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錦秋の叡山電車

2008.11.28

出張レポート(10)

11月後半の3連休に大阪へ行く機会があり、中日の23日(日)に叡山電車で洛北の紅葉を訪ねた。購入した1日乗車券は「えぇきっぷ」といい、1000円で乗り降り自由というもの。何回も途中下車する予定の者にはありがたいきっぷである。

Ⅰ. 路線とダイヤ

叡山鉄道線は、出町柳から八瀬比叡山口までの本線と、宝ヶ池から分岐して鞍馬までの鞍馬線からなっている。
1989年(平元)、京阪電鉄の鴨東線開業により出町柳で鉄道他線とつながり、格段と利便性が向上した。
出町柳から本線の三宅八幡、鞍馬線の市原あたりまでは生活路線で、それらの駅から先は比叡山や貴船・鞍馬などへ行くための観光路線としての色彩が濃い。
本線、鞍馬線ともに出町柳を発着駅として直通運転している。種別はすべて“普通”である。
平日昼間は20分毎のサイクルダイヤで、この間に出町柳−鞍馬間、出町柳−二軒茶屋間、出町柳−八瀬比叡山口間が各1本運転される。
一方休日は15分サイクルとなり、出町柳−鞍馬間と出町柳−八瀬比叡山口間が各1本の運転である。
平日は出町柳−二軒茶屋間の頻繁運転で生活の足としての役割を重視し、休日は鞍馬や八瀬への観光輸送に力点をおいたダイヤである。
なお11月は、各線12分ヘッドの臨時ダイヤを組んでいる。

Ⅱ. 沿線探訪

(1)叡山本線

おそらくこの日は、叡山電車にとって最も忙しい1日だったのではなかろうか。
朝9時ころ出町柳駅に着いたときも相当の混雑だったが、2時ころ戻ったときには写真(右)のような混雑ぶりで、駅前の歩道にまで人があふれていた。
出町柳駅は4面3線ながら降車用ホームは幅が2mほどしかなく、“櫛形”という形容がぴったりのつくりである。

電動貨車1001と並ぶ、11月1日に
引退したデオ600形

叡山電車は車内収受式のワンマン運転のため、混雑時の運転士は極めて多忙である。停車するたびにホームへ降りてきっぷを回収する。このため徐々に遅れが目立つようになった。
まずは修学院で下車。ここには車庫があるが、この日はほとんどの車両が出払っており、閑散としていた。敷地の片隅に11月1日をもって引退したデオ600形車両が、“休車”の札をつけてたたずんてでいるのが印象的であった。

宝ヶ池は本線と鞍馬線の分岐駅。鞍馬線に比べて距離が短く、やや存在感の薄い本線だが、右の写真でみるとおり、鞍馬線(左)が本線(右)から分岐する配線になっていて、本線が本線たることを主張しているように見える。
この先電車は、三宅八幡までは市街地を走るが、八瀬比叡山口が近づくにつれ、林に囲まれた静かな風景が広がる。八瀬比叡山口駅は比叡山への拠点とは思えないほど閑静で、駅前の高野川沿いには見事な紅葉が続いている。

(2)鞍馬線

本線を乗り通したあとは、宝ヶ池から鞍馬を目指した。
岩倉から木野にかけては、真新しい住宅が整然と並んでいる。京阪電車鴨東線開業で都心部へのアクセスが向上し、新興住宅地として発展しているのであろうか。
この先、京都精華大、京都産業大といった大学があって、学生の利用が見られるのも京都の電車らしい。
さて、鞍馬線は二軒茶屋までが複線で、その先、鞍馬までは単線になる。
市原−二ノ瀬間は“もみじのトンネル”と名前がついている。鞍馬線のハイライトである。
二ノ瀬駅で撮影のため下車する。鞍馬川を渡る鉄橋は撮影ポイントとして有名で、何人かの“撮り鉄”が電車を待ち構えていた。

鞍馬線は、“もみじのトンネル”あたりから渓谷に沿った山岳路線になり、50‰の勾配標がしばしば現れる。貴船口駅は貴船神社や川床料理で知られる貴船への入口。この時期、駅の周囲は紅葉で覆われる。多くの客が下車して散策を楽しむためこの日、駅には臨時に駅員が配置されていた。
貴船口を出た電車は勾配とカーブの続く線路をゆっくりと進み、終点の鞍馬へ到着する。ホームには折り返しの出町柳行へ乗車する客が行列をつくって待っていた。駅の構内も大勢の人で大混雑である。
鞍馬駅は寺院を模したつくりで、いかにも鞍馬寺の玄関口、といった趣である。

出町柳駅では乗車を待つ人々が
舗道まであふれていた

臨時ダイヤで多くの車両が出払ったため
閑散としている修学院車庫

北大路通りを渡る本線用単行の
700系旧塗装車

修学院駅で出発を待つ
本線用700系「川号」

宝ヶ池駅手前で分岐する鞍馬線
3面4線の乗換駅ながら駅員はいない

本線終点の八瀬比叡山口駅は
山あいに静かにたたずむ

交換設備のある二ノ瀬駅へ到着する
800系“ギャラリートレイン・こもれび”

“もみじのトンネル”を出て鉄橋を渡る800系(左)と900系“きらら”(右)

【いずれもクリックで拡大】

大勢の乗客を乗せて貴船口駅へ
到着した900系“きらら”

    【クリックで拡大】

年配の客が目につく鞍馬駅前

Ⅲ.おわりに

この時期、京都はどこへ行っても多くの観光客で賑わっている。
とりわけ貴船・鞍馬へは道路が狭いためバスの乗り入れが困難で、叡山電車が観光輸送の主力になる。輸送力の弱い叡山電車だが、この日は目一杯の力を発揮した。
乗降ドアの操作、きっぷの回収など、文字通り席の暖まる暇のなかった運転士さんには、本当に“お疲れさま”と言いたい。

鞍馬線用800系電車

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