このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



おもしろ化合物 第7話:「三角酸、四角酸」



NIFTY SERVE 旧 FCHEM 10番【有機】会議室 #3000(95/4/27)より

 実はまだ続いている「面白化合物」シリーズです(^^;;。

 有機合成化学協会誌の4月号にスクアリン酸の話があったので(目次は16番会議室にアップしました)、以前ちょっと一連の化合物を調べたときの資料をひっぱりだしてきました。

 オキソカーボン酸といわれる一群の化合物がありまして、上の二つのように エンジオール の両端を カルボニル の鎖で環状につないだ構造をしています。環の大きさは3〜7が知られていて(私の知る限りですが(^^;)、五角酸がクロコン酸、六角酸がロディゾン酸、七角酸がヘプタゴン酸とよばれています。
 で、なんでこれが面白いかといいますと、これらの酸から プロトン が2個脱離したジ アニオン が非常に安定で、そのため エノール としては異常に強い酸性を示すのです。 共鳴 構造を描いてみるとわかるように、このジアニオンはすべてのカルボニル上に電荷が分散可能で、しかも理論計算から環は 芳香族性 をもっていることが示されています。すなわち二重に安定化されているわけですね。ということで、四角酸の場合、 pKa 値は一段目が約1、2段目が2.2と、硫酸に匹敵する強さをもっています。
  環状共鳴構造 を有するので、塩類は特有の色をもち、クロコン酸は黄色、ロディゾン酸は赤色のギリシャ語に由来して命名された名前です。このうち、クロコン酸(五角酸)のカリウム塩は、早くも1825年に単離されており、同年に単離された ベンゼン と並んでもっとも歴史をもった 芳香族 分子といわれています。

 文献:S.Cohen, J.R.Lacher and J.D.Park,J. Am. Chem. Soc.,81, 3480 (1959).

junk (JAH00636) 川端 潤     

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