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出張レポート(2)

奥大井紀行

2005.11.11

11月5日から1泊2日で、かつて同じ会社に勤めていた仲間3人と奥大井を旅した。
午前7時30分、我が家に集合して出発。おじさん達は時間に正確だ。
小生とすれば大井川鉄道三昧といきたいところであるが、なにせ“一般の人”との旅のため、井川線(南アルプスあぷとライン)の奥泉から井川までの往復乗車を日程の中に入れることで満足することにした。
最初の目的場所である川根温泉に到着したのは午前10時ちょうど。予定通りである。入館料1人500円を払って早速浴場へ行き一風呂浴びながら笹間渡鉄橋を渡るSLを待つ。10時40分ころ川の対岸から汽笛が聞こえ、C11形機関車に牽引された列車が露天風呂の前を通過した。
このタイプの機関車は、車体の一部に石炭と水を積載しておりタンク機関車という。炭水車がないため長距離運転には適さないが、車体が軽く勾配に強い。また、前後進が可能なため復路の転向を要しない。このため、金谷行は後進で運転する。また、大井川鉄道では、上り下りとも最後尾に電気機関車をつけ協調運転を行っている。
SLの通過をみて、温泉内の食堂で早めの昼食をすませる。山菜そば、天ぷらそば、ともに600円。腹ごしらえができたところで井川線の乗車駅、奥泉へ向かう。

奥泉駅の近くには無料駐車場があり、気兼ねなく車を置くことができる。列車は12時33分発。井川には13時50分到着予定とある。奥泉駅で乗車を待つ客は10人ほど。これならゆったり座って行けると思っていたところ、やって来た列車は機関車2両、客車8両の最長編成ながら全車両ほぼ満席。座れることは座れたものの4人がばらばらになってしまった。
井川線はトロッコ列車ながら軌間は日本標準の1067mm。ディーゼル機関車は常に千頭側にあって、井川行はプッシュ、千頭行はプルの運転となる。

奥泉を出ると次の駅は“アプトいちしろ”。この駅はアプト区間の開始駅で、電気機関車を連結する間、5分ほどの停車時間があり、下車して連結作業を見ることができる。井川線のアプト区間は、ここから次の“長島ダム”までの1.5kmほどで、最大勾配は90‰という。
日本で唯一のアプト式鉄道である。
電気機関車に押されながら坂を上ってしばらくすると右前方に長島ダムが見える。周囲は公園が整備されている。

“奥大井湖上”は文字通り湖の上に浮かんだ駅で、両岸とレインボーブリッジで結ばれている。レインボーブリッジの呼称については、「東京湾にかかる同名の橋よりこちらが先」と車掌氏の弁。それにしてもあくまでも深い青色の湖である。橋には歩道橋が付設されており、歩いて渡ることもできるというが、チャレンジするにはかなり勇気が必要かも。

“井川”に近づくにつれ、谷はますます深くなる。車窓から井川ダムが見えてくると、そろそろ終点だ。紅葉の最盛は1週間ほど先とのことであるが、ここまで来るとかなり季節が進んでいる。“井川”は金谷からちょうど65km、標高は686mとある。このうち井川線は25.5km、表定速度は時速15kmにも満たない。万事が気ぜわしい現代に、何とも貴重な鉄道である。

露天風呂からSLが見える川根温泉

奥泉駅へ入ってくる井川行列車

“アプトいちしろ”での電気機関車連結作業

レインボーブリッジで“奥大井湖上”へ向かう

“山の十二単衣”という

井川ダムは100mの高さ

井川ダム堰堤からの俯瞰 紅葉が進んでいる

長島ダム 窓枠の傾きで勾配が分かる

長島ダムで電気機関車は切り離され、ディーゼル機関車による運転に戻る。次の“ひらんだ”は、静岡国体の際、カヌー競技が開かれたと説明があったが、観客スタンドらしいものが残っているだけである。

次の“接岨峡温泉”では大勢の団体客が降りたが、客車3両が切り離されたため混雑度は変わらず。車内は立ち客こそないもののほぼ満席の状態である。
ここから川幅はいよいよ狭くなり、列車は文字通り断崖絶壁に沿って進む。到着した“尾盛”はまったく何もないところだ。車掌の説明では、井川ダム建設の際、労働者の宿舎があった名残として今も駅があるとのこと。
“尾盛”と次の“閑蔵”の間には、私鉄日本一の高さ100mを誇る関の沢鉄橋がある。列車は乗客へのサービスで速度を落として通過するが、橋のつくりが華奢なため、かなりスリリングである。

接岨峡温泉駅

この日の泊りは寸又峡温泉。つるつるしたお湯と山間の静けさを堪能した。
明けて2日目の朝、“夢の吊り橋”まで散策した。谷底にかかる橋が青い水をバックに紅葉に囲まれた姿は、まさに後世に残したい日本の風景だ。

懐かしい硬券

“長島ダム”での連結(帰路)

たぬきが迎える尾盛駅

    きょうの1枚
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寸又峡「夢の吊り橋」

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