このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

      Vol.2  ドイツ・ICE      

 前回のフランス・TGV編はいかがでしたでしょうか? 今回は、フランスの隣、ドイツの高速列車を紹介します。フランスのように派手さはないものの、ゾーリンゲンのナイフやライカのカメラ、そして自動車に代表されるように、堅実で強固なものづくりにおいて世界的な地位を確立していることは知ってのとおりです。鉄道においても、多くの名車を生み出し、現在に至っています。また、日本と並んで浮上式高速鉄道(リニア)の開発にも大変熱心で、日本に先駆けて営業運転が実用化されようとしています。そんなドイツ鉄道「DB」の現在の主役は「ICE」。フランスに負けず劣らず、ドイツ全土、またスイスなど隣国に乗り入れて活躍しています。

 

ライン川沿いを走るICE−1停車中のICE−3

 

●バリエーション豊かなICE
 ICEとは、「Inter City Express」の頭文字をとった略称で、案内などでは正式名称が使われることもしばしばあります。ICEには、使用される線区によって、現在5種類が活躍しています。尚、車両の塗装は、すべて白地に赤のラインで統一されています。
 最初に登場したのが、幹線用の「ICE−1」です、ICE−1は、TGVと同じく、両端2両が電気機関車で、12〜14両の客車で構成されています。ハンブルク〜フランクフルト〜ミュンヘンと、大都市を結ぶルートで主に活躍しています。


 亜幹線用の「ICE−2」は、形状はICE−1とあまり変わりませんが、電気機関車1両に7両の客車で構成され、最後部の客車にも運転台が付いています。もちろん、これは折返し運転をするときの運転台で、この運転台を先頭に運転している時は、超高速で機関車が後押しして運転をしている格好になります。日本では、このような運転形態はちょっと信じ難いものがありますが、ヨーロッパではICEに限らず、ローカル列車でも多く見かけることができます。また、ICE−2は、2編成を連結して運転できることも大きな特徴です。


 ICEが大きく変化したのが「ICE−3」です。これまでの機関車方式をやめ、4M4Tの電車タイプで登場しました。この変化は、電車最先進国である、我々日本の「新幹線」の影響も多分にあったようです。外観も、先のとがったスタイリッシュなものに一新され、ずいぶんとイメージが変わりました。最高速度330km/hでの営業運転を目指しています。


 そして、曲線の連続する線区用に開発されたのが、「ICE−T」と、「ICE−TD」です。デザインはICE−3とほぼ同じですが、383系「しなの」(JR東海)のように、曲線にあわせて車体が傾斜する振り子タイプの列車で、ICE−Tが電車タイプ。ICE−TDが気動車タイプです。ICEのために建設された高速新線だけでなく、在来線でもその実力を発揮しています。また、このICE−T(外観デザインはTDも同じ)のデザインは、JR九州の885系「かもめ」にそっくりということで、鉄道ファンの間で話題になりました。

 

左がICE−TD、右がJR九州の885系です


●旧東ドイツを走る「ICE−T」に乗車
 今年(2002年)の3月にドイツを旅行した時、旧東ドイツ地域のエアフルトからドレスデンまで、「ICE−T」に乗車しました。このルートは、高速新線ではなく、在来線です。列車はフランクフルト発、ドレスデン行のICE1555列車「ヨハン・セバスチャン・バッハ」号。日本の「ひだ」や「しらさぎ」のように、ドイツの優等列車にも愛称が付けられています。


 旧東ドイツ雰囲気を色濃く残すエアフルト中央駅に、その駅の姿とは対照的なスタイルのICE−Tが滑り込んできました。列車は1等車を先頭に、食堂車を挟んで後寄りが2等車の7両編成の電車。早速、1等車に乗車しました。この時の乗車券は、日本で手配した、「ユーレイルパス」という、乗り放題の切符を使用しました。この切符を使用していても、ドイツ以外では予約が必要な場合が多いのですが、ICEは予約無しでも乗車することができます。日本のように自由席車、指定席車の区別はありません。ただし、予約席には座席の上に予約区間を書いた予約票が差し込まれているので、その座席を避けて座ることになります。また、予約票が差し込まれていても、そこに書いてある区間以外は自由席扱いになっています。私が乗ったICE−Tは、予約票ではなく、予約区間がLEDで表示される最新式のものになっていました。その表示に何も出ていないことを確認して着席しました。1等車は1&2列のシートで、テレビモニターも用意されています。乗車した車両は、日本の特急車両と同じような座席配置のオープンタイプの車両でしたが、一部にはセミコンパートメントタイプの座席もあります。また、大きな荷物が置けるように、デッキには荷物棚が備え付けられています。車内は明るめの内装で、ゆったりとした座席は、黒のレザー調。例えるなら「ソファー」というよりも、「社長席」といった感じでした。


 列車は、緩やかな緑の丘を快走。車体傾斜機能が付いているICE−Tですが、線路は直線が多いので、あまりそれを感じることはできませんでした。時折車窓には、風力発電用の大きな白い風車が何本も丘の上に立っているのが見え、ドイツも環境対策には力を入れていると感じました。空は曇り空。車窓に見入っていると、車掌さんがやってきて、なにやら私に声をかけました。最初は何を言っているか分からなかったのですが、「コーヒー? ティー?」という単語が聞き取れたので、コーヒーを注文しました。しばらくすると、大きなマグカップにたっぷりと入ったコーヒーを車掌さんが持ってきました。1等車の旅客には、車掌さんがドリンクの注文を聞いて、座席まで持ってきてくれるサービスがあるのです。(ちなみに有料です。)


 エアフルトから約1時間。列車はライプチヒに到着。列車はここで進行方向が逆になります。ヨーロッパの大きな駅は、日本の上野駅の地上ホームのように、フォーク形の線路配置になっているところが多く、長距離列車ではよく進行方向が変わります。それから約1時間でドレスデン・ノイシュタット駅に到着。ドレスデンには、このノイシュタット駅と中央駅の2つのターミナルがあり、列車は次のドレスデン中央駅まで行きますが、乗り換えの都合でこの駅で降りました。旧東ドイツ製の厳つい面構えの機関車を横目に、ICE−TはVVVFインバーターの音を響かせて、ホームを離れていきました。

ICE−TDの運転席を客室からノイシュタットを発車するICE−T

 


■高速列車で行く旅■

〜古都ドレスデン〜

 ドイツの交通の中心、フランクフルトからICEで4時間。旧東ドイツの古都ドレスデンは、中世に商業都市として発展し、16世紀以降はザクセン王国の首都として反映した。第2次大戦で街は多大な被害を受けたが、多くの努力で復興した。写真は40年かけて復元された「ゼンパーオペラ」。ワーグナーもここでタクトを振った。


 【2002年10月社内誌に掲載】

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