このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

※都合上横書きにしてあります。

 

1.事の発端

2.アリスの思い

3.戦闘、アリスvsパチュリー

 

1.事の発端

 始まりは他愛の無い事だった。いつものように紅魔館(こうまかん)の大図書館に集まった三人の魔女達。霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)、アリス・マーガトロイド、パチュリー・ノーレッジの三人は、これまたいつものように魔法談義に花を咲かせていたのだ。

「だから、この式が記述されている時点でもう熱量の使用目的は確定されてるんだろ?だったらその部分は省略して他の式を追加した方が……」

「駄目よ。それじゃ陣そのもののバランスが悪くなるじゃない。それにそんなにいろいろ詰め込んだら術式そのものの起動速度に影響が出てくるわ」

「……そもそも術の使用頻度が日常レベルである以上、重視すべきは機能性より確実性だわ。それに、あまりコストが高すぎると人間であるあなたが使うには荷が重いんじゃないかしら?」

「う……流石にそれを言われると弱いぜ…………仕方無い、床暖房の用途拡大は見送る事にするか……」

 魔理沙は残念そうに溜息をつくと、ゴチャゴチャと大量の図や式が書き込まれたノートを閉じる。魔法の使用目的が暖房機器の充実だというのはなんとも小さな話だが、彼女はそういった、たいして意味のない事に魔法を使うのが信条なのである。

魔理沙は肘掛椅子の背もたれに頭を乗せると、椅子を揺らしながら大図書館の高すぎる天井を見上げた。

この図書館は階層が分けられておらず、とてつもなく高い壁の一枚一枚が全て本棚に覆われている。辺りには本を傷めない魔法の灯りがちらほらと浮かび、館内の暗闇に穴を開けるかのように淡い輝きを放っていた。

「やれやれ、なかなか上手くいかないもんだな……」

「まったく……そもそも魔理沙は欲張り過ぎるのよ。的を絞らずにあれこれ求めるから、結局何も手に入らないんだわ」

「それについては同感ね。あなたはもうちょっと節度を知るべきだわ。私の本的な意味で」

ぼやく魔理沙をアリスが(いさ)め、パチュリーがぼそりと突っ込みを入れる。普段と何ら変わらない、幻想郷の魔女たちの談笑風景であった。あえて相違点を挙げるとすれば、いつもは魔理沙絡みの話題で衝突の多いアリスとパチュリーが同調した事くらいだろう。

 その事も特に意識されることなく日常の話題の中に消えて行ってしまったが、もしかしたらこれこそが今回の騒動の予兆(よちょう)だったのかもしれない。

「何だよ、こんな時に限って調子合わせやがって……今日は帰る事にするか。パチュリー、これ借りてくぜ」

「持ってかないでー」

パチュリーの諦め気味な抗議の声を無視し、魔理沙は一冊の魔道書を抱えて大図書館を退出して行った。しかし、彼女が去り際に放った一言によって、それまで和やかだった空気が一瞬にして凍りつく事となる。

「欲張り過ぎ、か…………私もいずれ、アリスとパチュリーのどっちかを選ばなくちゃいけないのかね……」

「なっ!?

「っ!!…………ゲホッ、ゲホッ……」

思わず驚愕の声を上げるアリスと、咽返るパチュリー、そして二人の声に歩みを止めた魔理沙。解散しかけていた三人の意識が再び一点へと収束し、三つの視線が空中でカチリとぶつかりあった。

「ちょっと魔理沙?あなた、私達のどっちかを選ぶって……どう言う事なの!?

「ゲホッ、ケホッ……ヒュッ!…………まり、っ……何…………」

魔理沙の唐突な発言に対し、アリスとパチュリーの二人は説明を求めて詰め寄った。

アリスは顔を真っ赤に昂揚させ、パチュリーは咽た拍子に喘息の発作が起きたのか喉を押さえて苦しそうにしている。対する魔理沙は失言を悔いているらしく苦い表情を浮かべていた。

 

 

2.アリスの思い

「はぁ……」

 アリスは自宅のベッドに横になり、じっと天井を見つめていた。大図書館を出た後は魔理沙との接触を避けるためにすぐには家に帰らず、人間の里の辺りをうろついていたために少々体力を消耗してしまっていたのだ。

(…………魔理沙……)

疲労で思考力の落ちた頭に浮かぶのは今日の図書館での出来事ばかりだった。

なぜ魔理沙はあんな事を口走ったのか、なぜパチュリーはああまで魔理沙を庇うのか、そして自分もなぜあそこまで過剰(かじょう)に反応してしまったのか。しかし、考えても考えても答えが出る事は無い。そもそも問いそのものが非常に曖昧なのだ。

魔理沙が独り言を言ったのは単なるうっかりだろうし、その理由を尋ねても明確な答えなど返ってこないだろう。

ちなみに魔理沙がアリスとパチュリーの二人から同時に憎からず思われている事は既に周知の事実であり、今ここで追及する必要は無い。

パチュリーはパチュリーで、魔理沙を思う気持ちはアリスに勝るとも劣らないものがある。アリスが怒りの矛先を向けてしまった事もあって、答えを欲するよりも魔理沙の身の安全を確保したかったのだろう。

アリス自身も、依然パチュリーに対していい感情は浮かばないが、彼女の魔理沙を思う気持ちだけは評価できる。ただ、この問いは逆に答えがはっきりしすぎていて、それ以上の追及が出来ないとも言えた。

