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SUNDAY TALK2010

第36回:カープファンに告ぐ(2010年〔平成22年〕9月5日公開)

 今年も中国地方唯一のプロ野球球団・広島東洋カープのBクラスは確定的な状況になってきた。「今年も」ということはずっと続いているということを読み取った方は多いかと思うのだが、お察しの通り1997年(平成9年)を最後にずっとBクラス、すなわち4位以下が続いているのである。最後にAクラスになった1997年(平成9年)は3位にはなったけれども負け越している(66勝69敗)からその1997年(平成9年)から暗黒時代は今日に至るまでずっと続いているということになるのだが、考えてみれば21世紀に入ってからAクラスに一度もなったことがないのは広島東洋カープだけなのである。今は亡き大阪近鉄バファローズも、Bクラスに低迷することの多い横浜ベイスターズも東北楽天ゴールデンイーグルスもオリックスバファローズも21世紀に入ってから一度はAクラスを経験しており、広島東洋カープだけ蚊帳の外になっているのである(注1)。
 なぜこのようになったのか、皆様ご存知のことなのであえてここでは触れないが、カープファンの一人である私として気になることがいくつもある。それは次に挙げることである。

1 なぜ球団非難をしないのか

 広島市内で広島東洋カープをバカにするようなことを言ったらひどい目に遭うという話がある。実話かどうかは分からないが、広島市内でタクシーに乗り、その中で広島東洋カープをバカにするようなことを言ったら運転手から「申し訳ないけれど降りて頂けませんか」と言われてタクシーを降ろされたという話は聞いたことのある人も多いであろう。更に中国放送(RCC、広島市中区基町)の公式サイトにある「RCC INTERNET STADIUM」の掲示板に広島東洋カープを非難するようなことを書き込んだらその投稿は掲載を拒まれるだけでなくそのような文章を投稿した人は二度と書き込みできなくなるという話もある(注2)。
 それらの話から推察されることは広島東洋カープは神聖なものであるとか我が町の球団だという意識が強いということであろう。しかし、それが球団のためになるのだろうか。いくら資金が潤沢でないとしても、選手層が薄いとしても、プロたるものはやはり眼前の一勝、そして上位を目指さなければならないし、不甲斐ないプレーなどしてはならない。更に監督やコーチがファンに疑問を抱かせるような采配をしてもならない。それができないでいる現状に対して何も言わないのがファンとして正しい態度なのだろうか。確かに不甲斐ない試合をすればヤジを飛ばすファンはいるし、球団事務所に電話をかけるとか電子メールを送るとかして抗議するファンもいる。けれど、なぜ集団で声を上げないのだろうか。「資金が潤沢ではないから…」とか「他球団とは違って親会社が後ろにあるわけではないから…」とか「何を言っても聞く耳を持ってくれないから…」とか「今のままで良いから…」とか言うのだろうが、器物を損壊するとかいたずら電話をかけるとかヤジを飛ばして周囲を怖がらせるとかいうのではなく(もっとも器物を損壊するとかいたずら電話をかけるとかいう行為は犯罪である。絶対しないように!!)例えば広島市随一の繁華街・本通をデモ行進するとか署名活動や募金活動を行うとか不甲斐ない試合を続けるなら応援活動を一切取りやめるとかいうことは考えられないのだろうか。そういうファンの熱意がないから首脳陣やフロントも真剣にならないと思うのだがどうであろうか。
 更に最近中国新聞朝刊の投稿欄「広場」で誰も球団OBや解説者は球団の現状に対して苦言を呈さないのかという投書が載ったのを見たことがあるが、中国放送主催の「カープ激励の夕べ」を開幕前日に開くのはおかしいと言って謹慎処分を受け、後に他球団に放出された高橋慶彦内野手の例(それさえなかったら2,000本安打達成は確実だったと思うのは私だけではなかろう)を見るまでもなく露骨な非難行為はできないというのが実情ではないのだろうか。ただ、自分こそ正しいと思うのではなく他人の意見にも耳を傾け、きちんと自分の思うところを差し障りのない程度に明かすことも首脳陣やフロントに求められる態度ではないかと私は考えるのだが…。

