このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

房日新聞に私の「投稿」が、6月11日、12日の二日間にわたって掲載されました。これを紹介します。

(6月11日付)

住民に大きな痛み、「館山・安房九市町村合併」—可否は住民投票で(上)

館山市議会議員 神田守隆

館山・安房の九市町村が合併して一つの市だったら、新市に配分される地方交付税が年間35億円も減額となります。新市の収入はそれだけ少なくなるのですから、支出でも35億円の経常的経費を減らさなければなりません。

九市町村の市町村長、助役、収入役、教育長を現在の九人から一人にし、市町村議会議員(145人)を法定上限数の34人に減らしても、特別職給与費や議員報酬の節減分は、併せても7億円ほどにしかならず、これだけでは、とても経費節減は足りません。差引28億円の財源不足となり、とおからず財政破綻します。合併しても財政破綻しないためには、以下の大規模な経費節減が避けられなくなると考えられます。合併は住民の暮らしに大きな「痛み」をもたらすことになります。

 

1、合併のもたらす住民の大きな「痛み」

    旧市町村の役場はなくなり、新市には支所や出張所は設置しない。

旧市町村役場を支所や出張所とすれば、その維持は財政的に大きな負担であり、人も配置しなければならず、必要とされる規模(200人以上と思われる)の人員削減は不可能になります。館山市は富崎地区や西岬地区などかなりの距離がありますが、支所や出張所はありません。公平の原則からしても支所・出張所の設置には無理があります。

② 中学校は、現在は12校ありますが、新市の中学校区を6校区程度に統廃合。

中学校12校のうち7校では、10年後には1学年1学級程の生徒数になります。教科毎に教員を配置する教科担任制の中学校では各教科の教員配置に支障が生じることになります。校舎建設や管理に大きな経費が必要で中学校統合は財政的にも避けられません。

    鋸南町と富山町の町立国保病院の維持は困難に。

現在、二つの町立国保病院がありますが、年間1億円の資金が繰り入れられています。合併後の新市が公立とはいえ特定地域の病院に資金の繰り入れを続けることは全市的な視点から再検討は避けられなくなります。

    公共施設は新市の全体的な視点から整理統合し、公共性の薄い施設や維持管理費に多額の公費負担が必要となる施設は廃止。

合併協定項目の調整方針に「公平負担の原則による行政格差の是正」がありますが、最大の行政格差は、公共施設の設置状況が住民あたりで比較すると町村に極端に偏っていることです。この格差を解消するには、町村の公共施設を大幅に縮小し、人口規模にふさわしくなるよう見直すことが必要です。

    以上の措置でも財政的に不足する場合は、各種公共料金の値上げや増税(例えば、全市域を都市計画区域にし都市計画税を課税する等)の実施。

合併しても財政破綻せずに、住民の痛みを回避し軽減できる方法があれば、どなたでもそれを示していただきたい。それが合併論議にはぜひとも必要なことだと考えます。

(6月12日付)

住民に大きな痛み、「館山・安房九市町村合併」—可否は住民投票で(下)

 

2、合併すると新市の経常的財源は35億円も減ります。

九市町村合併すると経費節減策を強力に進めなければならないのは、新市に交付される地方交付税が大幅に減ることになるからです。安房九市町村のそれぞれに平成13年度に交付された普通交付税の合計総額は、146億1千万円でしたが、九市町村が一つの市だったとすると110億4千7百万円で、実に35億6千3百万円もマイナスになります。(「市町村合併検討基礎調査報告書」136ページより)

地方交付税は人口10万人以下の小さな市町村には割増される仕組み(「段階補正」)になっています。合併すれば新市は10万人になるので九市町村のそれぞれに付加されていた割増分がなくなり減額になるのです。これが35億6千3百万円もあるのです。

合併して、猶予期間の10年間を過ぎれば確実に地方交付税が減額となり、15年後には35億円相当の歳出削減を達成しなければ、新市は財政破綻します。国の動向によっては、より早く達成しなければならなくなることも充分考えておかなければなりません。

3、10年間で200人の職員を減らせば10年後に20億円の節減

合併後の新市の職員数は、九市町村の職員をかかえるので、1300余人(平成14年4月1日現在1368人)になります。市町村職員は、公務員として法律で身分保障されているので、職場である役所や役場がなくなっても民間事業所のように整理解雇はないので、すぐには人件費を削る経費削減はできません。

合併後10年間で60歳の定年を迎える職員が500人ほどですので、その間の採用人数を300人にすれば、その10年間で200人の削減となります。このように10年間で200人規模の職員の削減をすれば、一人の減員で1000万円として10年後には年間20億円の経費が節減になります。35億円の経費削減をするためには、この程度の人員削減は避けられないことになるのではないでしょうか。

4、200人の職員削減は、それだけ働く場がなくなること。地域の衰退に拍車

しかし、200人の職員削減は、この地域で200人の雇用の場をなくすことですから、地域の衰退をいっそう促すことになります。また、それは、住民サービスの後退をもたらすことになるのはさけられません。いずれにしても、合併は地域と住民に大きな「痛み」をもたらすことです。合併すればなにもかもよくなるという口あたりの良い「夢物語」ではありません。現実を現実として見つめなければなりません。

5、合併の可否は住民投票で

合併は住民にとって良くなることではなく、悪くなることです。問題はその度合いです。大きな合併ほど、交付税の削減割合が大きく、悪くなる度合は大きくなります。

合併のこのデメリット(悪い点)を隠したまますすめるべきではありません。合併するとすれば、住民に大きな「痛み」のあることも率直に示し、合併しなければどうなるのかも併せて示し、それでも合併を可とするのか、住民投票でその判断をもとめるべきです。全国各地で住民投票が行なわれるようになってきましたが、市町村合併は住民の理解と協力なしにはありえないことですから、当然のことではないでしょうか。

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