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出張レポート(9)

2008.7.21

池上線・途中下車の旅

1968年から72年までの4年間、池上線の長原駅近くに下宿して学生時代を送った。
三連休の一日、筆者にとっていつも気になっていた池上線へ久し振りに乗ってみることにした。
今回は妻が一緒なので、彼女が飽きないように、途中下車をしながらの観察行となった。
池上線は、兄貴分だった目蒲線が目黒線と名前を変えてグレードアップした今、山手線にターミナルを持つ唯一のミニ路線。3両編成の電車が行き来する姿を見ているだけでも楽しい鉄道だ。

1.五反田

池上線の五反田駅は、山手線ホームの大崎寄りに続く連絡階段を上ったところにある。東急ストアのある駅ビルの4階がそのまま改札口につながっている空中駅だ。山手線に接続するターミナルとは思えないほど構内は狭いが、一歩ホームへ出ると視界が開け、周囲を見渡すことができる。
池上線では、固定3両編成の電車が、五反田−蒲田間を日中6分間隔でワンマン運転している。すべて各駅停車で、10.9km、15駅(起終点駅を含む)の所要時間は23分。かなりのんびりした鉄道だ。
平日朝夕は、五反田−雪が谷大塚間に区間運転の電車があり、ラッシュに対応している。

五反田駅ホームから見る1000系(左)と
7000系(右)

       
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池上線五反田駅改札口
1面2線のホームへと続く

2.戸越銀座

「女性連れ」ということであれば、途中下車せざるをえないのが戸越銀座駅。相対式ホーム2面の先端それぞれにある改札口を出ると、目の前は全長1.6kmに及ぶ商店街だ。
時計を見ると12時半。目についた中華料理店でランチをいただくことにした。ネギラーメンに半チャーハン、プラス杏仁豆腐のセットが800円。
あっさりした味付けで、おいしくいただくことができた。

買物客で賑わう戸越銀座商店街
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3.長原−洗足池

次の下車駅は長原。この駅は地下にホームがあって地上に改札口がある。環状7号線の裏側にあたるような場所で、駅前には小さな商店街が健在だ。
この駅で降りたのは、学生時代に下宿したお宅を訪問するためである。駅からは徒歩7分ほどの距離。40年前とは建物の姿が違うものの、目指すお宅はすぐに分かった。運よく奥さまは在宅で、突然の訪問者を手放しで歓迎してくれた。3年前に亡くなられたご主人に線香を手向け、思い出話に花を咲かす。妻と奥さまとは初対面だが、老後の心構えについて指南を受けるなど、なぜか話が合う。奥さまは80歳になるという。それでも洋裁や絵画に精を出しているせいか若々しい。
お宅を辞して、帰りは日蓮上人が足を洗ったとされる洗足池へ向かった。池は中原街道を挟んだ駅の向い側にある。緑に囲まれた大きな池の周囲は、桜の名所である。
洗足池駅は高架駅になっている。隣の長原が地下駅だったこととあわせてみても、この付近は起伏が多い坂の町であることが分かる。
洗足池駅で乗車し、次の目的地である池上を目指した。

亀が甲羅干しをしている洗足池

洗足池駅で撮影した7700系
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4.池上

車両基地のある雪が谷大塚を横目に見ながら、池上駅へ到着する。池上駅は相対式2面2線の地平駅で、乗り降りは楽である。見上げると、ホーム上屋が木造のトラス構造になっていてめずらしい。梁の中間に柱のないのが何とも不安定な気がするのだが、これはこれで強度が保たれているのであろう。

池上はもともと、日蓮宗大本山本門寺の門前町である。
ここは日蓮上人入滅の地といわれている。歩いて本門寺を訪ねることにした。
本門寺は台地の上にあり、お参りのためには、96段の石段を上らなければならない。
石段を上りきり門をくぐると広大な境内が現れる。樹木が多いためか、暑いながらも風はさわやかだ。
五重塔を見ながら力道山の墓まで行く。この先、まだまだ道は続いているが、時間の都合もあり引き返すことにした。

トラス構造のホーム上屋(池上駅)

池上駅正面には露店が並ぶ

池上本門寺にある力道山の墓

帰路 蒲田駅で行き会った7600系

1976年(昭51)、西島三重子の「池上線」がヒットした。
この歌は、車両の装備等に関して誤解を与えかねない部分もあるが、この路線の持つイメージをよく伝えている。池上線が広く世に知られる推進力となったことは間違いない。
今度の小旅行を通して、−車両は当時と比べようもないが−、池上線沿線の雰囲気はさほど変わっていないと感じた。

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