このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

館山・安房9市町村合併の是非を考える集い

 

 合併は破談にと報道されていますが本当はどうなの?とお考えのみなさん。

館山安房9市町村合併協議の現状と問題点について神田市議が詳しく報告をします。また、すでに昨年九月に破談になった夷隅の状況について、勝浦市議から経過をお話いただきます。

館山・安房9市町村合併のメリットとデメリット、一緒に考えてみませんか。どなたでも参加できます。お気軽にどうぞ。

 

講演1、なぜ勝浦市は夷隅4市町村合併から離脱したか

  勝浦市議(合併問題調査特別委員会前委員長) 児安利之 氏

 

講演2、なにが問題か、館山・安房九市町村合併(報告要旨は以下)

  館山市議 神田もりたか

(講演後に質疑や討論の時間をとります。ご質問、ご意見をお寄せください)

 

       日時 21日(日) 午後2時〜4時

      会場 館山コミニュテイセンター2階学習室 

 

(神田市議の報告要旨です。こんなことを聞きたいなどご意見をお寄せください)

なにが問題か、館山・安房9市町村合併

お互いの信頼感がない市町村同士では合併はありえない。

 

市町村合併は、「結婚」になぞらえて考えてみるとわかりやすい面があります。お互いの信頼感がなければ、結婚はありえませんが市町村の合併も同じです。

結婚はうまくいかなければ離婚できますが、市町村合併には離婚はありません。後戻りがないのですから、その分より慎重でなければなりません。

今回の九市町村合併は、相思相愛ではじまったわけではありません。県の合併計画にそってはじめられたもので、いわば県を仲人にしてはじめられた「お見合い」結婚です。

 

○財政の考え方が根本的に違った館山市議会と町村側。

 

法定合併協議会で合併後の新市のありかたの話しあいを始めました。結婚後の生活設計の話し合いです。ところがその話し合いの最中に、町村では合併前にハコモノ等はどんどん作ってしまえと、いわゆる「駆け込み」とみられる事業が次々に実施に移されようとしていました。

館山市議会は、新市の財政は500億円もの借金を抱えて出発するなど大変厳しいとの考えから、それらの駆け込み事業は、合併後の新市でも必要かどうか、お互いに確認したうえでなければ実施しないことにすべきだと町村に申し入れることにしました。いっしょになって新世帯をつくろうとするのですから、無駄づかいになりかねないことであり、当たり前のことだと思ったのです。

 

ところが町村からは「まだ一緒になってもいないのに余計な口出しだ、どうしようといわれる筋合いではない」とかえって逆恨みをかってしまいました。その結果、町村は駆け込み事業を減らすのではなく、堂々としたものでかえって増やしたのです。聞く耳持たずで、館山市議会の申入れは全く逆効果だったのです。

そこまで身勝手をされて、それでも何がなんでも一緒になりたいというほど、好きなわけではありません。館山市議会が「この合併はちょっと待ってくれよ。いったい何のための合併なんだ」と疑問を投げかけるのは当然ではないでしょうか。館山市議会の議員の多くが、この合併の是非そのものに疑問を持ち始めたのです。

ここに館山市議会と町村との相互の不信感がうまれました。

 

○名称問題で合併破談は大人気ないか?名称問題の位置づけ

 

新市の名称は合併協議会を立ち上げる昨年の3月時点から問題でした。

新設(対等)か、編入(吸収)か、と合併方式をどちらにするのかが、合併協議会の設立のうえで最大の論点でした。町村からは新設方式を条件とする申入れでしたが、館山市議会では編入論が有力でした。館山市議会の論議は白熱したものでしたが、最終的には、新設でも名称は「館山市」とするなど、実質的に「編入」に近い結果にする事も協議の仕方では可能ではないか、ということになり、新設で協議に応じることにしたのです。形は新設でも限りなく編入に近い合併をめざすというのが館山市議会の基本的な構えでした。名称問題は、館山市議会のこの基本的な構えの成否が問われる問題でした。

 

名称小委員会は名称を公募しましたが「館山市」が一番多く、手間取らせたがこれで新市の名称は「館山市」だろうと疑わなかったのです。ところが、実際には、名称小委員会では相互の主張がぶつかり、12月の小委員会では町村の委員から「館山市以外ならなんでもいい」と、これまでの安房市の主張は消えて公募数では三番目の「南房総市」が急浮上してきたのです。「館山市」はすっかりと嫌われてしまいました。町村側が対等合併を主張すれば八対一で「館山市」は通りません。「編入に近い合併」の可能性はなくなりました。

