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調査レポート

2006.2.11

線路研究withフジサン特急

フジサン特急4号(河口湖→大月)に乗って線路を観察した。

2月4日、河口湖駅の駐車場へ着いたのは9時50分頃。駐車場は駅の裏側(富士山側)にあって、1日300円で利用できる。
駅舎が工事中で構内を横断することができないため、改札口まではやや遠回りになっている。
時間が早いかと思ったが窓口は開いており、切符を買い求めることができた。乗車券、特急券、着席整理券(パノラマ車両用)あわせて大月まで1510円である。
展望席は小生のほかに客がなく、独り占めの状態であった。

この編成は、富士吉田までパノラマ車両が最後尾である。しばらくは過ぎ行く風景を楽しむ。左手には大きく富士山が見える。
2面3線の河口湖を後に、まずは片面1線の富士急ハイランドに停車。次の富士吉田では、「ホリデー快速河口湖1号」と交換する。ホリデー快速の車両は、中央本線で特急として使われていた183・189系6連で、4両対応の富士急行線内ではホームからはみ出してしまう。頭端式2面3線の富士吉田では通常上り列車用に使っている3番線に停車し、6両のうち3両のドアを締め切って運用している。
富士吉田を発車すると車掌が改札にやって来た。20歳そこそこの女性車掌だ。
右240Rのカーブを曲がり、直線に入って片面1線の月江寺を通過すると、お姫坂踏切までは40‰の下り坂だ。お姫坂踏切を過ぎても33.3‰の坂が続く。

島式1面2線の下吉田が近づくと特急は速度を落とし、スプリングポイントに誘導されて上り曲線側を通過する。下吉田は片開き分岐で、上りが曲線、下りが直線になっている。
なお、富士急行線ではホームへ行くのに線路を横切らなければならない場合、構内に遮断機付きの踏切を設けて安全対策としている。

下吉田を通過した列車は、片面1線で無人駅の葭池温泉前を過ぎ寿へ向かうが、寿駅手前300mほどの所に信号機がある。気が付いた範囲では、駅間に信号機があるのはここだけである。行き違い設備のある下吉田と三つ峠の間が5.3kmと距離があるため、両駅間を2閉塞としたものであろう。
寿を通過すると40‰の下り勾配標と240Rの曲線標が現れる。富士急行線最大の難所である。ちなみに半径240mの曲線は、2.5‰の勾配に相当する抵抗を生み出す。
  
N=600/R
 〔N(‰)=換算勾配率 R(m)=曲線半径〕

三つ峠では下り普通列車と行き会う。三つ峠も下吉田と同様、島式1面2線のつくり。特急列車は例によって曲線側をゆっくりと進む。
ちなみに富士急行線では、行き違いのできる中間駅では田野倉を除き、下り側の線路が直線で上り側の線路が曲線になっている。田野倉のみ逆の線形である。おそらく駅舎のある側を直線としたからであろうと思われる。
三つ峠を過ぎ中央高速道をくぐると、しばらくは気持ちのよい直線区間である。フジサン特急も快適に進む。

次に通過する東桂は相対式2面2線で、動力式分岐器が設置されている。ホームが千鳥に配置されているため線路の有効長は8両分ある。フジサン特急4号は直線側である下り線を通過する。一線スルーの方式であるが、20km/hの速度制限標があり通過速度は速くない。
片面1線の十日市場を通過し、右手に大学の建物が見えてくると、真新しい都留文科大学前に到着する。2004年11月にできた新設駅であるが、開業と同時に特急停車駅になった。片面1線の駅である。

10時44分、都留文科大学前を出た列車は左に大きくカーブを切り、国道139号線を跨いだあと右にカーブを切って下りながら谷村町へ向かう。
直線の国道を富士急行線がS字で越える形になっており、道路優先のつくりである。この先、谷村町から都留市にかけては曲線が急で、160Rのカーブもいくつかある。

1971年(昭和46)、月江寺駅近くの踏切でトラックが電車の側面に衝突し、ブレーキが効かないまま下り勾配を暴走、寿駅先の曲線で脱線転覆して14人が死亡する事故があった。この事故を契機に富士急行は、フェールセーフの変更を進めた。
事故現場には慰霊の石碑が建てられ、今でもきれいに整備されている。フジサン特急は、その脇を警笛を鳴らして通り過ぎる。

谷村町は相対式1面2線の駅。スプリングポイントのため、曲線側をゆっくりと通過する。谷村町から次の都留市まではわずか800mの駅間ながら曲線がきつく速度はあがらない。
都留市は東桂同様動力式分岐器が設置されている、島式1面2線の駅である。特急列車は直線側の下り線を通過する。
片面1線の赤坂を過ぎると、しばらく直線区間を快走し禾生に向かう。この駅は相対式2面2線のつくりであるが、近くに小学校があり電車通学の児童もいるため、富士急行線内で唯一跨線橋が設置されている。線路の有効長に余裕がないためか、15kmの速度制限標が大きな赤い字で注意を促している。
禾生では下りフジサン特急1号と交換する。上りフジサン特急4号が曲線側に入るのとほぼ同時に下り列車があらわれた。上り列車は運転停車する間もなく発車した。

禾生から田野倉へは山沿いを進む。田野倉は相対式2面2線で、東桂同様ホームが千鳥に配置されている。分岐器はスプリングポイントであるが、線内で唯一、大月へ向かって右が曲線側になっている。上り特急列車は直線側を通過する。
田野倉を通過し、盛土区間を左にカーブしてしばらく行くとトンネルが見えてくる。都留高校のグラウンドを確保するため地下化したものである。このトンネルの手前に黄色の標識がある。「ATS・S−P」の記号は、ATS−SからATS−Pへの変換を示しているのだろうか。標識下のレールの間にはATS地上子がある。

トンネルを抜けるとすぐに片面1線の上大月を通過し、国道20号をくぐって右に曲がれば1面2線の終点大月である。2番ホームに11時7分発の5000系トーマスランド号が見える。フジサン特急4号の大月到着は11時2分。降りたつた客の多くが3分後に発車する中央本線上り特急に乗り換えるため、足早に階段へ向かって行った。

フジサン特急の展望席

1号車には
ラウンジもある

ATS地上子(富士吉田駅)

ホームからはみ出してとまる
ホリデー快速(富士吉田駅)

下吉田駅の構内踏切

下吉田駅では曲線側を通過する

寿駅の富士吉田寄り
にある閉塞信号機

寿駅を出て40‰、240Rの
急勾配・急曲線を下る(上)

40‰の勾配標と半径240
mの曲線標(左)

三つ峠駅のスプリングポイント
(富士吉田側)

三つ峠駅では下り普通列車と
行き違う

三つ峠・東桂間の直線区間

直線の国道をS字形で越える
(都留文科大学前〜谷村町)

東桂駅への進入速度は20
km/hに制限されている

半径160mの曲線標
(谷村町〜都留市)

都留市駅の動力式分岐器
40N(レール)専用とある

特急が直進するため対抗列車
は曲線側へ入線する(都留市)

禾生駅では上下のフジサン特急がいきあう

富士急行線内で唯一跨線橋がある禾生駅

都留高トンネルの手前(富士吉田側)にATS変換の標識がある

大月駅に到着する

きょうの1枚

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(月江寺〜富士吉田)

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