2 「カープ」という単語の入ったテレビ番組がないことをどのように思うのか

 恐らくプロ野球球団の本拠地のある都道府県、すなわち東京都、北海道、大阪府、宮城・埼玉・千葉・神奈川・愛知・兵庫・福岡各県から広島県に移住した人が驚くことの一つは広島県を放送区域とする民間テレビ放送局4社、すなわち中国放送テレビと広島テレビ放送(HTV、広島市中区中町)、広島ホームテレビ(HOME、広島市中区白島〔はくしま〕北町)、テレビ新広島(TSS、広島市南区出汐〔でしお〕二丁目)に「カープ」という単語の入ったテレビ番組が全く存在しないことであろう。無論かつては存在したのだが、2007年(平成19年)春の改編を最後に全滅したのである(注3)。更に中国放送テレビとテレビ新広島は今春の改編でスポーツ情報番組の制作を取りやめ、夕方のニュース番組や週末昼前の情報番組に内包するようになった。原因としては元々各局とも資金が潤沢ではないこと(注4)や広島テレビ放送の長寿スポーツ情報番組「進め! スポーツ元気丸」の成功に他の3局が追随する格好をとったことなどが挙げられる。無論、サンフレッチェ広島やJTサンダーズなどの存在も蔑ろにできないことがスポーツ情報番組の総合化=広島東洋カープだけ特別扱いしない姿勢に繋がったことも考えられる(注5)。
 一方で開局5日目の1952年(昭和27年)10月5日から広島東洋カープの公式戦をずっと中継してきた中国放送ラジオでも数年前気になる動向があった。公式戦は全て中継すると言いながら消化試合になると試合の途中からの中継にしたり全く中継しなかったりすることがあったのである。中国放送も経営事情があって中継しても聴取率が見込めないものは流さないという方針を採ったのだろうが、今後も低迷が続けばこのようにする可能性がないとは言えない。

