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336号 2002128日 

 

事実には反論できない、
本多鴨川市長の任意協議会における発言に応える

 10月25日の第3回合併任意協議会で、本多鴨川市長は、議事とは無関係にも関わらず、鴨川市の名誉に関するとして、私の房日新聞への投稿「安房11市町村合併に反対する」を批判する発言をしました。私の投稿に対する批判ならば、堂々と房日新聞に反論を投稿すればよいのですが、なぜしないのでしょうか?鴨川市の名誉のためというのならばなおさらのことです。本多鴨川市長の発言の内容は合併の是非を含めて市民が判断するうえで重要な論点もありますので、批判に答えるということで私の論評を掲載します。
論点1、合併で地方交付税の減額は事実かどうか?

○私の「合併すれば地方交付税は40億から50億円規模で大幅に減ることになる。算定替えの特例措置は、それを先延ばしにしているに過ぎない」との指摘に対して、本多氏は、「明らかに違う」と論難しているのですが、その論拠は示されていません。むしろ、「確かに市町村合併後15年を経過すれば、地方交付税の減少は避けて通れないことになろうというふうに思っております」と、私の指摘を全面的に認めています。どうしてこれで「明らかに違う」という反論になるのか、反論にもなっていません。

本多氏の主張は、15年後には交付税は大幅に減るが、その前に減っても大丈夫なように「税の客体を増やしておけばよい」と主張します。また、「合併は単に歳入面のみをとらえることではなくて、歳入歳出両面から総合的に判断をする必要があるのではないか」と地方交付税が減っても、歳出で80億円削減できるからメリットがあるんだと主張しています。いずれの論も地方交付税が大幅に減額になるという私の指摘を全面的に認めているのです。

○本多氏の主張を具体的に考えてみます。

「税の客体を増やせばいい」という主張について

まず、地方交付税が減っても、10年の間にそれに代わる「税の客体」を増やしておけばいいという論についてですが、合併して、町づくりの基盤整備を整え、社会資本を充実すれば、例えば企業が進出して「税の客体」がふえるという保証はどこにもありません。館山工業団地には進出企業はひとつもありませんが、合併するとそれが増えるとでもいうのでしょうか。それは市町村の合併とは関係の無いことです。

税の客体を増やせといいますが、では、どれだけ増やしたら年額40〜50億円規模の普通交付税の減額分をカバーできるだけの税収となるでしょうか?

税の増収があれば、その75パーセントは普通交付税の配分が減額になるので、実質的な増収は、増収となった分の25パーセントにすぎません。
 安房郡市では平成13年度で普通交付税が190億円ほどでしたが、もし、税収が40億円増えていたとしたら、普通交付税は30億円減ることになるので、実質的には10億円分しか増えないことになります。40〜50億円規模の減収をカバーできるだけの税の増収となると160億円〜200億円規模の増収が必要になるのです。安房11市町村の平成13年度の市町村税は合計で153億円です。市町村税が現在の2倍以上の税収になって、やっと普通交付税40億円の減額分に相当する増収になると見込まれるということです。税収全体を2倍に増やすということは可能でしょうか。交付税が減っても税の客体を増やせばいいという主張は、実際には実現不可能なことを言っているのではないでしょうか。

 むしろ、合併すれば「税の客体」は大幅に減少する事は確実であります。本多氏は、「合併すれば安房で年間80億円の歳出減になる」としていますが、その内容は、市町村職員を400人規模で削減することが中心です。安房地域における雇用状況を一層悪化させ、安房の地域経済はさらに縮小することになります。それでどうやって「税の客体を増やしていく」というのでしょうか。

「合併は歳出を80億円削減できるので財政的にメリット」か?
次に「合併は歳入と歳出の両面から総合的に判断する」という論ですが、市町村財政を考える上では歳入歳出の両面を考えるのは当然です。むしろ歳入面で地方交付税が大幅に減額になる事実を隠して、歳出で80億円削減できるのがメリットだと一方的に宣伝されてきたことがこれまでの問題でした。

