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      Vol.1 TGV      

 フランス・ドイツ・イタリアなど、ヨーロッパには日本に勝るとも劣らない鉄道王国がたくさんあります。隣国と陸続きでありながら、各国がそれぞれの特色を持って発展していったヨーロッパの鉄道には、さまざまな魅力がありますが、その魅力のひとつは「新幹線」に触発された高速列車の数々だと思います。今回は、フランスのTGVを紹介します。


●SNCF(フランス国鉄)TGV
 当時、日本の新幹線の最高速度を初めて上回ったのが、フランスの「TGV」です。TGVとは、フランス語で「トラン・グラン・ヴィテッセ(Train a Grand Vitesse)」の頭文字で、「超高速列車」を意味します。ところで、レール上で最も高速で走行した列車もTGVなのですが、みなさんその速度をご存知でしょうか? 答えは515.3Km/h!! リニアもびっくりの超高速です。現在、TGVの営業列車での最高速度は300Km/h。フランスの首都パリから放射状に延びるフランス国鉄の多くの路線で、また国境を越えて、スイスやオランダにも乗り入れて活躍をしています。

 

 

TGV−A(アトランティック)の先頭車パリ・モンパルナス駅で発車を待つTGV−A


体験記、パリ・モンパルナス〜サン・ピエール・デ・コール(トゥール)間、TGV−アトランティック
 1995年春。前日、怪しげなフランス語を駆使して買った切符を握り締めて、朝のパリ・モンパルナス駅のコンコースで、発車案内板を見上げました。実は、フランスは着発線があらかじめ決められてなく、発車の15分前くらいに発車案内板にその列車の発車番線が表示されるという、日本では考えられないようなことが毎日繰り返されているのです。ようやく表示された発車番線に向かうと、待っていたのはシルバーの車体にブルーのラインが入った、TGV−A(アトランティック)でした。列車の前後、クサビ型の先頭車両は電気機関車で、中間10両が客車。日本のグリーン車にあたる1等車と、普通車にあたる2等車。それにビュッフェ車両で構成されています。この時は奮発して1等車に乗車しました。ちなみに料金は、約200kmの距離でしたが、片道7,000円ほどでした。車内は日本の在来線特急ぐらいの広さで、天井も低くなっています。これは、300系、700系新幹線と同様に、空気抵抗を減らすため、車体断面が小さくなっているためです。グレー系の色で統一された車内は落ち着いていて、枕カバーはワインレッド。枕カバーの端には、TGVのロゴがさりげなく刺しゅうされていました。1等車は1&2列シートで、体格の大きいヨーロッパの人達でもゆったりとくつろげます。

 

 

TGVの乗車券


 発車ベルもなくドアが閉まると、列車はパリ・モンパルナス駅を発車。しばらくはパリ市内の地下トンネルを走るので、あまりパリの街の風景を車窓から眺めることはできません。しかし、それを抜けるとフランスらしい広々とした田園風景の中をTGV−Aは快調にスピードを上げていきました。スピードはぐんぐん上がっても、車内はいたって静かで、揺れも感じませんでした。これは、機関車列車であることと、車体間に台車がある連接構造が、この乗り心地を実現させているのです。残念ながら、当時、日本最新の新幹線である300系「のぞみ」よりも、この点ではTGVの方が上回っていました。架線柱がビュンビュン後ろに飛んでいく車窓を食い入るように眺めていると、突然、3秒、いや、2秒程でしょうか、大きな音を立てて目の前を何かが通り過ぎていきました。そう、反対方向から走ってきたTGVとすれ違ったのです。相対速度600km/h。まさに一瞬の出来事でした。この300km/hで走行できる区間は、TGVが走るために造られた「高速新線」で、TGV専用のルートとなっています。また、TGVとフランス国鉄の在来線の軌間は共に、1435㎜の標準軌なので、TGVは在来線の線区も走行することができますが、この場合、最高速度は200km/hに制限されます。


 パリを出発して約1時間で、目的地のサン・ピエール・デ・コール(トゥール)に到着しました。私はここで下車して、ロワール地方の古城を観光してきました。私が乗車したTGVは、この先、在来線に乗り入れて、ワインで有名なボルドーへと走り去っていきました。

 

 

●ライバルは航空機
 TGVのライバルはズバリ、航空機。それを象徴するかのように、1981年に開業した最初のTGV路線、首都パリとフランス第二の都市リヨンを結ぶ路線(パリ南東線)では、競合する航空路線を撤退させてしまったそうです。このパリ南東線の大成功を受け、次々に新線が建設されていきました。1989年にはパリと、24時間耐久レースで有名なル・マンを結ぶ大西洋線、1993年にはパリから北の港町カレーを結ぶ北ヨーロッパ線が開業しました。この、北ヨーロッパ線は、イギリスのロンドンからユーロトンネルを抜けて「ユーロスター」が、またベルギーのブリュッセルからは「タリス」が乗り入れる国際路線となっています。現在、スペインへ延びる地中海線、ドイツへ延びる東ヨーロッパ線が建設中となっていて、TGV路線網はさらに発展を続けています。

 

■高速列車で行く旅■

〜シャンボール城〜

 サン・ピエール・デ・コール(トゥール)からローカル列車に乗り換えて約20分。列車はブロアに到着。そこからタクシーで15分ほど走ると、森の並木の向こうに見えてきたのは、あきれるほど大きく、美しい城、シャンボール城。ロワール地方に数あるの古城の中で、この城館は他を圧倒している。

 シャンボール城は16世紀初めに着工されたが、設計者は誰なのか記録に残されていない。あのレオナルド・ダ・ビンチが設計に参加したとの説もあるが、真相は定かではない。内部では、天守の中央にある2つのらせん階段が合体した大階段が有名。屋上からは壮大な大庭園が一望できる。夕日を受けて浮かび上がる情景は、この世のものとは思えない。

 

 

【2002年9月社内誌に掲載】

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