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全身義体外観

  義体技術、ロボット技術の進歩によって、外観は常体と全く同じ姿を再現できるようになりました。そのため、衣服を着用すれば、外見上は全身義体常体を区別することは困難です。しかし、本格的な検査になると、義体を分解する必要があるため、頭部、手、足なども着脱可能な構造になっていますし、義体の胴部についてもモーター部分には排熱処理や検査のために利用するハッチが存在しますが、継ぎ目については、外観から分からないように特殊なコーティングが施されています。
  また、義体の各所にコンピューターの接続端子や、検査用の端子、内蔵コンセントプラグなどを覆うカバーがついていますが、これらは使用頻度が高いため、コーティングは施されていません。そのため、裸の状態になれば常体との区別は可能です。ただ、自分の身体が義体と知られるのを嫌がる義体ユーザーも多いため、カバーをカムフラージュするためのシールも売られていています。
  参考までに下記に、代表的なイソジマ電工製の標準義体(展示用や、事故に遭い緊急に義体化手術が必要な患者に使用される、仮の義体)の外観及び内部構造を図解します。
イソジマ電工製標準義体の外観及び内部構造図解



頭部

脳ケース、サポートコンピュータ、
目、耳、発声スピーカー 頭部冷却機構(人工発汗)、鼻(飾り)、舌(飾り)、人工筋肉(表情)
頸部

サポートコンピューター接続端子
肩部

駆動モーター(腕)、検査用端子、整備用ハッチ 腕:人工筋肉(肘)、人工筋肉(手)
腕部

人工筋肉(肘)、人工筋肉(手)
胸部

生命維持装置、補助生命維持装置、擬似呼吸装置、 酸素タンク、ブドウ糖溶液タンク、予備バッテリー

★生命維持装置は、血液ポンプ、空気ポンプ、電合成リサイク ル機構、ガス交換機構、酸素収集機構、栄養カプセル受容機構、 血液成分調整機構、老廃物除去フィルター等の集合体。

★補助生命維持装置は、血液ポンプ、電合成リサイクル機構、ガス交換 機構、血液成分調整機構、老廃物除去フィルターの集合体

(電合成 リサイクルの不足分の酸素とブドウ糖は、タンクに格納されているも のを使用)
腹部

メインバッテリー、合成血液収納容器、水収納容器 腰:コンセントプラグ(入)、コンセント(出)
腰部

コンセントプラグ(入)、コンセント(出)


駆動モーター(脚)、人工性器、整備用ハッチ 脚:人工筋肉(膝)、人工筋肉(足)
脚部

人工筋肉(膝)、人工筋肉(足)




身長・体重

  全身義体は初期のものに較べてだいぶ軽量化されたとはいえ、常体の数十倍の高出力を出すことを前提に設計されているため、大人用のもので110kg〜140kg程度とまだまだ常体と較べてかなり重いのが現状です。年少用については高出力を必要としないため、骨格などがかなり軽量化され50〜60kg程度の体重を実現しています。
  身長は、義体の規格の関係から5cm刻みのサイズで存在します。義体ユーザーの常体時代の身長になるべく近いサイズの義体を使用することとなっています。もちろん、オーダーメイドで常体時代と全く同一サイズの義体を用意することも可能ですが、非常に高額になってしまうため使用するユーザーはほとんどいないのが現状です。


生命維持装置
  
  生体部分である脳を維持するための装置で、常体における心臓、肺、肝臓、腎臓などといった各種臓器の機能を代行する役割を果たし、三年に一回の入院検査時以外は常に作動しています。
  ここが故障してしまうと、義体ユーザーが死に至るため、通常使用する生命維持装置とは別に、最低限脳を数日間生かす機能を持つ補助生命維持装置を備えることが義務付けられていて、万が一の場合でも義体ユーザーが即死に至らないよう考慮されています。


  
電合成リサイクル機構

  全身義体となった場合でも、生体部分である脳を維持するためには約100g/日程度のブドウ糖が必要となりますが、義体メーカーのイソジマ電工は世界に先駆けて、二酸化炭素と水から電力によってブドウ糖を合成する電合成リサイクル機能を義体に応用することに成功しました。具体的には脳から生成された二酸化炭素と水を利用して、ブドウ糖を再合成するシステムとなります。もちろん100%完全リサイクルとはいかないものの、この電合成リサイクル機能を利用したイソジマ型義体では、栄養カプセル、呼吸量ともに従来型の義体に比べ数分の一で済み、また栄養の消化システム、呼吸システムを簡素化、小型化できたために義体の軽量化にも大きく貢献しています。


