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神田もりたか市政報告

338号 2002年12月22日日本共産党館山市議団

神田もりたか /FAX 27-5170 那古1536­-41

     http://www.h5.dion.ne.jp/~moritaka/

丸山定夫  22-3771 大網353

 

市町村「合併」と地方交付税

市町村合併は、「自主的な」合併だといわれるが、なぜ合併をしなければならないのでしょうか。自主的な検討はそれぞれどのようにされたのでしょうか。

「地方交付税が減って市町村が財政的に存立できないからだ」という人もいますが、それは、本当でしょうか。

また、合併すると地方交付税が大幅に減額になるとも言われますし、逆に合併しないと激減してしまうとも言われます。地方交付税は、合併問題を考える上で大事なポイントになっていると思うのですが、地方交付税って何なんでしょうか、という疑問がよせられました。この問題を考えてみたいと思います。

 

地方交付税は、住民の暮らしと市町村の自治を支える財政的基礎

日本全国、税収がどんなに少ない市町村に住んでいても、日本国民であれば最低これだけは保障されるという行政の水準があります。また、それを実際に実施するのは自治体であり、その自治権を憲法は保障しています。

日本国民としての最低限度の行政水準とそのための自治権を保障する財政上の裏づけが地方交付税です。その仕組みは、全国の都道府県や市町村を成り立たせている基本的な原理で、日本の社会を財政的にささえる柱になっています。

普通交付税=基準財政需要額−基準財政収入額

地方交付税は、所得税、法人税、酒税、消費税、タバコ税の一定割合をその総額としています。普通交付税と特別交付税があり、94%が普通交付税で、6%が特別交付税です。

普通交付税は、基準財政需要額から基準財政収入額を引いたものです。その市町村が標準的な行政を実施するとすれば経費がいくらかかるかを一定のルールに基づいて積算します。これが基準財政需要額です。これに対して、その市町村で標準的に見込まれる税収などの収入がいくらあるかを積算します。その75パーセント(市町村の場合。都道府県では80パーセント)が基準財政収入額となります。そして基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた分が、標準的な行政に不足する財源額で、普通交付税として国が交付することになります。こうしてどんなに税収の少ない市町村でも一定の行政水準と自治権を確保できるだけの財源が保証されているのです。

特別交付税は、特別の財政需要に対応するもので、例えば、災害などの特別の財政需要が生じた市町村などに交付されます。

 

合併すると普通交付税が減額になります

 

複数の市町村が合併して一つの市となると、それまでの市町村で必要とされた財政需要は総体としては少なくなります。このために普通交付税が減額になるのです。平成14年度で安房11市町村の基準財政需要額の合計は、312億円です。安房郡市が一つの市だったとしたら271億円ですので、41億円ほど基準財政需要額が少なくなります。これが合併した際の普通交付税の減額分となります。

市町村が合併すると必ず基準財政需要額の総体が減額となり、合併した地域全体で交付を受ける普通交付税が減額となります。しかし、減額経費のほとんどは、市町村職員の給与などで、合併した途端にただちに削減できるわけではありません。このため、市町村の合併を促進するために、合併しても一定の期間は猶予期間の特例措置として、これまでの市町村があったものとしてそれぞれの旧市町村ごとに普通交付税を算出して、その合計を合併市の普通交付税額とするという、「合併算定替」の方法がとられます。現在の特例法では、10年間はこの合併算定替の特例措置がとられ、その後5年間で、一本算定との差額を徐々になくしていくことになっています。

合併すれば確実に普通交付税は減額になるのですが、算定替の特例はそれを先延ばしして、激変を緩和する措置という意味があります。しかし、これをもって、「合併すれば、交付税がたくさんもらえる」というのは間違いではないでしょうか。

 

地方交付税の一部が臨時財政対策債に振替

一部の首長は、「地方交付税が激減し、合併しないと市町村が存立し得ない」と不安をあおっていますが、本当でしょうか?

地方交付税は、平成13年度から基準財政需要額の一部が臨時財政対策債に振替えられました。これは、国の財源手当の問題であって、形としては市町村の借金ですが、その返済時点でその全額が普通交付税で措置されます。市町村にとっては、財源としては、地方交付税となんら変わるものではありません。

国の地方財政計画では、この臨時財政対策債を含めてみると、交付税は13年度も14年度もそれぞれ増えているのです(下の表を参照)。交付税が減ったというのは、その多くが実質ではなく臨時財政対策債に振替えたという現象面に過ぎないのです。交付税がこんなに減らされ「市町村の存立が危ぶまれる」と、合併をいうのは、事情を知らないことからの誤解か、さもなくば、合併をすすめるために意図した「ごまかし」ではないでしょうか。

○交付税は実質的には増えています。 

1、地方交付税と臨時財政対策債 地方財政計画 「議会と自治体」誌より

 各年度の地方財政計画から (総務省自治財政局資料)

 

12年度

13年度

14年度

地方交付税

214107億円

203498億円

195449億円

臨時財政対策債振替額

制度なし

14488億円

32261億円

合 計

214107億円

217986億円

227710億円

 2、館山市の普通交付税と臨時財政対策債  (単位 百万円)

 

12年度決算

13年度決算

14年度決定額

普通交付税

3,880

3,522

3,423

臨時財政対策債

0

250

555

合 計

3,880

3,772

3,978

臨時財政対策債を起債せず、「へそくり」にする余裕のある市町村も

なお、臨時財政対策債は、起債を起こさなくても、起債したものとしてその元利償還分が後年の交付税で措置されるので、起債をしなくても市町村として損になることはありません。このため、住民や議会の要望が多くあっても、これに応えず、地方交付税がこんなに減らされて財源がなくなったと釈明して、臨時財政対策債の起債をせずにその財源を隠してしまうことも行なわれています。いわば財源を「へそくり」にしてしまうほどの余裕があるのですが、これを見抜く力がないと住民も議会も「交付税が激減して大変だ」という宣伝にだまされてしまいます。(つづく)

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