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albatrosseneという雄大な名前の炭化水素が合成されました。さて、アホウドリのように悠然と羽ばたくことはできるかな?
ナフタレン のすべての水素を ベンゼン 環で置き換えた化合物がこのoctaphenylnaphthaleneです。これはまだアホウドリではないのですが(^^;、これが以後の化合物の基本をなすユニットといえます。ちなみにこの化合物は1,3-diphenylacetoneとbenzil(dibenzoyl)を原料として容易に合成することができます。いかにも窮屈そうで、ベンゼン環は自由に回転できるのだろうかと心配ですが、まだまだこれからです(笑)。
このoctaphenylnaphthaleneを二つつないだ形がalbatrosseneで、二つのユニットが大きな翼に見立てられているのでしょう。実際の分子の形も両ユニットのすきまが裂け目のようになっているそうです。
合成法は意外と簡単で、benzene-1,3-diacetic acidから出発して、
酸クロリド
にしたあと
Friedel-Crafts
アシル化
でベンゼンにくっつけ、両側の
ベンジル位
を酸化して
テトラケトン
にします。この両側の
αジケトン
を1,3-diphenylacetoneの
活性メチレン
と
アルドール縮合
するとテトラフェニルシクロペンタジエノン体が得られます。これをtetraphenylanthranilic acidから調製した
ジアゾニウムイオン
経由の
ベンザイン
(でしょうね)と
Diels-Alder付加
、脱カルボニルで目的のalbatrosseneができます。
通算収率
は3%です。
で、合成した結晶について
X線結晶解析
が行われ、分子のパッキングのようすなどが掲載されています。
ところで、気になるのはベンゼン環の回転です。13C-
NMR
では70本を超えるシグナルが観測され、
コンホーマー
間の変換が遅いことがわかります(完全自由回転だと炭素は42種類)。これはさもありなんですが驚くべきは次の化合物です。
アホウドリというよりは雪の結晶を思わせるこの化合物、ベンゼン環ばかりからできているので、さながら大きな二重プロペラでしょうか。これも合成されまして、その13C-NMRは18本のシグナルしか観測されないことが示されています。すなわちNMRのタイムスケールではすべてのベンゼン環は自由に回転しているわけです。う〜ん、からまっちゃたりしないんでしょうかね(笑)。ちなみに、真ん中のベンゼン環につながっている三個のベンゼン環をナフタレン環(もちろんすべて フェニル 化されている)に変えた分子も合成され、それでは自由回転が見られないことも示されています。そこまでよくやるな、という気もしますが(^^;、ナフタレン環はやはりベンゼン環よりも剛直な面があるようですね。
ref.:L.Tong,D.M.Ho,N.J.Vogelaar,C.E.Schutt and R.A.Pascal,Jr.J.Am.Chem.Soc.,1997,119,7291-7302.
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