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調査レポート

2008.5.23

車内補充券でみる連絡運輸

JR線と接続している私鉄線の多くは、連絡運輸の協定により相互に連絡乗車券を発券している。
富士急行線のケースについて調べてみた。



写真②=車内補充券(月江寺→池袋)
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写真①=富士吉田駅の運賃表
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連絡運輸協定では鉄道会社間で乗換駅を指定し、連絡運輸区域を取り決める。
富士急行の場合は富士吉田駅に「JR線運賃表」(写真①左下部分)が掲出されており、注記として「記載のない駅は発売できません」とあるので、これが連絡運輸区域の手がかりになる。これに「主要駅旅客運賃表」(写真①右上部分)を重ね合わせれば、イメージはかなりはっきりする。
しかし、連絡運輸区域が最も分かりやすく記載されている資料は、車掌の発券する車内補充券(写真②)であろう。いまやかなり珍しくなったパンチ式の切符である。
見ると、富士急行線部分は最下部に申し訳程度に記載されていて、ほとんどのスペースがJR線の路線と駅で占められている。
これによると、富士急行線からみたJR線の連絡運輸区域は次のとおりで、区域内の全駅が発券対象になっている。
①東端(京葉線・総武線・常磐線)は東京23区内の駅まで。
②北は京浜東北線(尾久を含む)、埼京線の大宮まで。
③武蔵野線西部(南浦和−府中本町間)、南武線全線(支線を含む)、横浜線全線。
④東海道本線の平塚までと横須賀線の品川−鶴見間。
⑤中央本線の松本まで。
正確な資料がないが、4〜5年前よりかなり区域が縮小したような印象である。
なお、JR東海(身延線)とは連絡運輸を行っていない。
またJR側からは富士急行線全線が連絡運輸区域であるが、仄聞したところでは、無人駅の多くが発券対象外らしい。

連絡運輸は乗継客の利便性向上が第一義であるが、乗換駅の混雑緩和という目的も大きい。その一方で鉄道会社の精算事務負担ということもあり、どのように協定するかは鉄道会社間の思惑もあってケースバイケースである。
例えばJR線と小田急線が直交する町田駅は、PASMO、Suicaの普及により、今年になってようやく連絡定期券が発行されるようになったが、いまだに連絡乗車券は取り扱っていない。
このため、(以前ほどではないが)小田急線の自動券売機はいつも混んでいる。

さて、乗客から預ったJRの運賃は、どのように処理されるのかと思い、富士急行株式会社(単体)の貸借対照表をみてみると、流動負債勘定のなかに「預り連絡運賃」という科目があるのを発見し納得した。

(※)富士急行は今日現在、バスはPASMOを導入しているが、鉄道は導入していない。
(※)町田駅は以前、JR(旧国鉄)が原町田、小田急が新原町田といい、両駅間は500mほど離れていた。1980年(昭55)、JR駅を小田急駅に近づけて移設し、町田と改称した(小田急はすでに改称ずみ)。乗り換えは便利になったが連絡運輸の取り決めはしなかった。

猿橋駅発行の連絡定期券
    

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