このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
私たちの市政アンケートには、市町村合併に期待する声とともに、疑問や不安の声もありました。49年前の「昭和の合併」ではなにが起きたのか、資料をもとに、私たちの見解を示し、みなさんとともに考えてみたいと思います。率直なご意見をお聞かせください。
1、合併したら財政破綻のにがい教訓
館山市は昭和29年5月3日に周辺六村(西岬・神戸・富崎・豊房・館野・九重の各村)を編入合併して現在の市域になりましたが、合併した29年度に大規模な財源不足となり財政破綻します。このため、小学校の窓ガラスが壊れても修繕する金もなく、市職員の給料も分割払い、業者は市に納品しても代金がなかなか払ってもらえなかったといいます。財政再建のために大増税が行なわれ、この時、新設された都市計画税は今も市民生活を圧迫しています。合併すれば財政力が強化される、地方交付税は合併算定替で減ることはない、との思い込みが、財政計画を誤らせ財政破綻をもたらした最大の要因でした。実際には、合併後の地方交付税は、25%も激減し、財政は強化どころか破綻したのでした。
「合併しても、地方交付税は減らない」と現在の合併論議でもいわれますが、そうではなかったのです。その思い込みの元となっている合併による地方交付税の算定替とは、国が市町村に配分する地方交付税の算出方法のことで、合併しても今までの市町村があるものとして算出し、それらを合計する方法で算定するということです。したがって、今までの地方交付税額を保証するものではなく、制度改正(段階補正の見直し等)で、各市町村の地方交付税が減ることになれば、算定替でもやはり減ることになります。昭和の合併で、算定替にも関わらず、合併直後に激減したのは、それまでの地方財政平衡交付金から地方交付税へと大幅な制度改正が行なわれたからでした。そして、算定替の優遇特例期間が経過すれば、その後の地方交付税はさらに確実に激減します。
合併すれば、財政規模は大きくなりますが、それで財政力が強化されるということはありえないことです。合併は、館山市民にとっては、あらたな負担をかかえることになります。
2、合併前の借金は、新市に「ツケ回し」
しかし、財政破綻の原因はそれだけでありませんでした。市や村の財政を健全に運営するという自治体としての当然のモラルが合併で崩れたのです。
「合併するなら借金しても新市にツケ回ししてしまえばよい」ということで、金融機関から村が借金する形にして、合併で失職する村長などが自分たちの退職金として違法に払ってしまうことが行なわれました。これらの借金が一時借入金として合併後の新市にツケ回しされましたが、市財政に影響を及ぼす程の巨額であったのです。
「合併前にハコモノ公共事業はできるだけやってしまえ。財源の手当は合併後の新市にツケ回しすればよい」となれば、合併後の新市は巨額の債務をかかえこみ、「昭和の合併」の財政破綻の二の舞となりかねません。現在の市町村合併では、この時の教訓をいかし、「かけこみ公共事業」のツケ回しを認めない、しっかりとした協定を合併協議の入口でまとめなければなりません。合併した後で財政破綻の愚を繰り返してはなりません。
3、「財政調査特別委員会」の報告
「昭和の合併」の直後の7月に、館山市議会は、合併後の新市建設計画の財政問題を調査することを目的に、「財政調査特別委員会」をつくりました。この委員会が財政問題を調査していくなかで、旧村における合併直前の違法な財政操作などの問題が発覚します。その報告では、1千1百万円規模の違法操作があったとしています。当時と現在の予算規模とを比較するとおよそ80倍ほどになっていますから、当時の1千1百万円は現在の8億8千万円ほどに相当することになります。
「掘り下げた報告を」との求めに応じて、合併で失職した村長らの退職金の金額を述べています。議事録に記載がある「村長退職金184万円」は、現在の予算規模なら1億4千万円ほどに、「助役139万円」は同様に1億1千万円、「収入役80万円」は6千万円に相当します。議事録は旧村の村長らの退職金として巨額のツケ回しがあった事を示しています。
また、当時の吉田市長は合併後に議会の承認無しに自動車を155万円で購入したことが問題になっていますが、これは1億2千万円に相当します。市議会の議決に反して高額の自動車を購入するなど今なら信じられないことです。
3万人の館山市が六村合併で6万人の市になれば、財政力が強くなると勘違いして、市長は、気が大きくなってしまったのでしょうか。合併は、館山市が指導権を発揮できる編入合併でしたが、合併したら村長らの退職金のツケ回しで市財政が破綻に追いやられるとは夢にも思わなかったのだろうと思います。
合併及び市政15周年の記念式典を行なった11月3日を過ぎると間もなく、任期途中でしたが市長を辞職してしまいました。
