速道路間の移動は中央環状線と外環を使えば都心を完全にバイパスする事が可能で、渋滞に巻き込まれる可能性も低くかなり便利になっていますが、一番需要の多い首都圏の西側区間である東名〜中央〜関越の各高速道路間の環状交通に関しては、昨年度末の段階で「都心環状線を経由しないと乗り換えられない」と言う極めて不十分な状況であり、その為それらの各高速道路を移動する通貨交通が東京の都市内交通道路で有るはずの首都高速3号・4号・5号線や環状七号線・環状八号線に流れ込み極めて激しい渋滞を引き起こしています。

 その様な極めて不十分な整備状況の中で、今年は首都圏西側の環状交通で大きな変化が起きます。それは三環状の高速道路の中で「圏央道:あきる野IC〜八王子JCT」間が6月23日に開業し、又「中央環状新宿線:熊野町JCT〜西新宿JCT」間が12月に開業を予定しており、今までは一般道路or首都高都心環状線経由でしか結ばれていなかった中央道〜関越道を結ぶ高速道路が2本完成することになります。
 今回その第一弾として6月23日に開業した「圏央道:あきる野IC〜八王子JCT」を偶々圏央道沿線の西東京地域の拝島で有った仕事に絡めて訪問する事が出来ました。しかも他に車を運転する人が居ての「助手席同乗」だった為、ゆっくり車窓を観察する事が出来ました。今回はあきる野IC〜八王子JCT間が開業して関越道と中央道を直結する事になった圏央道がどの様な変化をもたらす事になったのか?現地訪問を基に書いて見たいと思います。

 ☆ 圏央道試走行記その1(新規開業区間:中央道八王子IC〜圏央道あきる野IC)

 今回開業の圏央道を試走したのは開業から数日経った6月27日の午後でした。今までは拝島へは中央道国立府中ICから新奥多摩街道or八王子ICから国道16号線が一般的でしたが、新奥多摩街道は日野橋交差点と堂方上〜小荷田間・国道16号線は拝島橋〜武蔵野橋間で日常的に渋滞する為(根本的問題は堂方上〜小荷田間で新奥多摩街道と国道16号線がラップしている事なのだが・・・)、車で往来するにはかなり不便な所でした。しかし今回距離的には遠回りになりますが今回圏央道あきる野IC〜八王子JCT間が開通した事であきる野IC〜睦橋通り経由で渋滞のネックをパスして拝島にアクセスできる事になったため、早速利用して見る事にしました。
 今回は偶々電車で行った小田急線梅ヶ丘駅近くから会社の車で拝島への移動だったので、社員の人に運転してもらい梅ヶ丘から首都高4号線永福入口まで移動して、そこから首都高4号線〜中央高速を利用して拝島を目指すとにします。途中に中央道石川PAで飲み物を買ってから先を目指しましたが、中央道均一区間(高井戸〜八王子)は年50回近く利用する「勝手知ったる道路」ですが、混雑度等にも特に変化は有りません。只対向車線の上り線が八王子料金所周辺で通行量が多い感じでしたが、此れも珍しい事では有りません。
 八王子料金所を過ぎると次は高尾山の北側に新設された八王子JCTになります。しかし上り車線は車の通行量が多い感じがするものの、私達の走っている下り路線は前後に走る車がチラホラ見えるだけで「ガラガラの高速道路」という感じです。少なくともこの日を見るだけでは「中央道八王子周辺に圏央道開通で影響が有るか?」と問えば「NO」と言う事になります。

