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コラム12
基礎有機化学62

<「だまし舟」転位>
  カルボカチオン の転位反応はたくさんあるが、その代表的なものが Wagner-Meerwein転位 である。この反応は、camphene hydrochloride(1)が酸触媒下骨格 転位 をおこして、isobornyl chloride(2)を生成する反応から見出されたものである。一見するととんでもない複雑な 置換基 の変化を起こしているように見えるが、実際にはちょうど、目を閉じている間に「だまし舟」の帆が艫に変化するように、分子の骨格の入れ替えが起きているので、転位反応はただ一回の 1,2-シフト で説明できる。

 この転位反応でかご状の環状炭素骨格を次々に1,2-シフトしてより安定な構造へと変換することができる。極端な例では、 ダイヤモンド の骨格構造をもつ アダマンタン構造4-2 参照)やその同族体は熱力学的に非常に安定であるため、同じ分子式をもつ似ても似つかない構造の分子から強酸性下、強制的に転位を起こさせて合成することもできるのである。


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