 

「名称で合併をこわすなど大人気ない」という意見がありますが、そうではありません。

前述のとおり財政のありかたという基本問題で相互の不信が生じた合併協議だったのです。また、「第一ボタンのかけちがい」ともいうべきことで、名称問題は相互の考え方の違いをあきらかにし相互の不信感を醸成した象徴的なテーマになったのです。総合的に判断してこれ以上協議を続けることはお互いに得策ではないので、この名称問題を契機にして破談にしようということなのです。表面的な名称の不一致だけで合併協議が壊れるのでは決してありません。その根は相互の信頼感をきづけなかったからなのです。

 

九市町村で合併してもマイナスでしかない館山市ですから、もともと合併しなければならない理由はありません。協議をつくしても信頼感をお互いにきづくことはできませんでした。お互いに信頼感のない市町村同士で合併はありえないのです。

 

町村長や町村議会が、館山市議会が館山市の名称にこだわったから合併がこわれたと非難されるのもそれぞれの立場があるのですから、それはそれでやむをえないことだと思います。館山市議会は、それらの声に耳を澄まし、今後は館山市との合併を真剣に考えているのはどこの町村かを見極めていくことになります。あるいはどこからもラブ・コールはないかもしれませんが、それもやむをえないことです。

 

○都合のよい数字を並べただけの財政シュミレーションは危険

 

15日の市議会では、合併協が公表した財政シュミレーションについて論議しました。その内容は、合併後15年間で合併したら地方交付税などの歳入では62億円減額となるが、職員の減員などで258億円の減額が見込まれるので差引で196億円の財政効果があるというものです。しかしこのシュミレーションは財政効果があるという結論を出すための都合のよい数字を並べただけでしかありません。

 

まず第一の点は、合併して人員を340人減らしたら(1224人から884人)人件費や物件費が大幅に減額となり、財政効果があるという想定になっています。しかし、なぜ新市の職員数が884人なのかですが、類似団体から想定したとなっていて現実的な検討をしたわけではありません。15年後の合併新市の人口は現在の君津市程度で面積的にも近いですが、君津市の職員数は992人です。8箇所もの支所やたくさんの公共施設をかかえる合併新市は、現在の君津市以上の職員数が必要になるかもしれません。 

 

例えば職員の数は1000人程度で、削減数は、224人かもしれません。この職員数884人のシュミレーションをAとすれば、職員数は現在の君津市程度を想定した1000人程度とするシュミレーションBが必要です。さらに旧町村に八箇所の支所を残すのですから支所の役場機能を落とさない水準で維持するとして想定し、職員数をほとんど減らさない1100人程度とした場合をCとするなど複数のシュミレーションが必要です。


B
では合併による財政効果はないという結果が出てくるのではないでしょうか。またCでは合併による財政効果はマイナスであるという結果が出てくるのではないでしょうか。職員数の見込みによって、歳出の人件費や物件費は大幅に変わってきます。

さらに、次の点が問題です。このシュミレーションは合併後の15年間だけを想定しています。その後のさらに15年間を考えるとすれば、このシュミレーション最終年度の平成32年度に注目すべきです。合併した場合は大幅に歳入が減るために大幅な人員削減(シュミレーションA)をしたとしても、この年度では合併の財政効果はなくなっています。
今後はこの水準が続くことになります。職員の削減がB程度であれば、財政効果はまちがいなくマイナスとなります。このマイナスがこれからずっと続いていくということを意味します。Cであればさらに悲劇的な結果になるのではないでしょうか。

中国の故事に「朝三暮四」というのがあります。

サルたちを大変かわいがっていた宋の国の狙公が、家計が苦しくなったので餌のトチの実を朝に三つとし夕に四つとしたいがどうかとサルたちに問うたところ、サルたちは大いに怒った。そこで狙公は、それでは朝に四つとし夕に三つとするとしたところ、サルたちは大変喜んで納得したということでした。そこから目先のことに目を奪われて全体を見られない浅はかなサルたちの思考力を笑いものにしたのがこの「朝三暮四」という故事のいわれです。

今年はサル年ですが、合併特例債や合併算定替などはみなこのトチの実の話です。最初の15年間のことだけみてその後の15年間のことは見ようともしないでは、目先のことで全体を見失うこの「朝三暮四」のサルたちと思考力にかわりがありません。私たちは狙公のサルたちではありません。

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