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      Vol.3  ユーロスター      

 ナポレオンの時代からの悲願であった、「英仏海峡トンネル」いわゆる「ユーロトンネル」が開通し、営業を開始したのが1994年。このトンネルの開通で、イギリスもヨーロッパ大陸と陸続きになったと言われています。そのユーロトンネルを通るのが、「ユーロスター」と呼ばれる超高速列車。イギリスのロンドンと、フランスのパリ、ベルギーのブリュッセルを結んでいます。

 


ベルギーのブリュッセル南駅に到着したユーロスター

 

3カ国を走るユーロスター
 フランス・イギリス・ベルギーの3カ国を走るユーロスターには、さまざまな工夫が施されています。各国とも、線路の幅は1435㎜の標準軌で統一されていますが、信号システム、電気方式などは、それぞれの国によって異なります。特に特徴的なのが、イギリス国内は、架線が線路脇にある、第3軌条方式(名古屋の地下鉄、東山線・名城線と同じ方式)であるため、パンタグラフのほかに、台車に集電板を備えています。また、電気方式については、交流25000V・50Hz、直流3000V、750Vのそれぞれで走行できるようになっています。車体断面についても、ホームの高いイギリスにあわせてあるので、車体裾が大きく絞られています。その他の基本的な構成はTGVに準じています。また運転士は、国境での機関車交換や、運転士の交代が無いため、バイリンガルでかつ、各国の運転取扱の知識を備えた「国際運転士」が担当します。

 

 

イギリスからベルギーへ
 私が乗車した列車は、イギリスのロンドン・ウォータールー駅から、ベルギーのブリュッセル南駅行きの列車です。まだ肌寒い3月のロンドンの街を歩き、ロンドン・ウォータールー駅に向かいました。ウォータールー駅はユーロスター乗り入れのため大改修して、ユーロスター専用ホームが造られました。
ユーロスターに乗車するには、まず、飛行機と同じようにチェックインをします。その後、荷物検査、出国審査を受け、待合所へ向かいます。尚、発車20分前までにチェックインを済ませないと乗車できないという厳しいルールがあります。西ヨーロッパを走る列車は、国際列車であっても、このような厳しいチェックはありませんが、ユーロスターは海峡トンネルを狙ったテロ対策のために行っているそうです。

 

 

ロンドン・ウォータールー駅のユーロスター専用改札口

ユーロスターの乗車券


 チェックインを無事済ませ、待合室に入りました。待合室は広く、カフェや土産屋が並んでいます。土産屋の中にはユーロスター乗車記念グッズも並べられているので、マニア必見です。(そういう私もいくつか買い求めましたが…。)発車15分前になると、ホームへの案内が始まります。ここでようやく自分の乗車するユーロスターの姿を拝めることになります。


 各車のドアで待ち受けるシチュワーデスの案内で、座席に着席しました。車両は日本と同じタイプのオープンタイプで、シート配置はヨーロッパ標準の1&2列。1人旅なので、1人掛けの座席でした。ただ、座席の向きが進行方向と逆向き。残念ながら回転しないので、終点までこのままです。12時14分、国会議事堂「ビッグベン」を横目に、ユーロスターはゆっくりとロンドンの街を走り出しました。列車は海峡の街、フォークストンへと向かいます。発車してすぐ、食事のサービスが始まりました。機内食と同じような感じですが、座席の広い1等車で食べる食事は格別。ワインも2回勧められていい気分になってしまいました。ちなみにこのサービスは1等車の料金に含まれています。イギリス国内は第三軌条方式の在来線を走るので、最高速度は140km/hに制限されているので、ちょっと物足りない感じがしますが、そのかわりにロンドンの街並みや、郊外の風景、牧歌的な田舎の木々がゆっくりと見ることができます。列車は約1時間でユーロトンネルの入口、フォークストンに到着。車内からは伺うことはできませんが、たたんでいたパンタグラフが上がっているはずです。フォークストンを出ると、いよいよ海底トンネルを通過します。コンクリートの壁が続いたと思うと、列車はトンネルに入りました。ユーロトンネルは、単線トンネルが2本という構造なので、トンネル内は窮屈な感じがしました。トンネル内は160km/hで通過。トンネルの長さは50kmで、ユーロスターは20分ほどで通過しました。ちなみにトンネルを通過するとき車内を見回してみましたが、ものめずらしそうに見ていたのは私だけでした。


 トンネルを抜けると、そこはフランスのカレー。トンネルの全長50kmのうち、38kmが海の底だったのですが、車窓から海はまったく見えませんでした。ここからはフランス国鉄の高速新線をベルギーに向けて走ります。いよいよユーロスターの本領発揮。最高時速の300km/hでフランスの広々とした田園地帯を走り抜けていきます。TGVの時にも説明しましたが、機関車方式と連接台車構造のおかげで、300km/hで走行していても車内は静かで、揺れも感じませんでした。


 列車は高速新線区間を過ぎ、速度を落とし、ベルギーの在来線区間に入りました。高速新線が開通しているのは、この時はフランス国内だけでした。フランスより民家が線路に近くなり、小さな駅を次々と通過していきます。列車は16時44分、ブリュッセル南駅に到着しました。ロンドン発が12:14で、到着が16:44ですから、所要時間4時間半と思われるでしょうが、実は時差の関係で、所要時間は3時間半です。国境を越えると時間が変わるのも、国際列車だからこそです。シチュワーデスの見送りで列車を降り、入国審査を受けます。パスポートを見せるだけの簡単な審査で、入国スタンプが押されます。スタンプには列車で入国したことを示す、汽車のマークがついていました。

 

 
客室乗務員、制服のデザインは濃紺に黄色のアクセント入国スタンプ

 


■高速列車で行く旅■

〜ヴェルサイユ宮殿〜

 パリ郊外に位置するヴェルサイユに建てられた、ルイ14世の宮殿。1662年の着工から、50年の歳月と、贅の限りを尽くして建設された。宮殿そのものにも圧倒されるが、自然の大改造ともいえる奥がかすんで見えないほどの壮大な庭園にも見所が多い。マリー・アントワネットが愛したトリアノン離宮も見逃せない


 【2002年11月社内誌に掲載】

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