 「大丈夫。心配しなくても良い」という声はあるかもしれない。しかし、私は広島東洋カープが近い将来なくなってしまうのではないかと考え続けている。しかもそれを考え始めたのは私が覚えている限り(注6)初めて最下位でシーズンを終えた1993年(平成5年)のことである。プロ野球球団の再編問題が大きな社会問題となった2004年(平成16年)よりも11年も前にそんなことを考え始めた背景には次に挙げるようなことがある。
・この年は日本でもプロサッカーリーグ、すなわちJリーグが創設された年であり、ブームと化したから。
・ドーハ(カタール)の悲劇で夢と消えたが、サッカー日本代表がサッカーワールドカップ初出場まで後一歩のところに迫ったから。
・広島東洋カープは最初は好調だったが、夏の異常気象で8月10〜15日に開催される予定だった旧広島市民球場(広島市中区基町。2010年〔平成22年〕閉鎖)での阪神タイガース戦と読売ジャイアンツ戦が全て中止になったのが良くなかったのか調子を崩し、8月末から9月中旬にかけて12連敗(注7)を喫し、最下位に終わったから。無論、山本浩二監督はその責をとって辞任した。
 たった一回の最下位なのにそんなことを思うとはどういう考えの持ち主なのかと思われそうであるが、やはりJリーグブームの影は否定し得ないことだったと思うし、事実上初めて見る広島東洋カープの最下位に対する衝撃が大きかったこともあったのだろう。更に当時私は下関市に住んでいたのだが、その対岸にある福岡県は1979〜1988年(昭和54〜63年)の10年間、九州地方最大の都市・福岡市があるにもかかわらずそこに本拠地を置くプロ野球球団がなかったという事実(注8)もその思いを強くさせた。
「広島東洋カープはサンフレッチェ広島に客をとられ、もう広島ではやっていけないとして広島を去るのではないか」
 野球とサッカーでは試合数は相当な差がある(現行では本拠地での試合は野球は72試合なのに対してサッカーは17試合)し、広島東洋カープは既に40年以上の歴史を重ねて市民に定着しているのに対してサンフレッチェ広島はまだできたばかりだからあまりにもバカバカしい杞憂と一蹴されても致し方はないところであるが、それから17年経った今も紆余曲折はあったが広島東洋カープとサンフレッチェ広島は存続している。安心しても良いのではないかと言われそうであるが、やはり心配は消えていない。何故そのように思うのかを挙げると次の通りになる。
・サンフレッチェ広島は二度Jリーグ二部に降格したがそこそこの成績を収め続けているのに対し、広島東洋カープは十数年間Bクラスに沈み続けているから。
・プロ野球、特にセントラルリーグの人気が凋落傾向にあるから。テレビ・ラジオともプロ野球中継を流さない放送局が増えたし、目立つ選手はパシフィックリーグにばかりおり、セントラルリーグにはいないのもどうかと思う。
・広島市民球場(愛称:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島。広島市南区南蟹屋二丁目)の観客動員が広島東洋カープが低迷を続ければ下がる恐れがあるから。
・広島東洋カープをセントラルリーグのお荷物だと思う人が少なくないから。インターネットの掲示板では「解散しろ」とか「身売りしろ」とかいうあまりにも辛辣な書き込みがなされることもある。
・国際的にも野球人気が高いとは思えないから。オリンピックでは開催競技から外されたし、国際大会も少ない。一方でサッカーはワールドカップを見るまでもなく人気が高いし、国際大会も多い。つまり、目指すものがない。
・今後もフリーエージェントの権利を行使して他球団に移籍する選手が出る可能性は十分考えられるから。
・首脳陣やフロントに長期的視野があるようには思えないし、経営面も不透明なところがあるから。
 ならばもし広島東洋カープがなくなったらどうなるか。私は次に挙げるようなことが起きるのではないかと考えている。
・プロ野球人気の更なる低下を招き、やがて瓦解する。
・広島市の活気が低下し、七大都市(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡)から外される(岡山市が代わって入る可能性はあるが、人口70万人足らずで政令指定都市に移行したことや人口が100万人を超える可能性はないこと(注9)、大阪市が近いことを考えればあり得ないだろう)。
・広島東洋カープは人類初の被爆地・広島市の復活の象徴でもあるが、なくなることは日本の平和の象徴をなくすことであり、軍備増強などその後の日本にとって好ましくないことが起きる。
・2007年(平成19年)5月末にテレビ東京(TX、東京都港区虎ノ門四丁目)の当時の社長がテレビの地上波デジタル放送への移行をメドに系列局を増やす構想を明かしたが、その対象から広島県が外される(注10)。
・広島東洋カープは広島エフエム放送(HFM、広島市南区皆実町一丁目)の筆頭株主である(全株式の14.25%を所有)が、広島東洋カープがなくなると経営に大きな影響を及ぼす恐れが生じる。自社制作番組の削減程度で済めばまだ良いが、Kiss-FM KOBE(神戸市中央区波止場町)のように倒産する恐れも考えられないわけではない。最悪なのは愛知国際放送(愛称:RADIO-i、名古屋市東区東桜一丁目)のように廃業(注11)に追い込まれることであるが…。
・「カープがない生活は考えられない」として自殺を図る人が中高年層を中心に出る。
・広島市民球場があまり使用されなくなり、周辺の開発も滞る。
・中国新聞の売り上げが下がる。無論スポーツ紙は記すまでもないであろう。