「合併の可否は市民投票で」・・・私たちの主張
「昭和の合併」は、県の指導のもとに、市長、村長らの「談合」ですすめられ、住民の目線からの議論はありません。「住民不在」で論議がすすめられたことが最大の問題点でした。
合併は、住民が主役です。デメリットも含めてすべての情報を市民に明らかにし、合併の可否は、最終的には「市民投票」で決める。これが「昭和の合併」からの最大の教訓であり、私たちの主張です。
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資料(昭和29年9月28日の館山市議会議事録の抜粋)
(村長らへの違法な退職金の疑惑についての報告部分)
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議長・斉藤喜一君)財政調査特別委員長の報告を願う。
萩生田七郎君)合併に伴う年次建設計画を中心として、合併当時の経済措置等をも検討調査するため発足した本委員会は、・・・・概括的実態踏査を一応終了した。・・・・
二、合併の急速具体化に伴い、旧村当局の当時の苦衷と困難な事情は諒とするも一時借入金壱千百余万円中違法な操作を行なった等、尚相当調査を必要とする事を認めた。・・・・・・。
尚、一時借入金の違法操作を行なった件については、今一段と調査を進め、更に旧市を含めた市財政の総括的実態を改めて市会に報告する方針である。・・・・
山口幸三君)只今の報告を聞くと抽象的である。この字句だけではポイントがつかめない。もうすこし掘り下げて報告願いたい。
(休憩)
萩生田七郎君)抽象的といわれましたが、事実私どもは、からくり借金を引き継いだ事は、
調査すべきですが、証人喚問する権限がないが、これがなかったので具体的な発表はできないが、参考までに数字を申し上げたい。村長退職金184万、助役139万、収入役80万余、私委員の一人として村条例ならばやむをえないと思うが、以上に出ているといふ事は、市が一応しりぬぐいするのであるから考える余地はあると感ずる。一応資料をもち返りまして調査の上またお答えしたい。
村議会が議決し正当な借入れであってすれば、多少の不満もあると思うが、反面監査委員の報告の中に疑義があると思われるので証人喚問の手続きをとって下されば幸甚と思う。
(議会の議決を無視して高額な自動車を購入した事件での議会の論議の部分)
望月暉作君)七月例月検査の報告の中に、主なる支出の中に自動車の155万があるといったが、監査委員は正当な支出と認めましたかどうか。
助役)市長からの釈明を申し伝えられたいとの事ですので、申し上げます。自動車の購入問題は時の状況によりまして専決報告をしたのですが、取消しましたが、いまだ報告はしていない。市長としては、出席して特に皆様に釈明したいとの事ですが、専決はし、金は払ってしまったのですから如何様にもできないので、いろいろお考えもありませうが、ご了承願いたい。(注;吉田市長は、欠席していたので助役が答弁している)
山口幸三君)本議会に否決したものを乗り回している事は議会軽視であるので申し伝えられたい。・・・・・
安藤亀吉君)監査報告の中に豊房農協から155万借入れしているときいたが、現在残っている150万はその当時の金か、ほかのものか。
監査委員)自動車の支出の件、執行部としては専決はいきていると申している。予算は140万通過しており、15万は予備費から出ている。否決される前に引っ込めたので否決されたものに15万支出したとは思はない。極めて妥当とは思はない。150万は自動車購入のものであります。・・・・・・
吉田朝次郎君)専決処分はいきていると申されたが、実際は否決されたのであります。
監査委員)市会で承認するまでにはいかなかった。報告はしなかったが事実は生きている。・・・・・
宮川正一君)助役から市長の意向を伝えられたがもっての外です。あれは立派な否決だと思います。市税の中から報酬を払って議員を出しておく必要がないと思う。市長独自の考えでやったらよいではないか。執行部の方も偉くなると民衆の声を聞かない。
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(昭和29年の議会議事録は市議会に保存されているので、当時の論議がわかります)
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◎ この「市政報告」は市費で発行しお届けしています
館山市議会日本共産党議員団は、年額20万円(ひとり10万円×二人)交付された政務調査費で、この「市政報告」をつくり新聞折込でお届けしました。
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