このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

モラル崩壊を伴った「昭和の合併」
 財政破綻の痛苦の教訓を忘れない



昭和29年5月3日に周辺六村を編入合併して館山市は現在の市域になりました。合併したその年度に館山市は大規模な財源不足となり財政破綻します。
当時、市の一般会計規模は2億2千万円でしたが、3100万円の財源不足となりました。このため、小学校の窓ガラスが壊れても修繕する金もなく、市職員の給料も分割払い、業者は市に納品しても代金がなかなか払ってもらえなかったといいます。合併しても合併算定替えで地方交付税が減ることはないと勝手な思い込みが、財政計画を誤らせ財政破綻をもたらした最大の要因でした。実際には、合併後の地方交付税は、算定替がされたにもかかわらず、25パーセントも激減したのでした。

「合併すれば、地方交付税が減らされない」などという「虚言」が現在もいわれていますが、その虚言の元となっている合併による地方交付税の算定替とは、地方交付税が減らされないということではありません。新市への地方交付税の配分の計算で、今までの市町村があったものとして計算して合算するというだけのことで、今までの市町村の地方交付税が制度改正(段階補正の見直し等)で減ることになればやはり減るのです。そして、算定替の特例期間が経過すれば、一つの市として計算されることになるので更に激減することになるのです。

合併前に借金しても、支払いは新市に「付け回し

しかし、問題はそれだけでありませんでした。市や村の財政を健全に運営するという当然のモラルが合併で崩れたのです。
合併を期に借金は新市にツケ回ししてしまえばよいということで、村長らの特別職は、農協などから村が借金する形にして、その金を失職となる自分たちに対する退職金として違法に払ってしまうことが行なわれました。これらが合併後の新市に付け回しされ、新市の一時借入金の増大として当時の決算書に記載されています。

現在の市町村合併では、この時の教訓をしっかりと生かさなければなりません。
「合併前にハコモノ公共事業はできるだけやってしまえ、財源の手当は合併後の新市にツケ回しすればよい」ということになれば、合併後の新市は巨額の債務で財政破綻することになります。「昭和の合併」後の財政破綻の二の舞です。

合併協議に今必要なことは、「かけこみ公共事業」の付け回しを認めない、しっかりとしたルールをつくることです。合併協議の入口でこの協議がまとめなければなりません。財政破綻を繰り返してはなりません。


「財政調査特別委員会」の報告

市議会には、合併直後の7月に合併後の新市建設計画の財政問題を調査することを目的に、「財政調査特別委員会」が作られました。この委員会が財政問題を調査していくなかで、旧村における合併直前の違法な財政操作などの問題が発覚してきます。そのことを市議会で報告した議事録(昭和29年9月28日付)が残されていました。
その報告では、1100万円規模の違法操作があったとしています。当時と現在の予算規模とを比較するとおよそ80倍ほどになっていますから、当時の1100万円は現在の8億8千万円ほどに相当することになります。

詳しい説明をとの求めに応じて、合併で失職となる村長らの退職金の金額を述べています。議事録に記載がある「村長退職金184万円」は、現在の予算規模でなら1億4千万円ほどに、「助役139万円」は同様に1億1千万円、「収入役80万円」は6千万円に相当します。

また、市長は合併後に議会が否決した自動車を155万円で議会の承認無しに勝手に購入したというのですが、これは1億2千万円に相当します。特別の自動車を購入したのでしょうが、155万円は破格でした。
3万人の館山市が六村合併で6万人の市になったので、当時の市長は、気が大きくなってしまったのでしょうか。

合併は、館山市がリーダーシップを発揮できる編入合併でしたが、こういう市長では、合併しても村長らの退職金の付け回しが市財政を破綻のフチに追いやることになるなどとは夢にも思わなかったのだろうと思います。
合併及び市政15周年の記念式典を行なった11月3日を過ぎると間もなく、任期途中でしたが市長を辞職してしまいました。



(昭和29年9月28日の館山市議会議事録の抜粋)
・・・・・
議長)財政調査特別委員長の報告を願う。

萩生田七郎君)合併に伴う年次建設計画を中心として、合併当時の経済措置等をも検討調査するため発足した本委員会は、・・・・概括的実態踏査を一応終了した。・・・・
二、合併の急速具体化に伴い、旧村当局の当時の苦衷と困難な事情は諒とするも一時借入金壱千百余万円中違法な操作を行なった等尚相当調査を必要とする事を認めた。・・・・・・。
尚、一時借入金の違法操作を行なった件については、今一段と調査を進め、更に旧市を含めた市財政の総括的実態を改めて市会に報告する方針である。・・・・
・・・・・
山口幸三君)只今の報告を聞くと抽象的である。この字句だけではポイントがつかめない。もうすこし掘り下げて報告願いたい。

 (休憩)
萩生田七郎君)抽象的といわれましたが、事実私どもは、からくり借金を引き継いだ事は、調査すべきですが、証人喚問する権限がないが、これがなかったので具体的な発表はできないが、参考までに数字を申し上げたい。
村長退職金184万、助役139万、収入役80万余、私委員の一人として村条例ならばやむをえないと思うが、以上に出ているといふ事は、市が一応しりぬぐいするのであるから考える余地はあると感ずる。一応資料をもち返りまして調査の上またお答えしたい。
村議会が議決し正当な借入れであってすれば、多少の不満もあると思うが、反面監査委員の報告の中に疑義があると思われるので証人喚問の手続きをとって下されば幸甚と思う。
・・・・
・・・・・
望月輝作君)七月例月検査の報告の中に、主なる支出の中に自動車の155万があるといったが、監査委員は正当な支出と認めましたかどうか。

助役)市長からの釈明を申し伝えられたいとの事ですので、申し上げます。自動車の購入問題は時の状況によりまして専決報告をしたのですが、取消しましたが、いまだ報告はしていない。市長としては、出席して特に皆様に釈明したいとの事ですが、専決はし、金は払ってしまったのですから如何様にもできないので、いろいろお考えもありませうが、ご了承願いたい。

山口幸三君)本議会に否決したものを乗り回している事は議会軽視であるので申し伝えられたい。
・・・・・
安藤亀吉君)監査報告の中に豊房農協から155万借入れしているときいたが、現在残っている150万はその当時の金か、ほかのものか。
監査委員)自動車の支出の件、執行部としては専決はいきていると申している。予算は140万超過しており、15万は予備費から出ている。否決される前に引っ込めたので否決されたものに15万支出したとは思わない。極めて妥当とは思ない。150万は自動車購入のものであります。
・・・・・・
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吉田朝次郎君)専決処分はいきていると申されたが、実際は否決されたのであります。
監査委員)市会で承認するまでにはいかなかった。報告はしなかったが事実は生きている。
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宮川正一君)助役から市長の意向を伝えられたがもっての外です。あれは立派な否決だと思います。市税の中から報酬を払って議員を出しておく必要がないと思う。市長独自の考えでやったらよいではないか。執行部の方も偉くなると民衆の声を聞かない。
・・・・・

(議会議事録は市議会に保存されています。)

(03/03/08記)


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