○普通交付税の減額の影響は歳入全体を更に減らす。
 普通交付税は、市町村にとってもっとも基幹的な財源です。現実の市町村の事業は、その多くが補助事業で、市町村の実際の負担は、事業費全体の一定の割合です。例えば国の補助事業で市町村が2割5分負担とすれば、市町村は1億円の負担で4億円の事業をしているのです。40〜50億円規模で普通交付税が減少するということは、それだけ補助事業を実施する事ができなくなるので、国庫補助金の減額など、歳入全体の減収にさらに影響することになるのです。この規模がいくらになるのかは、さまざまな要素を考慮しなければならないので予測はかなり難しいですが、相当の規模になるはずです。現に、新潟県加茂市の小池市長は、普通交付税の減額による歳入への影響額は、倍に膨らむという考え方を示しています。(新潟県加茂市の「合併に加わらない」声明)この小池説には検証が必要ですが、もし仮にそうだとすると40〜50億円規模の普通交付税の減額は、歳入全体で80〜100億円規模の減収になるということです。

合併による歳入全体の減額規模がどの程度になるか、また、歳出削減80億というのは机上計算にすぎず、現実にどれだけの削減が可能かを具体的に論議しなければ、わかりません。その結果で判断しなければ差引で財政効果があるとは言い切れません。合併は、財政的にはマイナスであることもありうることです。

○平成17年度以降は、合併した市町村に交付税が優先配分され、合併しないと激減して市町村の存立が危ぶまれる(本多発言)と言うのは本当か?
 国は、地方交付税の交付にあたっては、条件をつけることはできません(地方交付税法)ので、合併を条件に交付税が優先配分されるということはありえないことです。また、合併しないからといって交付税が激減することもありえないことです。市長という立場で、根拠を示さずに不安をあおって合併へ誘導しようとするのはいかがなものでしょうか。

○交付税は実質的には増えています。 
 本多市長は、「平成14年度の地方交付税が大幅に減額となった。将来は激減する」と不安をあおっていますが本当でしょうか。
普通交付税は、平成13年度からその一部が臨時財政対策債に振替えられました。これは、国の財源手当の問題であって、形としては市町村の借金ですが、その返済時点でその全額が普通交付税で措置されます。市町村にとっては、財源としては、地方交付税となんら変わるものではありません。国の地方財政計画では、この臨時財政対策債を含めてみると、交付税は13年度も14年度もそれぞれ増えているのです。交付税が減ったというのは、その多くが実質ではなく臨時財政対策債に振替えたという現象面に過ぎないのです。
交付税がこんなに減らされ「市町村の存立が危ぶまれる」(本多発言)と、合併をいうのは、事情を知らないことからの誤解か、さもなくば、合併をすすめるために意図した「ごまかし」です。


1、地方交付税と臨時財政対策債 地方財政計画 「議会と自治体」誌より

 各年度の地方財政計画から (総務省自治財政局資料)

 

12年度

13年度

14年度

地方交付税

214107億円

203498億円

195449億円

臨時財政対策債振替額

制度なし

14488億円

32261億円

合 計

214107億円

217986億円

227710億円

 

2、館山市の普通交付税と臨時財政対策債  (単位 百万円)

 

12年度決算

13年度決算

14年度予算

普通交付税

3,880

3,522

3,400

臨時財政対策債

0

250

500

合 計

3,880

3,772

3,900



○段階補正の縮小の影響額
安房の各市町村の普通交付税が実質的に減額となっているのは、段階補正の縮小による影響があります。平成14年度から3年間で割増率を段階的に下げますが、この結果、人口5万人以下の市町村ではマイナスとなり、安房では館山市以外は、マイナスの影響をうけることになります。その規模は、総務省説明では、人口4000人の自治体で影響がもっとも大きく今年度1800万円ほどです。無視できませんが、だからといって合併しなければやっていけないという規模でもありません。

○なお、私が11市町村合併による地方交付税の減額規模で40億〜50億円といっていることですが、根拠は、二つあります。

一つは安房広域で作った「市町村合併検討基礎調査最終報告書」で、平成13年度の段階補正が安房11市町村の全てにプラスで追加されていて、その合計が44億円であることが示されています。段階補正とは、10万人を基準にそれより小さい市町村には割増し加算し、逆に大きな自治体には減算する補正係数です。安房11市町村は現行では全て10万人以下ですので、すべての市町村に加算されていますが、合併すると、15万人ほどになりますので、補正係数は0.96と加算ではなく減算になります。このため、13年度で比較すると46億円規模の減額になると試算できます。

もう一つの根拠は、九月市議会での館山市当局の答弁です。平成14年度の普通交付税で安房11市町村が一つの市だったとすると、「基準財政需要額で、41億円程少なくなる」というものです。地方交付税の減額の規模は、基準財政需要額の減額になった分が影響することになるので、この答弁から、基準財政需要額の減額分、すなわち、合併による普通交付税の減額の規模は41億円程になります。

ご意見をお寄せください。(次号に続く)

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