  
左:八王子JCTの圏央道分岐表示  右:八王子JCTの圏央道分岐地点

  
左:将来の圏央道の東名高速方面分岐地点  右:将来の延長予定の場所と八王子城址トンネル入口

 中央道八王子ICから八王子の校外の山の中を約10km( 正確には八王子IC〜八王子JCT間は10.2km )走り、都県境の小仏トンネルに向けての勾配区間に入ると圏央道の分岐の案内看板が見えてきます。中央道の八王子周辺を走っているのに「関越道」と言う表示を見ると未だ違和感を感じますが、改めて「圏央道で繋がったんだな」とも実感させられます。
 八王子JCTは丁度高尾山北側の渓谷とその 向かいの山の斜面に造られたJCT で正しく「斜面にしがみついている」と言う表現が当てはまります。圏央道はルート選定で用地買収の困難を避ける為に八王子周辺の既開発地を避けて西側の丘陵地帯を選んだ事は理解できますが、その代償がこの山の斜面に造られた巨大JCTで有るのならば、郊外地を買収する土地買収のコストと難所にJCTを造るインフラ構築のコストどちらが高かったんだろう?と考えさせられます。
 しかし八王子JCTで南側を見てみると、一部工事が始まっている感じがしますが具体的土木構造物は完成しておらず、今見た感じでは「圏央道が南に伸びるのはまだまだ先だな」と言う感じです。八王子JCT〜八王子南IC間は平成21年度開業とのことですが、車窓から見た限りは「本当に平成21年度に出来るのか?」と言う感じがします。
 八王子JCTで中央道上下方面から合流して圏央道本線に入ると、直ぐに八王子城址トンネルに入ります。この先は全長約2.4kmの 八王子城址トンネル ・全長約730mの恩方トンネルなど丘陵地帯を貫く中距離のトンネルが複数有り全体的には「殆どがトンネルの中」と言う状況になっています。

  
左:中央道方面へのハーフICの八王子西IC出口  右:西東京の丘陵地帯を貫く圏央道
  
左:今回開業区間と既開業区間の接続点あきる野IC  右:あきる野IC直近の 東京サマーランド

 八王子西ICは恩方町等八王子市の北西に広がる「山を切り開いた新興住宅地」への玄関口になります。都道には接続している物の幹線道路ではないですし、中央道方面へのハーフICの為「地元用のIC」と言った感じでしょう。只この近辺には一寸走れば霊園やゴルフ場が有り、時期にはアクセス道路の秋川街道・陣場街道・高尾街道等はそれなりの混雑をしますので、その緩和の効果は有るかもしれません。
 八王子西ICを過ぎると、少し地上を走りますが又トンネル区間に入ります。八王子西IC〜あきる野IC間にも 天合峰トンネル (1350m)・ 川口トンネル (1950m)と言う中規模のトンネルが2つ有り、今回開業区間の八王子JCT〜あきる野IC間9.6kmは殆どが「トンネルの中を走る道路」と言った感じです。有る意味トンネルの多さを考えるとこの前後の区間圏央道青梅IC〜さがみ縦貫道相模原IC間は有る意味圏央道の最難関箇所かもしれません。
 川口トンネルを出るといきなり視界が開け秋川の上に出て左手に サマーランド が見えると、直ぐ今回の開業区間の北側の起点になる あきる野IC になります。此処で八王子ICの先の国道16号線左入町交差点から伸びてくる滝山街道と接続します。圏央道はこの区間を直線で結ぶ滝山街道に対して三角形の2辺を結ぶ形になり距離的には遠回りですが、流石「高速道路vs片側1車線の国道」と言う差も有り圏央道の方が早く、選択肢として15分で到達と言う時間を買う人は多いでしょう。但し八王子IC〜あきる野間800円と言うのは一寸値段が高い感じがします。せめて500円位にはならないでしょうか?
 今回は目的地が拝島なので此処で一度降りましたが、私達が「あきる野」と言うと「サマーランド」「川遊び」「バーベキュー」などが思い起こされ、正しく東京の身近なアウトドア遊び場所と言う感じです。しかし今までは「八王子ICから滝山街道をひたすら走る」or「都内から五日市街道をずっと走る」と言うアクセスルートしか有りませんでした。しかし今回圏央道開通でこの「あきる野」エリアが身近になった事は間違い有りません。この夏は圏央道開通効果で「サマーランドに遊びに行く」「秋川でバーベキュー」と言う人が増えるかもしれません。