 果たしてこんな現実は受け入れたいと思うだろうか。私としてはやはり広島東洋カープは今後も広島を本拠地とし続けて欲しいし、早く暗黒時代を脱して1970年代半ばから1990年代半ばのような毎年優勝を争えるような球団になって欲しいと思っている。連続Bクラスの球団記録は18年(1950〜1967)、プロ野球記録は20年(南海ホークス〔1978〜1988〕→福岡ダイエーホークス〔1989〜1997〕の20年〔1978〜1997〕)であるが、それを超えるまであと数年に迫っていること(球団記録は2016年〔平成28年〕、プロ野球記録は2018年〔平成30年〕にそれぞれ更新することになる)、現行球団では東北楽天ゴールデンイーグルスを除いて日本一から最も遠ざかっていること(1984年〔昭和59年〕を最後にない)、前に記した通り21世紀に入ってから全くAクラスに入ったことがないことを思うとその思いは切実になってくるのだが、恐らく他のカープファンも同じ思いであろう。そこで何をすれば良いのか。やはりファンが球団関係者に思いが届くように行動を起こすことである。ただ広島市民球場に行って観戦すれば良いだけではなく、不甲斐ない戦いを続けるなら一切の応援行動をしないようにするのも手だろうし、本当にオーナーや監督に退陣して頂きたいのなら広島市随一の繁華街・本通をデモ行進したり署名活動を行ったりしても良いであろう。無論暴力や触法行為に走ってはいけない。自分の人生が台無しになるだけでなく、球団関係者や他のファンが悲しむことになるからである。「カープのためにやった。私は正しいことをした。誰もしないから私がやった。私は英雄とあがめられることだろう」などと言っても誰もあなたのことを英雄とは見ないだろうし、むしろバカ者とかのぼせ者として扱われるだけである。
 私は更に次に挙げるようなことが行われてはどうだろうと考えている。
・広島東洋カープの今日の低迷の一因は1975年(昭和50年)以降広島東洋カープに全く在籍したことのない人を監督として受け入れていないことにもあると思われるので、もし野村謙二郎監督がダメなら次期監督は広島東洋カープに全く在籍したことのない人を招聘(しょうへい)すべきである。読売ジャイアンツもずっと読売ジャイアンツに全く在籍したことのない人を監督として受け入れないでいることがV9(1965〜1973年〔昭和40〜48年〕)以降全く連続日本一になっていないこと(注12)に繋がっていることを思えば読売ジャイアンツのマネをしたことが悲劇の始まりではないのだろうか。
・広島市民球場での全国高等学校野球選手権大会広島県大会の開催を最小限にとどめること。広島東洋カープの夏場の連敗の一因は全国高等学校野球選手権大会広島県大会開催のために広島市民球場を明け渡さざるを得なくなり、広島東洋カープ版死のロードに出ざるを得なくなることが原因ではないかと思うのだが、最近広島県内各所で新しい球場が次々とできていることや広島市内にはまだ広島県総合グラウンド野球場(広島市西区観音〔かんおん〕新町二丁目。旧広島市民球場が完成する前の広島東洋カープの本拠地でもあった)があることを思えば広島市民球場を多用する必要性はないのではないか。ただ、広島市民球場は高校球児の憧れの場所になっていることを考えると広島市民球場での試合を減らすことは難しいかもしれない。
・広島県を放送区域とする民間テレビ放送局はテレビ新広島を除いて終夜放送状態になっている(注13)が、そういう時間帯にフィラーとして広島東洋カープの試合を流すのはどうであろうか。スポーツニュースで結果を知ってから見るのは特に負けた試合の場合気が進まないが、通販番組や視聴率の見込めない番組を流すくらいなら広島東洋カープの試合を流したほうが良いのではないのだろうか。なお、生中継のある日は流さないものとする。
・広島エフエム放送で広島東洋カープの試合中継を流すのはどうであろうか。決して中国放送ラジオなどが良い顔をしないだろうし、番組の短縮や休止が日常茶飯事化する恐れはあるのだが、民間エフエム放送局でプロ野球中継を行ったところはないわけではない(注14)し、広島エフエム放送としても利益がある程度もたらされるのではないのだろうか。
・広島県及び中国地方最古参の民間放送局・中国放送テレビだけでも良いから「カープ」という単語の入った番組を設定し、開局当時から広島東洋カープを追い続けてきたという誇りを示してはどうであろうか。経営事情や視聴率などの問題はあるとはいえ広島県及び中国地方最古参の民間放送局がスポーツ情報番組を全く制作しないというのはどうかと思うし、前記の消化試合になるとラジオの中継が途中から始まったり全くしなかったりするというのは聴取率などの問題はあるとはいえカープファンに対して失礼に当たるのではないかと考えられるからである。ただ、番組を設定するのが望ましい週末には自社制作番組の「RCCプロジェクト Eタウン」や「元就。」、東京中心の情報しか流さないが宣伝効果が見込めるためにネットされ続けている「王様のブランチ」(TBS系(注15))、長らく続いている「ポケットモンスター」シリーズ(テレビ東京系)や毎日放送テレビ(MBS、大阪市北区茶屋町)制作の「よしもと新喜劇」などの人気番組が存在するため困難を極めることであろうが…。
 まあ実現しないことばかりであろうが、やはり広島東洋カープは広島にはなくてはならない存在であることだけは確かである。しかし、近年の低迷を見るにつけ、新しいファンと球団の関係が模索されてしかるべきではないかと思っている。成績が悪くてもファンが許してくれるという甘えが広島東洋カープにはないか。広島東洋カープがあることに対して自己満足に陥り、何もしないでいるのが果たしてファンそして球団にとって良いことなのか。そういう関係から脱しない限り私は広島東洋カープの低迷と存廃危機は終わらないと思う。
 確かにリーグのお荷物ではあろう。なくなってしまえなどと辛辣(しんらつ)なことをいう人も多いだろう。しかし、決して悪いことばかりではない(どういうことかは最早記すまでもない)。そういう中でどのようにすれば昔日の栄光は戻ってくるのか。今広島東洋カープ自体とそのファンの在り方が問われている。

