このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





富山市都市計画道路綾田北代線八田橋架替
——富山ライトレール併用軌道区間複線化への準備——





■富山ライトレール十周年

 JR西日本富山港線の営業を継承し、起点側一部区間を併用軌道に付け替えたうえで、富山ライトレールが運行開始したのは、平成18(2006)年 4月29日である。それから十年経ち、地方鉄道経営再建事例が他地域でも続くなかでの比較において、富山ライトレールは大きな成功をおさめていると理解できる。

 ほんらい筆者は、ただいま在富山という地の利を生かし、富山ライトレールのレビュー記事を書くべきなのであろう。ところが、富山ライトレールに関しては、学術論文レベルの高度なものを含め文献が多数存在し、今さら筆者が書き加えられる点が残されているのかどうか。一矢を試すつもりはあるが、はてさて……。

 ともあれ、富山ライトレール開業十周年である。

八田橋
八田橋
富山ライトレール八田橋
上:富山駅側から撮影  下:奥田中学校側から撮影(複線化を予定した分岐器が見える)
平成28(2016)年撮影(架替工事開始前時点)


 富山ライトレールの併用軌道区間には、いたち川に架かる八田橋がある。橋は撮影名所になりやすいものだが、八田橋で撮影するのは苦しい。下路ガーダー橋でアングルが極端に限られるため、絵になる撮り方が難しいのだ。

 その八田橋、橋梁構造としては実に興味深い。もともとの八田橋は昭和30(1955)年の架設で、設計活荷重は13ton と現代の交通にはそぐわない。橋長約30mと短い割に、中間橋脚が二基もある(※)。富山ライトレール開業にあたっては、従来の八田橋中央部を切り欠き、新たに別の鋼桁(中間に橋脚を有さないワンスパンもの)を架ける、という工夫が施されている。

  ※従前の木橋の基礎構造をそのまま流用したという説がある。

 かくも大胆な方策が採れたのは、富山ライトレール併用軌道区間は、鉄道事業ではなく都市計画道路事業にて実施されたからだろう。八田橋を含む道路は、富山市都市計画道路綾田北代(あいでんきただい)線に指定されているが、富山ライトレール併用軌道部分は「富山市都市計画道路富山ライトレール線」と独立した道路に指定されている。橋梁構造が独立しているというのは、この経緯からすれば当然ともいえそうだ。

八田橋
富山ライトレール八田橋  富山駅側から撮影
平成28(2016)年撮影(架替工事開始後時点)






■富山ライトレール併用軌道区間の複線化

 富山ライトレール併用軌道区間は、成功の礎であるとともに、現状では定時運行・増発を妨げるボトルネックとなっている。そこで富山市と富山ライトレールは、永楽町(新設・仮称・八田橋東詰)−奥田中学校前間約 300mの複線化を実施する。

 八田橋道路部分の架替工事は、富山ライトレール併用軌道区間複線化の準備作業である。すでに経年60年以上の老朽橋で、(スパンの短さからは信じがたいことに)ゲルバー構造でヒンジ部の損傷が進行している状況もあり、架替が決定されたという。

八田橋
富山ライトレール八田橋  上の写真の場所を反対側から撮影
平成28(2016)年撮影(架替工事開始後時点)


 工事の方法は単純だ。富山ライトレールから見て山側車線を通行止めにし、山側の架替を先行させる。新橋梁完成後は山側新橋梁に車線を振り、海側車線を通行止めにして残る海側の架替を実施する。……という段取りが組まれているようだ。

 通常の道路橋架替工事であれば、難しいことは何もないだろう。綾田北代線の場合は、振られた車線が富山ライトレール併用軌道を跨がざるをえないから、途端に難しくなる。前掲の写真二葉のように車線に赤緑の色分けを施し、ポールを立て、進行方向を明示している。慣れないドライバーは面食らう表示といえる。

八田橋
八田橋
富山ライトレール八田橋  上下とも奥田中学校側から撮影
平成28(2016)年撮影(架替工事開始後時点)


 現在の山側車線では、列車の接近に伴い自動車の進行が抑止される状況もある。前掲の写真二葉のように、自動車が止められた状況で富山ライトレール列車は進む。安全のため当然といえば当然の措置ではあるが、自動車交通に新たな負荷がかかるのは間違いない。永楽町を先頭とする渋滞は、特に午前中の時間帯で、確実に長くなっている。

 傍目に見ていると、苦情殺到にならないのが不思議なくらいである。富山ライトレール事業に対する理解がよほど深いのか、それとも全く無関心ゆえに苦情の持ちようがないのか。……どちらとも解釈できる状況ではある。

 富山ライトレールに関する記事は多くとも、富山市都市計画道路綾田北代線八田橋架替工事、およびこれに伴う車線変更措置を伝える記事は少ない。現時点は特に変則の状況と見受け、これを記録するのは筆者の義務と思い、敢えてまとめてみた。





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参考文献

  道路構造物ジャーナルNETインタビューより
(01)「ライトレールをはさむ橋梁を慎重に施工 〜〜 富山市 八田橋架け替えは総額14億円」(富山市建設部建設技術管理監 植野芳彦)

  富山市ホームページより
(02)「11 富山港線軌道複線化事業の推進について」
(03)「18 富山港線軌道複線化事業の推進について」
(04)「21 街路事業の促進について」





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