サポートコンピューター

  義体の制御装置です。脳と直結していて、義体の受けたさまざまな刺激を脳が受け取りやすい信号に変換する、いわば義体の電子神経系と脳の間を取り持つ翻訳機のような役割を果たしています。それ以外にも、義体の電源の入出力、 義体の各種機能の設定変更、なんらかの異常が義体に発生した場合に義体の状況を脳に報告する機能、通常のコンピューターとしての機能など、一つでさまざまな仕事をこなす、義体の中枢です。義体ユーザーが脳から直接操作できる他、接続端子を利用して、外部端末から操作することも可能です。ただ、安全性を考えサポートコンピューターへのアクセスにはパスワードが必要となっていて、パスワードを持たない者が外部端末を介して義体を不正に操作することができないようにしています。パスワードは担当医師、担当ケアサポーター、義体ユーザー本人の三者にしか明かされていません。
  ちなみに、検査時などに必要に迫られて、サポートコンピューターと脳の接続を切り離すと、義体ユーザーは五感の全てを失うことになります。俗に感覚遮断と呼ばれるこの現象を義体ユーザーはとても恐れています。


食事

  全身義体になった場合、常体のように食事をする機能は失われます。基本的には、脳を生かすために必要最低限の栄養素をとるだけです。イソジマ型義体の場合は脳の維持に大量に必要になるブドウ糖の大半は電合成リサイクルによって体内で生成されるため、その不足分と、それ以外の栄養素を含んだ、栄養カプセルを一日に一〜ニ回程度摂取することになります。食事をする機能がなくなったのとあわせて、味覚も失われています。技術的には義舌で味覚を再現することは困難なことではありませんが、食事の機能を失われているにもかかわらず、義体ユーザーが無理に食事をとって、義体の故障を招くという事故が頻発したために、現在ではカットされています。その代わり、サポートコンピューターに提供される仮想空間上で擬似的な食事体験を再現する研究が義体メーカー各社で進められているようです。


身体感覚

  サポートコンピューターを介して脳に送り込まれる義体の身体感覚は、生身の人間の五感をできる限り再現するようにはしていますが、一部感覚については設定次第では常体の人間の数〜数十倍の能力を持つ事が可能。また、一部感覚については常体にくらべはるかに劣るか、または全く失われてしまっているものもあります。これらの身体感覚は、サポートコンピューターを通じて能力を調整することが可能ですが、設定には特殊なパスワードが必要なため、許可がない限り、義体ユーザーが自由に変えることはできません。

1.視覚
  義体の高性能義眼は設定によって0.01〜5.0程度、特に脳改造を伴うギガテックス型義体の場合には、常体の物理的限界を超えた視力10.0程度まで認識が可能となっていますが、特殊な職業につかない限りは常体の視力の範囲内に納まる設定にするよう義務づけられています。
  また、暗視能力や、虹彩の調節機能については常体の能力に優り、暗闇でも物をはっきり視認でき、また急激な明るさの変化にも自由に対応できるという長所があります。その他、常体と異なるところとしては、また、サポートコンピューターからの情報を映すスクリーンにもなっていて、義体ユーザーが外部端末を使用しなくてもサポートコンピューターを利用しやすくしています。

2.聴覚
  ほぼ常人程度の能力を実現しています。脳改造を伴うギガテックス型義体の場合、設定次第では常体の聞こえない範囲の音まで聴くことができます。

3.嗅覚
  鼻はありますが、飾りとしての機能しかありません。嗅覚も存在しません。身体を害する恐れのある異臭(ガス漏れなど)についてはセンサーが感知して、サポートコンピューターから脳にデータとして送信されます。

4.味覚
  舌はありますが、ほぼ飾りです。よって味覚は存在しません。

5.触覚
  触覚については常体同様に再現されているものもあれば、そうでないものもあります。
  手については、細かい動きが要求される関係で、後述の温度変化も含めて、ほぼ生身の肉体同様の感覚が存在しますが、身体の他の部位については、消費電力の関係から圧迫感など必要最低限の触覚を残して、通常設定ではカットされています。
  痛覚については、義体を義体ユーザーに意識的に守ってもらうという観点から、そのまま再現しています。ただし、それは瞬間的なもので、生身の肉体のように継続的に痛みが続くわけではありません。
  温度変化については、義体が許容する一定範囲内の温度であれば、サポートコンピューターから脳に外気温などの情報がデータとして送信されるだけで、体感温度という形で実感することはありません。ただ、あまりにも激しい温度刺激を受けた場合については、痛覚の場合と同様、義体を義体ユーザーに意識的に守ってもらうという観点から、刺激が脳に流れるようになっています。


発声

  常体のように声帯を震わせて発声するわけではなく、生身の時代の声を再現した合成音を喉の奥の小型のスピーカーから出します。発声時には口も連動する仕組みになっていますが、意識的に口を動かさなくても、発声することは可能です。
  声の高低については、常体よりも、かなり幅をもって出すことが可能です。声質はサポートコンピューターで設定します。


発汗 

  効率よく身体を冷却するためには、汗を流す機能があることは理想的なのですが、身体中に人工的な汗腺を張り巡らして、なおかつそれを維持するのはかなりの高コストになってしまうため、一部の特殊な義体以外は頭部を除いて発汗機能はありません。頭部については、脳を守る必要上、温度調節機構でも対応できないほど温度が上がってしまった場合に備えて、簡易的ではありますが人工的に汗を流す仕組みが備わっています。
  胴体部分は、排熱により体温が上がりすぎた場合、強制的に義体の動作停止(オーバーヒート)になるか、体内のモーターの整備用のハッチを開放することで体温を下げます。


