出張レポート（８）

江ノ電の正月

２００８．１．５

江ノ電データ

正月３が日の最終日、初詣客で賑わう江ノ島電鉄線を訪ねた。江ノ島電鉄線は藤沢から鎌倉までの１０ｋｍを結ぶ全線単線の路線で、一般に「江ノ電」の愛称で親しまれている。。
全区間でＰＡＳＭＯ・Ｓｕｉｃａの利用ができるが、今回は一日乗車券「のりおりくん」（５８０円）を利用した。

Ⅰ　沿線

起点の藤沢駅は小田急百貨店藤沢店の２階にホームがある。行き止り式２面１線の構造で、乗降が完全に分離されている。この日（１月３日）は鎌倉への初詣客などで、乗車ホームには長い列ができており、４両編成の車内は、立錐の余地がない。
藤沢を出た電車はすぐに地上に降り、各駅に小刻みに停車する。最初の下車駅は江ノ島。藤沢から５駅目で、所要時間は１０分である。

江ノ島は相対式２面２線の交換駅で、留置線が３本ある。
江ノ島を出た電車は次駅の腰越まで一般道を走るが、江ノ電は鉄道事業法による鉄道で、路面電車ではない。
ともあれ、この併用区間の道路がかなり狭く、中央を通過する江ノ電の姿は圧巻だ。

腰越から鎌倉高校前まで電車を乗り継ぐ。腰越を出てしばらくすると、車窓右側に海が見えてくる。
目の前に海が広がる鎌倉高校前は、簡素なつくりながら、いかにも湘南の駅らしい。
ここから５分程歩いて峰ケ原信号場まで行く。駅以外で電車の交換が行われる珍しい場所。

峰ケ原信号場から七里ケ浜までは、舗装道路と住宅の間に線路が敷かれている。住宅の門前が線路というのも江ノ電らしい風景だ。
七里ケ浜から再び電車を乗り継ぎ、降り立ったのは極楽寺。極楽寺駅は「関東の駅百選」に選ばれた、なつかしい雰囲気の駅である。
また極楽寺駅には、藤沢寄りに検車区がある。

極楽寺で電車に乗り継ぐ。電車はすぐに極楽寺トンネルに入る。江ノ電は、路線は短いものの車窓は結構変化に富んでいる。電車は民家と民家の間をすりすり抜けるように進み、２面２線の終着駅・鎌倉に到着した。
電車は到着後２分で折り返す。駅構内は、大勢の乗降客で大変な混雑だ。

Ⅱ　車両とダイヤ

江ノ電には、１０形、２０形、３００形、５００形、１０００形、２０００形といった様々な車両が在籍しており、次々にやってくる電車を見ているだけでも楽しい。車両は連接車２両で１組になっている。繁忙時には２編成を連結し、４両にて運転する。これを通（つう）の人は“重連”と言うのだとか。この日はすべての電車が４両編成で運転していた。
ダイヤは、早朝深夜を除き、１２分間隔のパターンダイヤになっている。交換駅（信号所）の関係で、１時間に５往復が目一杯の運転本数だ。
全線１０ｋｍを３４分かけて走る江ノ電の表定速度は、時速１７．６ｋｍである。

Ⅲ　鉄道か軌道か？

江ノ電は鉄道事業法による鉄道であるが、小型で中央運転台の車両、併用軌道の存在、簡素なプラットホームなどにより、軌道（路面電車）のイメージが強い。
実際、このタイプの鉄道は、鉄道事業法に基づくものもあれば、軌道法で特許されているものもある。
京阪京津線は、かつて三条通りに併用軌道があったが、地下化した現在でも軌道法が適用されている。
逆に富山ライトレールと万葉線は、車両を見る限り路面電車であるが、専用軌道部分は鉄道事業法によっている。
外見とまったく異なるのが大阪市営地下鉄で、道路建設と併せて整備された、などの事情により軌道法で特許されている。御堂筋線は軌道だが、同線と一体で運用している北大阪急行線は鉄道、というのもおもしろい。

江ノ電藤沢駅はＪＲ・小田急藤沢駅とペデストリアンデッキで結ばれている

初詣客で賑わう藤沢駅の１０形車両
あわただしく乗客が入れ替わる

江ノ島駅前には土産店が並ぶ

“江ノ電もなか”扇屋の店先

懐かしい雰囲気ながら出入口にはＩＣカードリーダーがある

極楽寺検車区は閑散としていた

線路をまたがないと道路に出られない
江ノ電沿線らしい風景

鎌倉駅も乗降客で大賑わい

江ノ電鎌倉駅前景

併用軌道だった頃の京阪京津線東山付近（９６．１１）

新御堂筋の中央を走る御堂筋線
法律上は軌道の扱い