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出張レポート(15)

2010.5.23

姨捨駅 眺望・棚田・スイッチバック

5月22日、篠ノ井線の姨捨駅を訪ねた。西から低気圧が迫っているとの天気予報で空が霞み、眺望が売りの同駅行きにはやや不向きの日であった。それでも、眼下に流れる千曲川と両岸に広がる町並み、はるかかなたにまで連なる山々を望むことができて、さすがに「日本三大車窓」とうたわれるだけのことはあると感嘆した。

Ⅰ 姨捨駅

駅舎は駅名から連想するイメージとは異なり、大正デモクラシーの香りを残すレトロモダンのつくりである。小さな待合室はベンチがあるだけの簡素なものだが、それがかえってローカル駅の雰囲気に似合っている。この駅は、日経新聞のアンケート「足を延ばして訪れてみたい駅」の全国第2位にランクされたことがあるとかで、私が行ったときにも何人かの人が訪れていた。ちなみに第1位は門司港駅、第3位は嘉例川駅だそうである。無人駅なので出入り自由なのは、かえって何よりのサービスである。
ホームは相対式2面2線であるが、本線脇につくられたスイッチバック方式の駅である。勾配の途中に駅を設置するためスイッチバックにしたものだが、それにしても山間のこの地に、よくぞこれだけの大掛かりな設備の駅をつくったものだ、と感心する。事実、私がいる間、普通列車が到着しても乗降客は見かけなかった。
構内には、松尾芭蕉が立ち寄ったという近くの長楽寺にちなんで「おもかげや 姨ひとりなく 月の友」の句碑がある。今でも俳句の盛んな土地柄なのだろうか。
駅は清潔に保たれていて気持ちが良い。おそらく地区の人たちによって清掃などが行われているのであろう。

Ⅱ 眺望

姨捨駅の売りは、何と言っても眺望の素晴しさである。松本方面行きのホームからは、眼下に善光寺平と中央を流れる千曲川、それらを取り囲む山並みを望むことができる。まさに絶景である。
電車を待つ間にこの景色をゆっくりと楽しむことができるように、という配慮からであろう。ホームのベンチが線路を背にするように配置されてるのも心憎い。
ホームからは、「田毎の月」で名高い棚田の一部を見ることもできる。
姨捨駅は、日本の原風景に行き会えることのできる駅である。

Ⅲ スイッチバック

篠ノ井線のダイヤは、上下ともに1時間ごと、特急1本、普通(または快速みすず)1本の設定である。特急はエル特急を名乗っているだけあってほぼ1時間サイクルになっているが、普通列車は時間帯によってずれがあり、必ずしも1時間おきではない。なお当駅では、松本行きの普通列車が長野行きの特急列車を退避するケースが多く見られる。
特急列車は当駅脇の本線を通過する。当駅とはまったく無縁である。
松本方面行きの普通列車は当駅脇を一旦通過し、引上線に入って折り返し入線する。発車後はそのまま本線に入り、松本方面へ向かう。
長野方面行きの普通列車は、当駅へ到着後に一旦松本方向に引き返し、折り返して長野方面へ向かう。
こう書くとかなり悠長なように思えるが、転線が案外短時間に行われるのには驚く。

レトロモダンな姨捨駅
駅名字体とのミスマッチ

ホーム側から見た駅舎
本屋左の建物はトイレ

ホームから見える棚田の風景

線路と逆向きに設置されたベンチ

眼下に見える千曲川と町並み

エル特急ワイドビューしなの12号
(名古屋行き)がホームの下を通過する

発車を待つ松本行き普通列車
このまま本線に入る

WVしなの7号長野行き
構内配線はかなり複雑

【感想】
素晴しい眺めといい、スイッチバックの楽しさといい、行って見たい駅No2に選ばれたのもむべなるかな、といったところである。
車で行く場合には、長野道姨捨サービスエリアにETC専用出入口(松本方面のみ)があり、便利である。

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