体温

  脳については、透明セラミックの二層構造の間に真空層を挟んだ特殊な断熱材で覆われ、温度調節機能によって平熱を維持するようになっています。しかし義体については、体温を調節する機能もなく、その必要もないため、平熱という概念はありません。排熱や電熱によって身体に擬似的な体温を作り出す機能はありますが、それはあくまでも擬似的なもので、逆に体温が上がりすぎた場合に、その体温を下げる手段は自然冷却しかないのが現状です。


性感

  全身義体は生殖能力を喪失しているため、本来の意味での性行為は不要です。そのため、初期の義体には性行為のための機能はついていませんでした。しかし、義体化した場合、脳に極度のストレスを受けることが分かったため、ストレス解消に有効な手段として現在では義体に擬似的な生殖器をつけることを義務づけられています。常体と同様に性行為によって快感を得ることも可能です。


呼吸

  全身義体の場合でも、生体部分を維持するため呼吸は必要ですが、呼吸数は通常型の全身義体では一分間に六回程度、電合成リサイクルを実現したいるイソジマ型義体の場合では一分間に二回程度と、常体に較べるとはるかに少ない回数ですみます。このため、イソジマ型義体ユーザーの場合は特に、余り呼吸をしているという実感がないようです。


血液

  全身義体の場合は体内での造血機能が失われているため、人工的に合成された合成血液を定期検査ごとに交換する必要があります。


義体の動力

  義体を制御するサポートコンピューターをはじめ、生命維持装置、電子神経系、義体各部の動作、脳にエネルギーを補給する電合成リサイクル機能などは全て電気エネルギーで賄っているいため、義体を作動させるには義体に定期的に電力を補充する必要があります。一般生活用の義体の場合は、義体内に装備されたコンセントプラグを家庭用の110V電源に差込むことにより、義体内のバッテリーに電源を蓄えます。バッテリー満状態で、身体の動かし方にもよりますが2〜3日の連続動作が可能です。
  義体には電力を入力するためのコンセントの他に、電力を出力するための端子も装備されていて、義体間での電力のやりとりも可能となっています。
  義体の駆動については、モーターと人工筋肉を併用し、おおまかな四肢の動きをモーターが、細かい動きは人工筋肉が、それぞれ担当しています。


節電機能

  義体にはさまざまな節電機能がついていて、電力がなくなることで、生体部分にエネルギーが供給されず、義体ユーザーが死に至ることを防いでいます。バッテリーの残量が50パーセントを切ると節電モードが機能して、義体の体温調節機能や、性感信号など、義体の生命維持に必要のない機能については原則全てカットされます。バッテリー残量が30パーセントをきると、義体の出力セーブ機構が働き、一定以上の力が出せないようになります。バッテリー残量がなくなると、補助バッテリーに切り替わるため、この状態でも一週間程度は義体ユーザーが死ぬことはないですが、生命維持装置、電合成機能と視覚、聴覚などのわずかな感覚を残して義体の全機能が停止します。つまり義体の主電源を落とすことと同じ状態になります。義体が万が一この状態になった場合には、サポートコンピューターから義体メーカーに自動的に救援メールを送る仕組みになっています。


義体出力

  義体の出力は常体と同程度から最大150馬力まで出すことが可能ですが、通常は、ある一定以上の出力が出ないように義体にリミッターがついています。サポートコンピューターでリミッターを解除することも可能ですが、解除のためには特殊なパスワードが必要で、義体ユーザー本人の意思で解除することはできません。
  特殊な職についている義体ユーザーについてのみ、資格を得た上で、リミッター解除のパスワードが公開されます。
  なお、年少者については、年少用義体のまま、義体の特殊技能を利用する職場に入ることはないため、常体と同程度以上の出力が出ないものになっています。


定期検査

  義体は精密機器のため、定期的に検診し、誤作動による事故を防ぐ必要があります。また、生体部分を生かすために、老廃物の除去、水、血液、各種体液の補給といったことも行わなくてはなりません。また、頭髪をはじめとする体毛や、破損したり傷ついたりした皮膚も、自然に伸びたり治癒したりすることはないので、定期検査時に細かい補修をしています。このため、義体ユーザーは月に一回の定期検査を、義体ユーザー受け入れ施設のある病院で行うことを義務付けています。定期検査は通常、数時間から半日程度で終わります。


入院検査

  義体には常に最先端技術を使用することとなっているため、三年に一回は義体の大掛かりな修繕を行うことが義務づけられています。具体的には、義体を解体し、主要部品や生命維持装置を新品に交換、各所の磨耗部分の交換、サポートコンピューターのOSの最新バージョンへの書き換えや、必要によってはメモリーの増設などを行います。入院検査は通常24時間から48時間程度かかります。


自己メンテナンス

  義体使用歴が三年以上のユーザーについては、水や体液の補充などの簡単な作業については自己メンテナンスが認められています。



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