(注釈コーナー)

注1:実は勝率ではなく勝利数で順位を決めたためにAクラスになり損ねたことがある。2001年(平成13年)のことで、この年は勝率は3位だったのに勝利数は4位となり、広島東洋カープはAクラスに入り損ねたのである。もっとも、この年は横浜ベイスターズ(現:横浜DeNAベイスターズ)に大きく負け越したので感情的にはAクラスに入るにはどうかと思う面があるのだが…。

注2:広島東洋カープを非難するような投稿の掲載を拒み、永久書き込み禁止措置をとることは言論(表現)の自由に反するとか広島東洋カープのためにはならないという考え方もあるが、運営者の中国放送としてはそのような投稿を許せば掲示板が荒れてしまうことを危惧しているためにそのような措置をとっているのではないかと思われる。

注3:広島ホームテレビの「カープDON!」が現時点での最後の番組である。

注4:それがうかがえる事実は次に挙げる通りである。
・ある程度人気のあった既存番組を打ち切って新たな番組を設定するというスクラップ・アンド・ビルド型の番組改廃がよく行われている。
・1980年代半ばまでどのテレビ局も放送開始が午前6時台と遅かった。
・反対に早く放送を終了するテレビ局もあった。中国放送テレビに至っては1983年(昭和58年)当時では平日は午前0時35分、1986年(昭和61年)当時では日曜日は何と午前0時10分に一日の放送を終了し、謎の中年女性が暗いスタジオでハープで「中国地方の子守唄」を演奏する映像が流されていた。
※謎の中年女性が暗いスタジオでハープで「中国地方の子守唄」を演奏する映像は1993年(平成5年)に終夜放送に移行してからは流れる回数が減り、2006年(平成18年)に使用を取りやめた。2011年(平成23年)7月24日深夜、すなわち日付が変わる前にアナログ放送終了を演出する意図でこの映像が流され、粋な演出だと評判になったが、恐らくそれが見納めになるものと思われる。
・広島ホームテレビは開局15周年を迎えた1985年(昭和60年)当時の自社制作比率がわずか6%しかなく、郵政省(現:総務省)から指導を受けたほどであった。
・番組の打ち切りが少なくない。特にひどいと思うのは中国放送テレビ(不人気番組の一クール〔3ヶ月または13回〕前後での打ち切りやTBSテレビ〔東京都港区赤坂五丁目〕制作の深夜番組の打ち切りが目立つ)や広島テレビ放送(打ち切りたい番組を視聴率が見込めない時間帯に移して打ち切りを狙う例がいくつかある上、土曜日正午頃や日曜日正午頃及び夕方など打ち切りが頻発する魔の時間帯がいくつかある)である。

注5:ならば広島東洋カープだけを取り扱った番組はないのかという話になるのだが、実は一つだけラジオ番組に存在する。広島エフエム放送で月曜日の午後7時から放送されている「DO THE CARP」である。無論担当しているのは広島市出身でカープファンという中川真由美アナウンサーである。
※広島エフエム放送にはこの他サンフレッチェ広島だけを取り扱った番組(「サンフレッチェ・ラジオ・サポーターズクラブ“GOA〜L”」)もあるし、2010年(平成22年)春の改編まではハンドボールやJTサンダーズを取り扱った番組も存在した(現在は「Vibe ON! MUSIC」に内包)。

注6:その前に広島東洋カープが最下位に終わったのは1972〜1974年(昭和47〜49年)であった。私は1972年(昭和47年)生まれなので当然のことながら覚えていないし、初のリーグ制覇(1975年〔昭和50年〕)も記憶にない。
※不思議なのは平成時代の低迷の中で広島東洋カープが最下位に終わったのは1993年(平成5年)と2005年(平成17年)の二度しかないことである。長期低迷が続いた球団はいくつもあるがこういう球団は広島東洋カープだけではないのだろうか。

