このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

出張レポート(17)

2011.2.8

上高地線・冬景色 −松本電鉄を訪ねて−

松本電鉄上高地線は、松本市の中心部と西郊を結ぶ14.4kmの路線である。2月6日(日)、冬の北アルプスを背景に走るアルピコカラーの電車を観察に行ったが、今年は雪不足のうえに当日は霞がかった空模様で、もうひとつスッキリしない出張となった。
とはいえ、見聞きしたことの報告である。

1.路線
上高地線は松本駅7番ホームを南に向かって出発する。すぐに大きく右に回り、西郊を目指す。薄川を渡り長野道をくぐると、早くも周囲は田園地帯になる。.線路は野麦街道(国道158号)と平行しているが、沿線はのどかな雰囲気である。
松本大学の校舎群が現れ、北新・松本大学前駅を過ぎると、次は本線の中心駅、新村である。新村は有人駅で車庫がある。今は廃車になった5000系(旧東急5000系)2両1編成やED30形電気機関車などが静態保存されている。また、当駅では松本市によりパーク&ライドの社会実験が行われている。駅舎はいかにも古く、一度は訪れてみたい駅である。
新村駅を出てさらに西に向かうと進行方向左側に山が迫ってきて、終点新島々駅が近づいてくる。新島々駅は、駅周辺にさしたる集客施設はないものの、上高地、乗鞍、白骨温泉などへバスが発着する一大ターミナルになつている。 


薄川を渡る

北アルプスを背景に

【上の2枚はクリックで拡大】

         レトロ感覚の新村駅

             新村駅での交換風景

         静態保存されている5000系車両

         廃車になったED30形電気機関車

2.運転
朝8時台は本数が増えるが、日中以降はおおむね40分間隔の運転である。種別はすべて普通列車(各駅停車)で、1日に25往復している。松本−新島々間14.4kmの所要時間は約30分で、表定速度は30km/h弱といったところである。なお、季節によっては早朝1往復、快速の不定期列車がある。
輸送密度は2000人を割っており、厳しい経営が続いている。

3.車両
3000系(旧京王3000系)2両編成(Mc-Tc)4本が現役である。うち3編成が日常運用され、1編成は車庫待機ということになる。
このほか、前述したように、新村駅に5000系、ED30形などが保存されている。
また、ED40形電気機関車が岳南鉄道に譲渡されており、同線の本務機として活躍中である。

    現役で活躍していた頃の5000系⇒

4.雑感
松本電鉄は2007年(平19)、アルピコグループの他18社とともに、八十二銀行に対し「私的整理ガイドライン」に則った再生支援を要請した。地方交通は、かつて地域の基幹事業であったが、いまや往年の地位を失っているのが実情だ。モータリゼーションの波に押されて乗客の減少に歯止めがかからず、収入減により施設の維持もままならない。
一方で我が国では、高齢化・孤立化社会の進展で、需要が減ったとはいっても電車・バスを必要としている人がいることも現実だ。公共交通が大切な社会資本だとすれば、その必要性を効率一辺倒で判断すべきでないと考えるのは、当然のことといえるだろう。
さて、上高地線に戻ってみると、地域の通勤・通学の足としての役割はさておくとして、観光鉄道としての色合いが強い。新宿から松本まで来て上高地線で新島々まで行き、バスに乗り継ぐというルートだが、直行主流の現代にいかがなものだろう。
新宿から新島々までの直通特急があれば上高地線の存在感も増すと思うのだが、鉄マニの夢に過ぎないだろうか。

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