このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

駅周レポート(1)

城下町を歩く(谷村町駅〜都留市駅)

11月19日、谷村町(やむらまち)駅から都留市(つるし)駅までを散策した。このあたりは谷村地区といい、江戸初期に秋元氏が3代にわたって治めた城下町である。1633年(寛永10)、秋元但馬守泰朝入封以来、2代越中守富朝を経て1704年(宝永元)、3代喬朝(たかとも)が川越へ転封になるまで、郡内地方(山梨県東部・富士五湖地方)の政治・経済・文化の中心として栄えた。その後天領(徳川幕府直轄地)となったため、谷村の城下町としての歴史は幕を閉じたが、代官の役宅である陣屋が置かれるなど、この地の中心都市であることに変わりはなかった。
このため、都留市には現在でも裁判所・法務局、振興事務所など国や県の出先機関が集中している。

谷村町駅は住宅地の中にあり閑静なたたずまいである。
付近に高校があり、利用客は比較的多い。また、ここから甲府方面へ通学する高校生もいて、駅前広場中央に設置されている自転車置き場はいつも盛況である。

駅舎入口の右手にはタクシーの営業所があり、また左奥には中華料理店もあるが、いかにものんびりとした風情である。

駅前の四つ角には「ミュージアム都留」がある。ここの展示の目玉は八朔祭で使われていた「新町屋台」である。新町屋台は梁間1間、桁行2間で、舞台前部と楽屋後部の2間で構成されている。周囲は後幕や水引幕といった飾幕で豪華に彩られている。この屋台は昭和初期まで使われていたものを補修復元したもので、平成10年に完成した。
「ミュージアム都留」の入館料は、後程紹介する「増田誠美術館」とあわせて300円と割安である。

駅前広場を左に折れるとすぐ都留市役所がある。この敷地内を流れる家中(かちゅう)川に最近、水車で発電する「小規模水力発電所」が完成した。自然エネルギーを活用した施設として注目を浴びている。水車は、国内屈指の大きさの直径6mで、36枚の羽根はドイツ製の松の板を湾曲させて作った。最大出力は20kW。来年4月に運用が始まれば、市庁舎の電気料金が年間約170万円節約でき、二酸化炭素排出量も最大80t削減できるという。また、約4300万円の建設費の一部を市民公募債である「つるの恩返し債」で調達したことも特筆される。

国道沿いには「八朔祭屋台展示庫」がある。ここには「ミュージアム都留」に展示されていたのと同じ作りの屋台が3台保管されている。今でも祭りで実際に使われている屋台である。
八朔祭は都留市四日市場にある生出(おいで)神社の例祭で、名前のとおり旧暦の8月1日に行われていたが、今では毎年9月1日としている。祭りでは屋台巡行、神輿や獅子舞など様々な出し物があるが、中でも有名なのは十万石の格式に仕立て上げたとされる大名行列である。古式にのっとり130名余りで繰り出す大名行列は壮観で、この町の歴史の贈り物ということができよう。

国道をはさんで展示庫と向かいに「都留市商家資料館」がある。もともと桂川流域は「郡内縞」と呼ばれる織物の生産が盛んであった。この資料館は大正年間に建てられた織物買継問屋で、土蔵づくりの外観のほか積荷のための16畳の玄関や洋風の応接間など見るべきものが多い。入館無料であるが休館日が多いので確認が必要。

資料館から大月方向に向かい、国道から右に折れると「増田誠美術館」がある。増田誠(1921−1989)は都留市出身。独学で絵を学び、1957年に渡仏、32年にわたってパリに住み下町の風景やカフェに集う庶民など描き続けた。
10月1日から来年1月29日までは、企画展として「油彩画・故郷に帰る」を開催している。

美術館を後にして国道へ出たところに和菓子の店「すがや」がある。ここのおすすめは「八端最中」。大納言、黒こし、白こしの3種類があり、甘さを引き立てる塩味が独特だ。
お値段はいずれも1個126円。お土産用に箱詰めもある。

この付近、国道から少し奥まったところにはいくつもの寺が並んでいる。いずれも小さな寺ながら境内は掃除が行き届き気持ちが良い。ここまで来れば都留市駅はすぐそこだ。
市内随一の商店街である高尾町通りを通って駅へ向かう。この通りもかつての賑わいを思えば寂しさは否めないが、どことなく懐かしさが香ってくる商店街だ。

都留市駅は以前「谷村横町」という名称であった。昨年11月、都留文科大学前駅の開業により特急停車駅の座は譲ったが、駅前からは市内各方面へのバスが発着するなど、市の中心駅としての地位は保っている。

2005.11.27

都留市駅前に白壁のレトロモダンな建物がある。もともと旅館だったと聞いているが、今でもよく手入れされていて前を通る者の目をひく。いつまでも残ってほしい、と思わせる建物だ

谷村は日本のどこにでもありそうな城下町。こうした町をたまには歩いて巡ってみるのもよい。思いがけず歴史の遺産に行き会うかもしれない。

自転車置き場のある谷村町駅前

直径6mの水車による発電施設

ミュージアム都留に展示されている「新町屋台」

八朔祭屋台展示庫

都留市商家資料館

増田誠美術館の玄関

和菓子の店「すがや」

3種類の八端最中

幼稚園もある円通院

日蓮宗の東漸寺

高尾町通りの商店街

モダンレトロな元旅館

バスターミナルのある都留市駅

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