注7:この時の連敗の状況は下表の通りである。

月日対戦相手球場名スコア責任投手備考
8月28日(土)読売ジャイアンツ東京ドーム4—1川口 和久
8月29日(日)1—1(なし)
8月31日(火)阪神タイガース旧広島市民4—6片瀬 聖敏
9月1日(水)6—7秋村 謙宏
9月4日(土)横浜ベイスターズ北九州市民1—4川口 和久
9月5日(日)下関2—4長冨 浩志
9月7日(火)中日ドラゴンズ旧広島市民3—10北別府 学
9月8日(水)4—10佐々岡 真司
9月9日(木)2—3望月 秀通対中日ドラゴンズ戦9連敗(結局10連敗まで続く)。
9月10日(金)ヤクルトスワローズ0—7長冨 浩志
9月11日(土)2—3大野 豊
9月12日(日)4—5高橋 英樹
9月14日(火)阪神タイガース阪神甲子園1—2佐々岡 真司
9月15日(水)1—2片瀬 聖敏
9月16日(木)4—0鈴木 健鈴木健投手としてはプロ入り初勝利となった(ちなみにこの勝利が鈴木健投手としては広島東洋カープ及び日本プロ野球で挙げた唯一の勝利となる)。

※ヤクルトスワローズの現在の球団名称は東京ヤクルトスワローズ。

※横浜ベイスターズの現在の球団名称は横浜DeNAベイスターズ。

注8:福岡市を本拠地とする球団はセントラルリーグに属していた西日本パイレーツ(1950。西鉄クリッパースに吸収合併されて消滅)と、パシフィックリーグに属していた西鉄クリッパース(1950)→西鉄ライオンズ(1951〜1972)→太平洋クラブライオンズ(1973〜1976)→クラウンライターライオンズ(1977〜1978)があった。10年間の空白期間を経てパシフィックリーグに属する福岡ダイエーホークス(1989〜2004)→福岡ソフトバンクホークス(2005〜)が本拠地を置くようになった。
※なぜ福岡市はプロ野球球団を奪われる結果になったのかというと多くの主力選手が永久追放処分を受けた黒い霧事件(1970年〔昭和45年〕)で球団に対する人気が大幅に下がったことや福岡県に球団を保有し、なおかつ毎年優勝を争えるようなチームにできるほど資金が潤沢な企業がなかったことが原因と言える(私は黒い霧事件はパシフィックリーグを潰そうと画策した何者かの陰謀だと思っているのだがどうだろうか)。

注9:もし岡山市が今後周辺自治体との合併を推進したとしても30万人もの人口を捻出できる可能性は皆無である(倉敷市と合併すれば良いと思う方もいるかもしれないが市街地が連続していないし岡山市と倉敷市はライヴァル関係にあることからあり得ない)。更に行政区の再編も余儀なくされる恐れがあり、決して現在の岡山市にとって良いことはない。

注10:広島市は七大都市の一つだから外されはしないだろうとする意見もあるが、当時の新聞報道で気になったのは宮城県より人口が多く、政令指定都市もプロサッカーチームもある新潟県が対象外になっていることである。 新潟市の公式サイト にある「市長への手紙」にそのことを不服とする投稿がなされたこともある(現在は削除されたため閲覧できない)。まさか「仙台には東北楽天ゴールデンイーグルスとベガルタ仙台があるが新潟にはアルビレックス新潟しかないから…」という理由で対象外にしたわけではないだろうが、それが認められれば「仙台には東北楽天ゴールデンイーグルスとベガルタ仙台があるが広島にはサンフレッチェ広島しかないから…」という除外の言い訳ができる恐れがある。ただ、その後何の報道もないところを見ると実現の見込みはなくなったと考えても良いかもしれない(というより私自身この構想には賛成していないのだが…)。

注11:愛知国際放送は今年9月30日をもって放送を終了し、会社は清算された。都道府県域放送局では初の完全廃業事例となったが、愛知国際放送が属していたMegaNet系列の総本山・エフエムインターウェーブ(愛称:InterFM。東京都品川区東品川一丁目)が2012年(平成24年)10月に2014年(平成26年)春にMegaNet系列に属する放送局を開局させる構想を発表している。ただ、このMegaNet系列は属している放送局はどこも経営が厳しい上、五大都市のうち未だに札幌地区に系列に属する放送局が開局していない(北海道以外の都府県を放送区域に編入できないことや札幌市から他の県までの距離はかなりあること、北海道経済が1990年代後半から厳しい状況に置かれていることも理由と思われる。余談だが札幌地区を本拠地とするAKB48の姉妹グループが未だに誕生しないのも同じ理由と思われる)ため、実現するかどうかは不透明である。

