このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

3.交尾

他のトンボと同じようにオスの腹部の先端にメスの頭部を付けて、メスの頭部をオスの胸部へと付けるいわゆるハート型になります。

ヒヌマの交尾—ペアリング—は午前中に行われます。またうしろでふれますが、彼らは夕方”ねぐら”に集って睡眠をとります。翌朝に効率よく交尾行動に移るために集うのだ、という見解が一般に支持されています。
メスは交尾後湿地内のヨシなどに止まり、植物の組織内に2〜3個の卵を産み付けます。一箇所の産卵に要する時間は10〜20秒だそうで、産卵場所の選択は腹部を振ることによって(!)決めます(すごいセンサーですね)。
1産卵位置は水面上2〜5cmくらいの所が多いが、25cmの所に産み付けられたという記録もあります。干潮の差が激しい汽水域・河口部付近において、水面の基準があいまいのため、位置に関する見識は現段階で不明、ということにさせてください。
泥の上の堆積物にも産卵することがあるそうで、水の中に腹を突っ込むこともあるので腹部の先端が汚れているメスもいます。
※ちなみに左の写真が、”成熟メス”の全貌であります。 まるで様子が違う—別種に見える—こと以外に、(以下推測)”未熟”とは形容されたもののオレンジ色のメスにも生殖能力があることがお分かりいただけると思います。もうちょっと言えば、交尾自体に成熟度はさほど関係なく、交尾後、受精卵を産卵可能な状態まで発生させる経過で体色が変化する、のかもしれません。
この写真のオスは、直前までペアリングをしていました。観察していると、何度かこのように腹部を曲げるのです。おや、これはどこかで見た覚えが...
上の交尾写真をご覧いただくと、メスの腹部はオスの翅の生え際というより、後脚のすぐうしろ—腹部第二節—にくっついていることがお分かりいただけると思います。メスはここでオスの精子を受け取っているのです。
それで、オスの腹部先端はメスの襟首—頭部と胸部の間—とくっついています。本来は、オスの精子はここで生産されるのです。
ですから、オスは交尾する前に精子を脚の後ろの部分に移す必要が生じます。この行動は、そのまんま”移精”と呼ばれています。
どこでこの現象を見たかというと、ある月刊誌で。ちょうどこのことが話題になっていたのです。

報告では遅くても数10秒とあるのですが、この個体の”移精”はほんの一瞬でしたから、私は観察を誤っている可能性が高いです...

なんというか・・・ここでは、交尾写真を見て”オスはどこで精子作ってんだろうか”というナゾを”移精”という現象で解決できることを知っていただけば...
カンペキな”移精”を観察できたら、また書き換えます。

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参考文献

八木 孝彦、2009.月刊むし(457):47-48 交尾後に移精するヒヌマイトトンボ

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