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秘湯めぐりの旅(24)
<トロコ温泉・後生掛温泉−秋田県>
1998.5.4
*1998年5月4日(月)
・トロコ温泉に立ち寄る
バスは定刻どうり出発し、八幡平の原生林の中を曲がりくねりながら抜けていった。途中、大規模な地滑りの跡を経由していったが、以前大きく報道されたもので、澄川温泉と赤川温泉が飲み込まれたと聞いたが、まだ復興されていないようにみえた。トロコ温泉のバス停で下車し、目の前にあった一軒宿の温泉旅館に入浴していくことにした。玄関に張り紙あって、「東トロコ温泉、湯瀬ホテルとは関係ありません。」と断ってあった。人気のない玄関で呼びかけてみると奥から女将さんが出てきたので、入浴させてくれるように頼んでみた。私は、こういう感じでふらりと立ち寄り入浴をするのが好きだ。色々な発見があって、その意外性がおもしろいからだ。さっそく浴場に行き、誰もいない風呂に入ろうとしたが、熱くてとても入れたものではない。朝の一番風呂に入ろうとするとたまには、こういうこともあるのだが...。仕方がないので、水をどんどん入れて、適温になるまで待つことにした。それでも、結構大きな湯船なのでなかなか温度が下がらない。ある程度のところで我慢して湯に体を沈めた。しかし、一人で浴場を占拠して、好き勝手に使っているとは贅沢なことだ。この周辺の温泉は湯量が豊富なので、泉水も流し放しだが、湯量の少ないところではこんなに水で埋めることはできないのでは...。そうこうして、とにかく入浴して、体を石鹸で洗い、湯から上がってきた。この周辺には人家は一軒もない、大自然の中の国道341号線沿いにぽつんと一軒宿の温泉があるだけなのだ。
★トロコ温泉に入浴する。<入浴料 400円>
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「トロコ温泉」の外観 | 「トロコ温泉」の浴槽 |
沿道の水芭蕉 |
旅館を出て、再びバス停に戻って、バス時刻を見ると、まもなく八幡平行きのバスが来ることがわかった。このまま、鹿角花輪駅の方へ抜けようかと思っていたが、八幡平経由も悪くないと考え直し、経路を急に変更することにした。そんな、気ままな旅なのだ。まもなく来たバスに乗り、八幡平を目指したのだか、今度はその経由地に後生掛温泉があることを知り、急に立ち寄ってみたくなった。以前、旅行雑誌「旅」の特集記事で後生掛温泉が取り上げられていて、頭の片隅に残っていたのだ。バスを降りた沿道に水芭蕉の花がきれいに咲いている。しかし、この両側に駐車された車の数はなんだ。まるで、都会の駅周辺のように隙間がないほどびっしりと並んでいる。バスの乗客はあまり多くなかったが、こんな山中の温泉場もモーターリゼーションの波に洗われている。そんな、車の列を後目に、後生掛自然研究路の方に足を踏み入れてみた。
後生掛自然研究路で見られる泥火山 |
・後生掛自然研究路を散策
ここには、温泉に関する自然現象が凝縮されていて、1時間ほどで歩いて回れる。先ずは、おなめ・もとめ、そして紺屋地獄で谷底の方からぶくぶくと温泉が沸き出していて、湯煙がもうもうと立ちこめている。なかなかすごい光景だ。少し先へ進むと小坊主で、いたるところから小さな噴気が立ち上っていて、昔は硫黄を採取したとある。さらに歩いていくと、大湯沼があって、沼全体が温泉で、その底の方から熱湯が沸き出しているとのこと。とてつもなく雄大な温泉だ。池を巡って、さらに進むと中坊主、そして、泥火山というのがあった。温泉泥が少しづつ吹き出しながら積み重なって出来たもので、小さな山のようになっている。これらが、皆温泉現象で出来たものかと思うと、自然の造形ってほんとうに素晴らしいと感心してしまう。そんな、楽しい遊歩道を約50分で一周して、後生掛温泉に入浴することにした。
・いろいろな入浴法を体験
ここの、温泉はオンドル宿舎で有名だ。天然の床暖房システムとも言えるもので、昔から、湯治宿舎として使われている。ここの、大浴場は箱蒸し、泥湯、滝湯など色々な入浴法が試みられておもしろい。私は、泥湯が一番気に入った。木の湯船の中に、温泉泥が入っているのだが、底がつるつる滑って、うまくバランスをとらないと転けてしまう。この泥は美容効果もあるそうで、肌に塗りたくると良いと聞いた。露天風呂もなかなか興味深い。女性風呂との間に仕切があるのだが、大きな隙間があるので、顔は見えないものの、お尻や胸は見えてしまう。「のぞかないで下さい」と張り紙がしてあるのもおかしかった。それなら、隙間をふさいでしまえばいいのに...。先に、入浴していた老人が話していたが、以前は仕切などなく、混浴の露天風呂だったとのことで、なるほどなあと思った。結構楽しみながら入浴して、上がってきたら、昼時になっていたので、土産物コーナー2階の食堂で山菜定食を注文して食事をすませた。
★後生掛温泉に入浴する。<入浴料 400円>
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「後生掛温泉」の入口 | 「後生掛温泉」のオンドル宿舎 |
後生掛温泉の公式ホームページへ |
・八幡平頂上を目指す
八幡平頂上 |
再び、バスに乗って、八幡平を目指したが、途中ふけの湯を通過していく。車窓から見てみると、なかなか趣のある湯治場だ、立ち寄ってみたいとも思ったが、今日は朝から温泉ばかり入っているので、今回はパスすることにした。八幡平のバス停から徒歩で頂上を目指したが、聞くと上の方は残雪が多く、雪上を歩かなければならないとのこと。登山靴を履いていないので大丈夫かと不安を感じたが、下りてくる人の格好も私とそう変わらないので、そのまま上っていくことにした。結構上り坂がきついが、遊歩道がちゃんと整備されているので、歩きやすい。見晴らしはすばらしく、温泉に入った後でもあるので、気分は上々だ。途中からは、雪道となり、滑らないように注意しながら登山者の足跡をたどっていく。このコースからはいくつかの湖沼が望まれて、絶景なのだ。それでなかったら、歩きにくい雪道を途中で断念したかも知れないが、とにかく山頂までたどり着いた。八幡平はアスピーテと呼ばれ、粘性の少ない溶岩によって形成された、盾を伏せたような火山なので山頂もなだらかではっきりしない。標識がなかったら、どこだかわからないぐらいだ。この周辺はまだ1m以上の積雪があって、完全に冬の風景になっている。しばらく、その雪原の上を歩き回ってみたが、林の中に入っていったら足跡がいくつにも別れ、迷い込んでしまいそうになったので、急いで元に戻って、下山することにした。それにしても、雪の上は歩きにくい、何度か滑りそうになりながら、少しづつ下っていった。
・山を下って盛岡へ
バスの待合室にはストーブが焚いてあって、暖をとりながら時間を待ったが、定刻を過ぎてもバスがやってこない、心配になって外に出て待つことにした。さすがに、じっと立っていると、寒さを感じさせる、やっと15分ほど遅れて盛岡行きの下山バスが到着した。ここからのコースは眺望がすばらしい。八幡平の原生林をぬいながらどんどん高度を下げ、みごとな山並みも望める。そんなバス旅を2時間ほど続けて、盛岡の市内へと入っていった。
秘湯めぐりの旅(27)<矢巾温泉・花巻温泉郷−岩手県>へ続く |
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