注12:読売ジャイアンツのV9以降セントラルリーグに属する球団が日本シリーズ連覇を成し遂げたのは実は広島東洋カープだけである(1979〜1980年〔昭和54〜55年〕)。パシフィックリーグなら何度か出ているが、それも西武ライオンズ(現:埼玉西武ライオンズ)の三連覇(1990〜1992年〔平成2〜4年〕)が最後になっている。

注13:2013年(平成25年)2月現在、テレビ新広島も終夜放送状態になることが多く、結局広島県を放送区域とする民間テレビ放送局は全て終夜放送に移行したことになる。

注14:埼玉県の都道府県域民間エフエム放送局であるエフエムナックファイブ(さいたま市大宮区錦町)が埼玉西武ライオンズの試合中継を流している(他に埼玉県に本拠地を置くJリーグチームの浦和レッドダイヤモンズや大宮アルディージャの試合中継も流している)。ただ、埼玉県には他に都道府県域民間ラジオ放送局がないことがエフエムナックファイブがプロ野球中継を流す一因となっており、複数都道府県域民間ラジオ放送局がある広島県とは事情が異なっている。
※プロ野球の本拠地のある都道府県で都道府県域民間ラジオ放送局の本社が一つしかないないところとしては他に千葉県があるが唯一の放送局・ベイエフエム(千葉市美浜区中瀬二丁目)で千葉ロッテマリーンズの試合中継が流されることはない。

注15:「王様のブランチ」に関しては次に挙げる点からネットすべきではない(ネットを打ち切るべきだ)という意見もある。
・東京中心の情報ばかり流しており、親しみにくい。
・レポーターOGが人気タレントになる例は多いが、それも中川翔子が最後になっている(他には坂下千里子、中越典子、はしのえみ、安めぐみなどがいる)。
・広島県出身のレポーターは過去に二人、呉市出身のゆりん(2003年〔平成15年〕1月〜2004年〔平成16年〕9月)と福山市出身の白石知世(しらいし・ちよ、2006年〔平成18年〕4月〜2007年〔平成19年〕12月)がいたが、いずれも目立った活躍は見せずに番組を降板し、その後タレントとしても大成しなかった(ゆりんは声優として活動し、白石知世は2008年〔平成20年〕秋にサッカー選手の永井俊太〔父親はサッカー選手で後にいくつかのチームの監督にもなった永井良和。現在は引退し、柏レイソルのスタッフになっている〕と結婚し、現在は一児の母親になっている)。
・中国放送テレビが「王様のブランチ」を初めてネットしたのは2003年(平成15年)10月のことであるが、その時はわずか2ヶ月半で打ち切った。そのため不人気番組という烙印を押している人が少なくない。
※当時のネットは午後の部だったのだが、土曜日午後の定番だった「よしもと新喜劇」の放送日時を変えてまでネットを強行したことや元々「王様のブランチ」午後の部は視聴率が芳しくないこと(故にネット局は少ないし、番組が始まった1996年〔平成8年〕からずっとネットしている山陽放送テレビ〔RSK、岡山市北区丸の内二丁目〕もネットしたりしなかったりを繰り返している)から視聴率が低迷し、短期間での打ち切りと相成ったようである。
・競合番組が多く、視聴率で苦戦しているという見方がある(広島ホームテレビとテレビ新広島は裏番組に自社制作番組を設定しているし、本作公開時点では広島テレビ放送も裏番組に自社制作番組を設定していた)。
 しかし、私の住んでいる福山市に限ったことであるが、次に挙げる事実から中国放送テレビでのネットはある程度の効果を挙げているのは事実だと考えている。
・啓文社ポートプラザ店(福山市入船町三丁目)で「『王様のブランチ』で紹介された本です」という宣伝文句が記された広告を見かける。
・第40回福山ばら祭(2007年〔平成19年〕5月19〜20日)にレポーターの一人で演歌歌手でもある森山愛子が来たことがあるのだが、福山市農協本所(福山市花園町二丁目)の前に設置されたステージに登場する前、司会進行役の女性が森山愛子について「RCCテレビでも放送されている『王様のブランチ』にも出ている」などと紹介していた。個人的な話で恐縮だが、森山愛子は今に至るまで私が間近で見た唯一の「王様のブランチ」レポーターである(いくら福山市出身でも白石知世は見かけたことがない。私の知人や姪に白石知世と同い年という人はいるが出身学校も住んでいるところも全く違うし…)。
 まあ福山市は山陽放送テレビの放送区域である岡山県と境を接しており、井原・笠岡両市からの客も想定しなければならないという事情もあるのだが、もし中国放送テレビが「王様のブランチ」をネットしていなかったらどうなっていたのだろうか。前に記したことは全て成り立たなくなるのは記すまでもないと思うのだが…。