 ☆ 圏央道試走行記その2(既開業区間:圏央道あきる野IC〜関越道鶴ヶ島IC)

 圏央道の新規開業区間訪問後、所用を済ませた後この後如何しようかな?と考えると未だ4時頃で、次の仕事をするには時間が無いが日が落ちるまでには時間的にも余裕が有ると言う中途半端な状況で、同乗者が「どうせなら圏央道経由で東上線の駅まで送ってよ!関越で帰れば直ぐだよ!」と言われ、私も寄りたい所が有ったのでこれ幸いと「途中まで運転して行ってね」と言う事になり、その為圏央道の残りの部分を観察する事が出来ました。
 再びあきる野ICから圏央道に乗ると今度は掘割区間になります。あきる野〜日の出間は丁度五日市線の南北に住宅地が広がる地域ですが、圏央道の開通で イオン日の出ショッピングセンター三吉野工業団地 が完成したり建設中であり、一寸前の時代の住宅開発だけでなく圏央道開業で色々な商業・工業を含めた多様な開発が行われるようになり、圏央道開業で町並みがかなり変わってきました。
 日の出ICを過ぎた後、又青梅市南部の丘陵地帯を菅生トンネル・友田トンネルで抜け、多摩川を渡り青梅市の市街地に入ります。多摩川橋〜青梅IC間は圏央道既開業区間でほぼ唯一「市街地を回避できなかった」区間であり、その為多摩川橋・青梅トンネルは上下2層構造になっており、特に 青梅トンネル は市道の下に上下2層のトンネルをNATM工法で掘削した巨大トンネルです。このトンネルの独特の形は車で走っていても良く分かり、正しく土木技術の勝利で作り上げられた巨大インフラと言う事が出来ます。「上下2層の高速道路」は今や都市では珍しく有りませんが、「上下2層のNATM工法のトンネル」は珍しいでしょう。ただ青梅トンネルで実用性と安全性が証明されれば、今後東京の高速道路で「狭い地上道路の下に高速を作る方法」として注目を浴びる可能性は有ると思います。

  
左:中央道方面へのハーフICの日の出IC出口  右:上下2層構造の圏央道多摩川橋区間
  
左:青梅街道への出入り口青梅IC出口  右:「東京環状」国道16号線との接点入間IC出口
  
左:交通量が多い圏央道既開業区間(外回りでは舗装の改修工事で車線規制中)  右:現在時点の圏央道の北の終点鶴ヶ島JCT

 圏央道は青梅トンネルを過ぎ青梅ICの先からは、今までの「トンネル続きの高速道路」から「地上を走る普通の高速道路」に一変し、茶畑や武蔵野の丘陵地帯を車窓に見ながら北に進む事になります。又この地域では圏央道は青梅ICで飯能と西多摩を結ぶ岩蔵街道に、入間ICで国道16号線及び飯能と所沢・浦和を結ぶ国道463号線と連絡しており、流石に既開業区間と言う事も有り地域の道路ネットワークと上手く結節しています。
 又特に入間ICは地域の南北交通の鍵である国道16号線と直結している為、多摩地域から関越道へ抜ける車が国道16号線を経由して瑞穂〜入間と抜けてきて(東に多摩湖が有る為この地域の東京〜埼玉の南北交通は国道16号線しかない)此処から圏央道を利用して関越道を目指す車も多く、他のインターに比べて入間ICは利用されている感じです。
 実際入間ICを境にして北側では明らかに交通量が増えた事(特に対向車線の南行き)は車から見ていても分かります。特に入間市南部地域には16号線・463号線周辺に工業団地が広がっており各種の物流拠点も整備されていますが入間市⇔関越道のメインルートの一つである国道16号線には現在拝島地域と並び数少ない「バイパスの無い片側1車線区間」が残っていて「 入間狭山拡幅 」が事業として行われては居ますが、実際問題ボトルネックが残っているのが現状です。
 その様な事も有り、同時に 青梅IC〜鶴ヶ島JCT間 は平成8年3月供用開始と、圏央道で一番早く供用開始をした区間で高速道路の存在が一般化している事も有り、加えて関越道に繋がっていてバイパス効果が大きく望める事も有り、これだけ利用されているのだと思います。広域ネットワークの一部として多く利用される「圏央道」の将来の姿の一端が供用後約10年が経過したこの区間には有るのでしょう。

 ☆ (あとがきに変えて)環状道路の完成は首都圏の道路交通に何をもたらすのか?

