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貴志川線を訪ねる
2007.3.13
出張レポート(5)
3月10日(土)、新生1周年を迎えようとしている和歌山電鉄貴志川線を訪ねた。
貴志川線は、南海電鉄が赤字を理由に廃止を表明するや地元住民を中心に存続運動が盛り上がり、行政の支援をえて岡山に本社のある両備グループに経営を引き継ぐことができた。
早春の休日、途中下車しながらの沿線レポート。
1.和歌山まで
大阪9時53分発の「紀州路快速」に乗る。列車は前5両が「関空快速」後ろ3両が「紀州路快速」の223系8両編成。座席は2+1の転換クロスシートになっている。
「紀州路快速」は日根野で「関空快速」と別れ、和歌山へは11時17分に到着。大阪から1時間24分の行程だ。
2.駅と沿線
11時31分の貴志行(いちご電車)に乗る。2両編成の列車には80人くらいの乗客があり、座席がほぼうまっている。
和歌山をでた列車は1面1線の「田中口」(たなかぐち)、島式1面2線の「日前宮」(にちぜんぐう)と停車する。「日前宮」では、終日列車の交換が行われる。
「日前宮」から先は、「神前」(こうざき)、竃山(かまやま)、「交通センター前」(こうつうせんたーまえ)と1面1線の駅が続く。「交通センター前」までくると、すでに周囲は田園地帯である。
この駅は目の前に交通公園があり、多くの親子連れが下車したので、こちらもつられて降りてみた。公園は休日とあって、大勢の子どもたちで賑わっていた。
次の「岡崎前」(おかざきまえ)は島式1面2線のつくりで、朝夕交換が行われる。
続く「吉礼」(きれ)は古い集落の中にある1面1線の駅。「吉礼」の次の「伊太祈曽」(いだきそ)は島式1面2線の行き違い可能駅で、終日列車の交換がある。また、朝夕には和歌山との間で区間運転があり、当駅で折り返す。
構内には電車基地があり、和歌山電鉄の本社もここにある。
「伊太祈曽」をすぎると、「山東」(さんどう)、「大池遊園」(おいけゆうえん)、「西山口」(にしやまぐち)、「甘露寺前」(かんろじまえ)と1面1線の駅が続く。
「大池遊園」は山あいの雰囲気で人影はみえないが、西山口あたりから市街地になってくる。
途中「大池遊園」で下車して散策し、公園から池をわたる列車を撮影した。桜の季節にまだ早かったのが残念。
「甘露寺前」をでた列車はしばらく東進し、やがて右に大きくカーブすると終点の「貴志」(きし)に到着する。途中「交通センター前」と「大池遊園」で途中下車したため、貴志駅に着いたのは13時9分であった。
ここまでの乗客は20人ほど。
貴志駅は1面1線のほかに側線があり、保線用車両が留置されている。無人駅であるが、売店が同居していて便利である。
3.車両とダイヤ
貴志川線の車両は、南海電鉄から譲り受けた2270系を2両固定編成で運用している。このうち1編成を「いちご電車」に改造し、新生貴志川線の目玉にしている。いちご電車は片側2扉で連結部側にはカウンターがあり、イチゴの暖簾がかかっている。窓の上には支援者の名前が掲げられて、この電車に多くの人の夢が託されていることを思わせる。
貴志川線ではワンマン運転のため、中間無人駅では前の車両の後扉から整理券をとって乗り、前扉(運転士の直後)から降りる。車内精算方式だが、乗客が慣れているせいか乗降はスムーズだ。
貴志川線は全線単線のため交換可能駅により運転本数が制限される。和歌山−貴志間は30分間隔のパターンダイヤで、日前宮と伊太祈曽で交換する。伊太祈曽−貴志間は途中に交換可能駅がないため、これ以上運転本数を増やすことはできない。
このほか朝夕(とはいえかなり広い時間帯)、和歌山−伊太祈曽間に30分間隔の区間運転があるため、この時間帯は和歌山−伊太祈曽間は1時間に4本の運転になる。
4.まとめ
全国的な話題となった貴志川線であるが、実際に訪ねてみると、意外に大勢の乗客で賑わっていた。
全体的に設備は古く、これから先、維持していくためのハードルは低くないが、各駅に立っている幟旗からは地元住民の鉄道存続への熱意と意気込みが伝わってきた。
「いちご電車」が“日本一可愛い電車”として、いつまでも走れるよう応援したい。
和歌山駅のいちご電車
「1日乗車券」(650円)はシールを削って使う
和歌山駅東口(貴志川線側)
左に見える列車は和歌山市行
階段の上に窓口がある
終日列車交換のある日前宮駅
伊太祈曽で「いちご電車」と行き会う
【クリックで拡大】
伊太祈曽駅構内
大池遊園での貴志川線 【クリックで拡大】
終着駅「貴志」
貴志駅の構内
イチゴの暖簾がかかっている
大勢の人が乗る
さて話は変わるが、この日の帰り道、貴志から和歌山までもどってきたところ、天王寺駅構内の火災事故で阪和線が不通になっていることが判明。やむをえず南海電車で帰ることにしたが、南海電車のターミナルである和歌山市駅までは紀勢本線(支線)で行くしかない。紀勢本線(支線)は和歌山と和歌山市の間(3.3km)を往復する短距離路線であるが本数が少なく、また南海電車も特急サザンが30分間隔ということで、大阪まで予定の2倍近い時間がかかってしまった。貴志川線が和歌山市まで直通していれば、と思ってしまう。
2270系(一般車)の運転台
「いちご電車」のほかの車両は南海色のままで走っている 【クリックで拡大】
全線単線
14.3km
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