(AFTER TALK)

 本作を公開してから2年半近くが経過したが、残念ながら広島東洋カープの連続Bクラスは未だに止まっていない。つまり、昨年までで15年連続Bクラスに沈んでいるわけである。特に昨年は中国新聞朝刊の投稿欄「広場」に野村謙二郎監督は即刻辞任すべきという投稿が何度も掲載された。広島東洋カープにとっては面白くない投書だろうが、それを掲載することに踏み切った中国新聞社(広島市中区土橋町)の勇気には敬意を表したい。
 しかし、私は広島県で多く読まれている新聞の投稿欄にそういう投稿をするくらいならファンは本当に行動を起こしたらどうかと考えている。本文でも触れたのだが、不甲斐ない戦いを続けるなら一切の応援行動をせず、無言の圧力をかけるとか、本当に松田元オーナーや野村謙二郎監督に退陣して頂きたいのなら広島市随一の繁華街・本通をデモ行進するとか署名活動を行うとかすれば良いのではないのだろうか(但し例えば「監督やオーナーは辞任しろ。さもなくば広島市民球場を爆破する」とかいうような恐怖を用いた行動や暴力を用いた行動は記すまでもないが絶対にやってはならない。立派な犯罪行為である)。そのような行動に出ないのは元々広島東洋カープが弱小球団だったことが理由ではないかとは思う(過去の暴動事例を見ると誰かが球団を侮辱したことまたは誤審など球団が侮辱されたと感じたことが発生の契機になっており、成績が芳しくないことで発生したものは見当たらない。それも一つの球団愛なのだろうが…)のだが、やはりプロ野球の一つのチームである以上はそれ相応の成績を残す義務があることを考えるべきではないのだろうか。特に私などのような1950〜1960年代の低迷期を知らない世代はそのような考えを持っても良いと思う。
 厳しいことを記すようであるが、若手の台頭だけでは低迷からは抜け出せないだろう。昨年広島東洋カープより下位になった阪神タイガースや横浜DeNAベイスターズはいろいろ補強を行ったが、広島東洋カープは全くと言って良いほど行わなかった。補強を行ったから簡単に上位に進出できるとは限らないのだが、その差がどのように出るのか。やってみなければ分からないが、それが不安要素である。
 このようなことを記すのはどうかとは思うのだが、私は選手一人一人が力を発揮できれば、ケガがなければ広島東洋カープは低迷期を脱せると思っているし、それは近いとも思っている。つまり、そんなに金をかけなくても勝てる要素はあると考えたいのである。現に昨年のJリーグ一部を見た場合、資金力のあるチームが低迷し、反対に資金力がそんなにあるわけではないベガルタ仙台とサンフレッチェ広島が優勝争いを演じ、結局サンフレッチェ広島が優勝したが、プロ野球でも同じことは言えるのではないのだろうか。もしそういう形でAクラス入りを果たせば世間は広島東洋カープに対する見方を大きく変えることだろうが果たしてどうだろうか。
 更に、現状では難しいかもしれないが、やはり広島県を放送区域とする民間放送局である以上、広島エフエム放送以外でも「カープ」という単語の入った番組があっても良いのではないかと私は訴えたい。いくつもスポーツチームがあり、スポーツが盛んな広島県であるが故に広島東洋カープだけ特別扱いというわけには行かないし、経営事情が厳しいからスポーツ情報番組の制作を取りやめているところもあるわけであるが、地元も応援しているという姿勢は示すべきだろうし、広島東洋カープにとっては面白くないことになるかもしれないが厳しい評価をする番組もあっても良いと思う。厳しく言われなかったことを良いことに更に…というのならますますファンは離れていくだろうし、気付いたら本当に経営難に陥って…となるかもしれないからである。「我々にとってあの発言は不都合だ。圧力をかけて打ち切りにしてやる」と言うのではなく、良薬は口に苦しということわざの意味をかみしめて球団関係者はその苦言を真摯(しんし)に受け止め、生かす必要があるのではないか。そのようになった時、球団と地元、ファンの間の新しい関係が構築され、広島東洋カープは再び優勝を争えるような球団になると思うのだがどうであろうか。

(2013年〔平成25年〕2月7日追記)

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