 今回のあきる野IC〜八王子JCT間の開通で「行き止まりの高速道路」から初めて「関東の高速道路ネットワーク網」に組み込まれた圏央道ですが、今回開通直後の圏央道を通りましたが、その開通効果はかなり大きな物が有ると言えます。今回結論に変えて「圏央道」の部分開通が私達にもたらしたものについて考えて見たいと思います。

 □ 圏央道あきる野IC〜八王子JCT間開通の効果は?

 果たして圏央道あきる野IC〜八王子JCT間の開通効果はどれ位の物が有るのでしょうか?流石に圏央道の建設を担当するNEXCO中日本のHP内の「 圏央道開通特設サイト 」で「 開通のメリット 」について、移動時間短縮・経済効果・渋滞緩和・環境負荷低減等のメリットが説明されていますが、確かにこれらの色々なメリットが有るのは確かですが、これらの効果の中で一番効果が大きいのはやはり渋滞緩和の効果でしょう。
 元々圏央道と比較的平行にして走る国道16号線自体が、東名高速横浜町田IC・中央道八王子IC・関越道川越IC・東北道岩槻IC・常磐道柏IC・東関東道千葉北ICと言う東京から放射状に伸びる高速道路のIC間を結び、関東を通過して各地域を結ぶ自動車交通の重要なルートになっていますが、現在殆どがバイパスや片側2車線道路が整備されている国道16号線は中央道〜関越道を結ぶ首都圏の西側で拝島・入間の2箇所で未だに片側1車線のボトルネックを抱えており、この区間は日常的に渋滞しています。私も今回書いた様に仕事の都合上八王子・立川・拝島・瑞穂方面には結構車で行きますが、国道16号線の拝島の1車線区間と16号線と新奥多摩街道の並存区間は渋滞が激しく意図的に避けるようにしています。
 しかし今回の圏央道あきる野IC〜八王子JCT間の開業はこの「渋滞の名所」と言えるボトルネック区間を見事にバイパスする様に成っておりその効果は大きい物が有ると言えます。今までも圏央道の建設が進んだ事で中央道八王子IC〜滝山街道〜圏央道あきる野ICと抜けて国道16号線をパスして中央道⇔関越道を結ぶルートが有りましたが滝山街道が片側1車線で前から混む道であり、その効果は限定的な物であったと言えます。今回の圏央道部分開通はその様な今までのボトルネックを解消する効果が有るのですから、大きな混雑緩和期待を持つ事が出来ると言えます。