(そう、問題は……)

 一番の問題は最後の一つ。アリス自身が我を忘れるほどに感情を爆発させてしまった事である。

彼女はもともと周囲の世界には無関心で、自分が興味を持てる事柄にしか能動的にならないタイプだった。それは人付き合いにおいても例外はなく、関わりを持つのは考えを共有できるごく少数の人物のみである。

事実、彼女はもともと魔理沙にそれほど興味が有った訳ではなかった。

二人が出会ったのは半年ほど前、雪と桜が一緒に舞っていた日……後に『春雪異変』と呼ばれるようになる事件の時だった。

軽い気持ちから勝負を挑んであっさりと敗北してしまい、それ以降同業者兼好敵手として一緒に居る事が多くなったのだ。

さらについこの間は、幻想郷から失われた満月を取り戻すために二人で協力し、夜の状態を継続させる永夜の術を使って月の民から満月を奪い返すことに成功した。

これが『永夜異変』であり、彼女たち二人の距離がぐっと近くなった原因でもある。しかし……

(そう……どうしてあの時魔理沙を選んだのか、いまだに分からないのよね……)

 きっかけは小さなものであり、その後の過程もそれほど大きな意味は無かった。ではどうして自分は異変解決のパートナーとして魔理沙を選び、今もこうして心痛めるほどに思ってしまっているのか。アリスにはそれが分からなかった。

 

 

3.戦闘、アリスvsパチュリー

Shot(魔弾)Sixth(六式)High(強撃)……はっ!」

「一列横隊、対空弾幕、十秒展開!」

パチュリーの手から放たれた水の弾がアリスへ向かって殺到する。対するアリスは左右に展開した人形たちに弾幕を形成させ、それを迎撃した。大量の魔力がぶつかり合い、魔法の森上空に多数の爆炎が花開く。

パチュリーはそれらに隠れるように位置取ると、再び本を開いてアリスへと向け、爆炎越しに火球を放った。

Fire(火行)Hibiscus(南国の花)Summer Red(夏の赤色)……っ!」

「っ!!……鶴翼陣形、対空弾幕、火線集中!!

 爆炎を突き破って飛来した火球を、アリスはすんでの所で迎撃する。そして再び開いた爆炎の花に目を細めつつ、アリスは上方へと離脱した。はるか下方では、パチュリーが再び爆炎越しの攻撃を放とうとしている。

「そうそう何度も同じ手を……人形無操、近接爆破!」

アリスは傍らに浮遊していた人形のうちの何体かをコントロールから切り離し、真下へと投下した。人形たちはパチュリーの近くまで落下すると爆発を起こし、不意を突かれたパチュリーはあわてて障壁を張りながら離脱する。アリスはそれを追って降下すると、さらに攻撃を加えた。

「突撃っ!」

 突撃槍をもった人形たちがパチュリーめがけて突進する。パチュリーは障壁の展開が間に合わず、身を縮めてそれを受けきった。

衣服が切り裂かれ、髪が数本虚空に散ってゆく。血がにじむ傷口を即座に治癒させつつ、パチュリーは急降下で退避した。

「っ……Metal(金行)……」

パチュリーは痛みを堪えながら詠唱をはじめ、さらに袖口から一本の小瓶を取り出すと封を開けて中身を辺りにふりまいた。瓶の中からは白い粉のようなものが吐き出され、周囲に拡散する。

Fallen Leaves(踊る木の葉)Autumn Edge(秋の刃)……」

 パチュリーの手元に何枚もの鋭い刃が具現化する。さらに周囲の白い粉が刃へと集中し、表面に付着した。パチュリーは詠唱を続けつつ、刃を携えた右手を大きく振りかぶる。

Full Burst(出力全開)!」

 パチュリーが詠唱を終え、アリスへ向けて右腕を振う。刃は放射状に広がりながら高速で飛翔し、そのうちの一枚がアリスへの直撃コースを取った。

「その程度で……」

 速度と弾数からして躱しきるのは容易ではないが、いかに速くとも自分に向かって一直線に飛んでくる物を見きれないアリスでは無い。アリスは障壁を張った片手で刃をはじき返すと、即座に人形たちを呼び出して陣形をくみ上げた。

しかし、不意に体を走り抜けた感覚に任せ、アリスは人形たちの陣形を解いて周囲に散開させる。瞬間、散開した人形たちの殆どが、左右からアリスに向けて飛来した刃に貫かれて爆散していた。

「これは……」

アリスが目を凝らして見ると、虚空に消えていく刃の一枚一枚に、そして先程刃をはじいた自分の手にも、粒子の細かい白い粉が付着していた。即座にその粉を振り払い、アリスはパチュリーから距離を取る。

「着弾時の摩擦によって発生する静電気を利用した軌道変更……こんな芸当が……」

東洋(とうよう)魔術(まじゅつ)馬鹿(ばか)にしない(ほう)がいいわよWater(水行)Anti Fall(逆しまの滝)Winter Element(冬の精霊),Delay(遅延)…………None Directional Laser(輻射の迷子放出による光増幅)!!

 パチュリーの詠唱に合わせて四つの光球が彼女を取り囲むように出現し、四方にレーザーを照射しながら回転し始めた。

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください