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京阪中之島線の秘めたる大志

━━3.開業までの経緯━━





■京阪中之島線の経緯とスキーム

 京阪中之島線の計画には前史があるはずだが、京阪が自ら計画の萌芽と認めているのは、平成元(1989)年 5月運輸政策審議会答申第10号「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」において、「2005年までに整備に着手することが適当である路線」とされたことである。ちなみに、当時の終着駅は玉江橋と仮称されていた。

 時あたかもバブル好況の真っ最中で、しかも片福連絡線(片町線と福知山線を接続する鉄道/現在のJR東西線)が既に着工されていた時期にあたるから、京阪としても現状に安住しているわけにはいかなかったと推測される。とはいえ、京阪が単独で取り組むには大きすぎるプロジェクトであり、また経済情勢が激変したこともあり、計画の具体化には時間を要することになった。

 平成11(1999)年 4月には運輸省(当時)の都市鉄道調査対象路線となり、中之島線の整備効果などの調査が始まった。翌平成12(2000)年 2月には中之島新線協議会が発足、同年 8月運輸政策審議会答申第19号「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策について」に上下分離方式による鉄道整備が盛りこまれ、計画が具体化に向かって動き始める。

 ここで、中之島線に適用されたのは償還型上下分離方式である。上下分離方式そのものはJR東西線でも先例があり(上:JR西日本/下:関西高速鉄道株式会社)、「下」の会社が初期投資を償還するという考え方まで同じである。ではどこが異なるかというと、中之島線の「下」、即ち中之島線の建設・インフラ保有・初期投資償還を担う中之島高速鉄道株式会社に対しては、地下鉄補助なみの補助が導入されるのである。既往の上下分離方式は名目的なものにすぎず、この新しい方式によってようやく実質的な上下分離方式が実現したといえる。ただし、新方式を「償還型」と表現するものだから、名実が一致しているとはいえないのだが……。

 具体的な金額が詳細に公開されていないが、補助対象事業費のうち国が25.2%、自治体が28.0%を補助し、自治体はさらに事業費10%相当の出資を行うというから、実に手厚い(自治体の出資金・補助金負担割合は大阪府1:大阪市2)。中之島高速鉄道坂本社長が「現行の事業スキームでなければ実現しなかった」(参考文献(06))と発言しているのは、中之島線事業の実態と本質を示すものであろう。

概略図
京阪中之島線概略図




■開業まで

 スキームが決まってからはまさにとんとん拍子、平成13(2001)年 7月には中之島高速鉄道株式会社が設立され、同年11月に鉄道事業許可、翌平成14(2002)年12月に都市計画決定告示と工事施工認可取得と進み、平成15(2003)年 5月に起工式が行われた。開業は平成20(2008)年10月19日だから、短い区間とはいえ相当な高速施工である。

 ところで、中之島線は運輸政策審議会答申第10号で「2005年までに整備に着手することが適当」とされた路線だが、答申の刻限を守ったという観点からすれば、優良と目されたプロジェクトだったといえるだろう。中之島線と比べ対照的なのは、同ランクの長堀鶴見緑地線大正−鶴町間延伸などで、現在に至っても具体化する気配がないのである。

 また、中之島線建設工事の間、平成16(2004)年10月に近畿地方交通審議会答申第 8号「近畿圏における望ましい交通のあり方について」が出されており、中之島線については北港テクノポート線に接続する新桜島への延伸が望ましいとうたわれているから、さらに遠大なる計画が擬せられたことになる。

 もっとも、この答申には実現性の裏づけがあるとはいえない。現在の中之島線にしても、計画のオーソライズから具体化まで十年以上の時(運輸政策審議会の答申では第10号から第19号まで)を経なければならなかった。中之島駅終端のシールド面板は、将来の構想を示唆するものにすぎず、延伸計画を担保しているわけではないのだ。もし仮に将来の延伸があるならば、その時にはまったく別のスキームが組まれなければなるまい。

 それにしても、中之島線の計画が具体化したからこそ、さらなる延伸計画が存在しうるわけで、その意味における中之島線の重みは決して小さくない。大阪市による北港テクノポート線計画が停頓している今日、もう一筋のアプローチが残されていることは、選択の可能性を広げるものといえよう。





■以上に関連する新たな動き

 平成21(2009)年 9月10日付産経新聞記事によれば、大阪府橋下知事はWTCへの大阪府庁移転に関連し、JR桜島線をWTCまで延伸する計画の具体化を正式表明する意向を示したそうである。

 橋下知事(というより大阪府)の意向はわからないでもないが、この計画では運輸政策審議会答申第10号とも近畿地方交通審議会答申第 8号とも整合しない。より年次の新しい近畿地方交通審議会答申第 8号では大阪市北港テクノポート線(コスモスクエア−新桜島間)が事業中区間とされているから、きわめて競合的な路線にならざるをえない。単純に利用者を奪い合うというだけではなく、各路線の目的からして競合している。

トレードセンター
WTCビルとニュートラム(以前の表紙写真再掲)


 そもそも、WTCのアクセスに関しては現状でもニュートラムがあり、ニュートラムは両端で中央線・四つ橋線に接続する。ニュートラムの輸送力では不足だとしても、だからといって川向こうからJR桜島線を引っ張ってくるというのは、飛躍が大きいといわざるをえない。こんな場合、後発の計画が無理筋になりやすいのだが、現実の推移はどうなるであろうか。





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