このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

  

 .そして逃走へ

 

 メタルスライムの強さの秘密は予測がついた。では、それ程の能力を持ちながら、なぜメタルスライムは逃げに徹するのだろうか。確かに攻撃力は低く、攻撃に使える「とくぎ」も少ないことが多い。だが、「隙をついて逃げる」という特異な行動ができるなら、「隙をついて攻撃する」事も可能なのではないだろうか。さらに、高い硬度と質量を持つ金属の体をうまく活用すれば、攻撃力も決して低くないように思える。

 私はこれに対して、「メタルスライムはそもそも戦うために進化した生物ではない」という仮説を立てた。ドラクエのモンスターたちは、一様に戦うための強い力を持っているが、生物の能力というのは、捕食・防衛・生殖のいずれかの目的のために存在している。

 強い力があれば、獲物を狩るのが楽だし、逆に自分を狙う敵を追い返すことが出来る。同族と争ってメスを勝ち取ることも出来ると、戦うための力はそのいずれにも当てはまる。特にドラクエの世界のように、凶暴なモンスターが多数生息しているなら、防衛のための力は不可欠だといえよう。

 そしてメタルスライムは、戦うのではなく、逃げるための力を身につけることで生き残ろうとしたのではないだろうか。単に生き残るためだけなら、敵を倒してしまう必要はない。自分が傷つかなければいいのだから、確実に逃げられる手段があればそれで十分なのである。

 現実世界においても、強力な肉食獣に対し、草食獣は大抵の場合逃げの一手に走る。むしろ反撃する例のほうが少ない程である。戦うことばかりが目立つドラクエの世界だが、何もそれだけが生き残る手段ではないのである。

 力が全てである剣と魔法の世界において、あえて力を捨て、逃げることを選択したモンスター、メタルスライム。世界を救えるような勇者でも、たった一匹のメタルスライムを倒せないことがある。逃げるが勝ちとは、良く出来た言葉なのかも知れない。

 

 

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