 未だ開通してから半月も経過していない時期なので、直接的に劇的な効果が出る事は未だ無いと思います。開通後何回かこの地域を訪問しましたが私の見た感じでは特に平行している国道16号線に劇的な渋滞緩和が見える様な効果は出て居ません。その点ではNEXCO中日本のメリットの宣伝は「眉唾なのかな?」と一瞬思ってしまいます。
 しかしMEXCO中日本がHPで公表した「 圏央道の開通で、周辺の一般道の交通量が減少しています 」によると、中央道⇔関越道をバイパスする国道16号線に関しては直接の効果は出て居ませんが、今回の開通区間に直接影響する区間に関しては 国道411号線滝山街道や中央道八王子ICの通行量関越道・中央道の都心区間の流動 に関しては一定の変化・圏央道開通の効果が見えると言えます。
 又同時に公開している 圏央道の各IC間の通過車両数 を見れば、既開業の鶴ヶ島JCT付近でも通過量が15%近く増加していますし、国道16号接続の入間ICでの流出入量が半分〜6割程度に減っていますし、今までは末端区間で有った日の出IC〜あきる野IC間の交通量は倍以上に増え、加えてあきる野ICでの流出入量も半分以下に減っています。未だ開通して日が浅いので「一般道から高速道への転移」が進んでいないと言う事は有るのでしょうが、それを割り引いてもこの統計数字を見ると「圏央道あきる野IC〜八王子JCT間の開業効果は有った」と言う事が出来ると思います。
 ですから開業から日が浅いと言う事が主因で「圏央道の開業効果」について、今の段階では明確に言う事は困難であると言う事が出来ます。只短期間でも此れだけの数字が出ている以上、圏央道開通で明らかに交通が転移したと思います。その結果推測になりますが圏央道にこれだけ交通が転移している以上、それなりの「時間短縮・渋滞緩和」と言う直接効果は有り、それにより「環境負荷低減・経済的損失の減少」と言う間接効果も又発生している事はほぼ間違い無いと言う事が出来ます。

 □ この様な効果をもたらす高速道路の整備についてのコメント

 今回取り上げた圏央道あきる野IC〜八王子JCT間の開業による中央道⇔関越道と言う放射高速道路間の直結が、只ですら首都高都心環状線と環状七号線・環状八号線等の東京の一般環状道路に頼っていた「関東を経由する通過流動」の環状バイパスルートに新たな選択肢を加えた事は間違い有りません。
 しかし東京の域内交通と関東をバイパスする通過交通が集中する事で、東京都内でも特に混雑度の激しい首都高都心環状線・環状七号線・環状八号線に関しては、今回の圏央道開通が関越道⇔中央道を結ぶだけの「限定的開通」で有った為に、東京の混雑の激しい環状道路で未だに目に見える形での「混雑緩和」「所用時間短縮」は出ていません。
 こうなると今進めている「 三環状 」に関してより積極的に事業が推進されて、もっと形になったネットワークとして形成されなければ東京都内の環状道路の「通過交通に起因する過負荷状態」から開放する事が出来無いと言うことが出来ます。実際首都高中央環状線と東京外かく環状道路が完成し、首都高中央環状線と外環が関越・東北・常磐の三高速をがっちりとネットワークしていて通過交通が都内に流れ込みにくくなっている東京の北東〜北西部に関しては東京都内の環状道路は比較的混雑が緩和されていますが、三環状が圏央道鶴ヶ島〜八王子間と言う一部分しか開通していない東京の北西〜西〜南西部に関しては関越〜中央〜東名の三高速道路を結ぶ東京の都内交通路で有る首都高都心環状線・環状七号線・環状八号線、特に三つの高速道路の東京側出口を結ぶ環状八号線に強い負荷がかかり激しい渋滞が慢性化しています。

  
左:次に完成する三環状 首都高中央環状線熊野町JCT〜西新宿JCT間 @西新宿JCT  右:圏央道の東名高速接続はまだまだ先? @建設中の海老名北JCT

 この様に考えれば「三環状」の完成、特に東名〜中央〜関越〜東北の各高速道路を結ぶ三環状の西側部分の建設は非常に急務で有ると言えます。その中で今回の圏央道あきる野IC〜八王子JCT間開業による関越道⇔中央道間のネットワーク化が達成されましたが、次は本年12月に首都高中央環状新宿線熊野町JCT〜西新宿JCT間の開業が控えています。これで中央高速(+首都高4号線)は中央環状線を経由して関越・東北・常磐・東関東の各高速道と間接的に結ばれ首都高都心環状線の渋滞が減少すると同時に環七大原交差点・環八中の橋交差点の大渋滞緩和が期待できますし、2年後の平成21年度中に中央環状線が首都高3号線と直結されて曲がりなりにも首都高中央環状線により首都高経由ですが東名・中央・関越・東北・常磐・東関東の各高速道路が結ばれる事になります。

 しかし問題はその先です。実際に環状高速道路の整備が進んでいない東京の西側でも、2年後には中央道⇔関越道は2ルートで結ばれ、東名高速⇔中央道も中央環状線で結ばれる事になります。只その先の整備が進まないと言うのが問題で有ると言えます。実際今の混雑環状道路である環状八号線のバイパスである東京外かく環状道路の大泉JCT〜東名JCT間に関しては「 19年4月に都市計画が変更 」された段階であり、一体何時完成するのか分かりません(単純に見て早くても10年はかかるだろう)。
 こうなると頼りは圏央道八王子JCT〜海老名北JCT間の早期完成による中央道⇔東名道直結による2本目の「首都圏西部の高速道路環状ネットワーク」を早期に完成させる事が重要で有ると言えます。又首都高中央環状線の負荷を減らす為にも圏央道鶴ヶ島JCT〜久喜白岡JCTを完成させ、圏央道を経由して東名⇔中央⇔関越⇔東北の各高速道路を結ぶネットワークを完成させ「外環が無くても多少は通過交通を減らせるネットワーク」を作り上げる事が重要で有ると言えます。
 確かに今の計画では 8年後の2015年度までには「外環道大泉JCT以南」の区間以外の3環状が完成 することになります。ですから「あと8年間の辛抱」とも言えますが、少しでも早く「混雑が緩和」される事が望ましい事は間違い有りません。その様に考えながら「何処が重要か?」と言う視点で「 3環状道路の開業目標 」を見ると大きな問題が有る事に気が付きます。圏央道の最終完成年度の2012年度まで「八王子南IC〜相模原IC間」「桶川JCT〜菖蒲白岡IC間」がネックになり2本目の東名⇔中央⇔関越⇔東北を結ぶネットワークが完成し無いと言うことになります。
 けれども特に東名⇔中央を結ぶ区間は今回開通した「関越⇔中央」を結ぶ区間と並んで「圏央道の最重要区間」である筈です。又この区間は比較的早くから事業化を進めていた筈で、 高尾山を巡る複数回の訴訟 等、東名⇔中央間の整備の足枷が有った事は事実ですが、それ以外の区間は特に障害が無く相模原IC〜海老名北JCT間等は田畑の広がる河川敷区間をルートにした工事の為障害が無く比較的順調に進んだはずです。しかし其れでも東名⇔中央を結ぶ高速道路建設に訴訟で苦しんだ八王子JCT〜八王子南IC間の建設より3年も時間が掛かるのは、「事業速度が緩慢である」と思われても仕方ないと思います。
 確かに「全区間で均等に力を加えて建設して出来た所から開業する」と言うのもプロジェクト推進の方法としてありえる方法だと思います。しかし圏央道の様な環状道路は「細切れ開業」をしてもネットワークとして両端が他の道路と結ばれなければ、完成の意味は少ないと言えます。そう見ると圏央道のネットワーク上一番重要な区間は日本有数の高速道路を結ぶ東名⇔中央⇔関越⇔東北を結ぶ事、特に日本一の高速道路との接点である東名⇔中央の区間の完成で有ると言えます。もし其処が重要ならば其処に重点的に投資して早い開業に導く事で区間開業でも最大の効果を発揮出来るように「 傾斜生産 」的な資本の集中投下による早期開業を目指すべきでは無いかと考えます。その効果は傾斜生産的資本集中投下の弊害で全体の完成が伸びたとしても、全体の完成延長のマイナス以上の重要区間整備のプラス効果が有ると私は考えます。
 実際問題は「あと5年で完成」と言う圏央道ですから、今から投資順番を弄っても殆ど工期短縮には寄与しないでしょう。しかしやはり公共事業でも「総合的な投資効果」を考えて、時には「優先順位を付け」て「大胆な投資配分」で「最大効果を得る事業遂行」を行わなければならないのでは無いか?と、今回改めて「圏央道と三環状」について考えて見て感じさせられました。




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