このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
二環性化合物に
四置換オレフィン
を組み込む方法は何通りか考えられますが、
縮環
部に
エンド型
にオレフィンがはいった形、たとえば 1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalene(bicyclo[4.4.0]dec-1(6)-ene)みたいなのがすぐ思い浮かびますね。この場合両側の環は二重結合に対して
シス
の関係に当然あります。ではこれを
トランス
にしてやったらどうなるか、というのが今回の化合物なのです。頭の中がこんがらがりますから図にしてみましょう(^^;。
ただし、さすがに
6-6員環
では不自由なので少し環を大きくします。
10-12員環に拡大したのが図の化合物(bicyclo[10.8.0]eicos-1(12)-ene)で、Aのほうが普通のシス体、Bが問題のトランス体になっているのがおわかりかと思います。こんな化合物、考えつくだけでも大したものですが、しかしどうやったら
立体選択的
につくれるか、と考えると頭がいたくなりますね(^^;。
実際の合成は、Aのほうをつくっておいてから
光異性化
でBを得ています(なあんだ(笑))。ところが光反応ではうまいこと A:B = 2.4:1 の混合物になるのですが、それを分離するのが難しいのです。
クロマトグラフィー
などでは分離できず、結局、
ジクロロカルベン
と反応させるとシス体だけが
付加
物を生成することを利用して分離に成功しました。なぜトランス体は反応しないかというと、実際はトランス体はCのような構造をしているのですね。つまり二重結合の上下を
アルキル鎖
がマスクしている形のために、反応性が非常に低下しているわけです。実際、トランス体は
接触還元
にも抵抗することが確かめられています。
この形のトランスからまりオレフィンは、[m,n]betweenanene と命名されています(m,nは二重結合を除いた炭素数)。まさにCの通り、うまいこと名づけたものです。
さて、この betweenanene ですが、分子全体がねじれているように見えます。このたすきをひとつはずした形に相当するトランス シクロオレフィン では、たとえばE-cyclooctene(安定に存在する最小のトランス環状オレフィン)は 光学異性体 をもつことが知られています。
同じように、「からまりオレフィン」も 光学分割 できそうですね。原報には合成したのはちゃんと (±)-体 と書かれています(^^)。
ref.: M.Nakazaki, K.Yamamoto and J.Yanagi,Chem.Commun.,1977, 346.
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |