このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

  千葉県自治体問題研究所に寄稿したものです。   

 

       安房における市町村合併


                                   
安房郡市は、鋸山から清澄に連なる山脈の南、館山市や鴨川市などの2市8町1村の11市町村からなり、人口は14万6千人程、面積は約600平方キロメートル弱で東京23区の面積に匹敵します。
昨年11月に、館山市で総務省主催の合併リレーシンポジウムが開催され、この広大な安房郡市を一つの市に統合する安房市町村合併論が、突然として浮上してきました。辻田館山市長が総務省の意向に迎合して、平成17年3月までの合併特例法の適用期限までにと合併に向けての旗振り役を始めたからで、わずか半年程前に自らが提案し決めたばかりの「館山市総合計画」をも無視したものでした。


◎合併問題では次々にその問題点が明らかになりつつあります。
一つは地方交付税の配分の問題です。
  安房郡市各市町村は財政基盤が弱く、その財源は地方交付税に依存しています。安房郡市全体の普通交付税の総額は約190億円程ですが、合併するとこれが40〜50億円規模の大幅減になると確実に見込まれます。「合併しないと地方交付税が減らされる」と間違った宣伝が意図的に流されましたが、事実は全く逆です。合併すると地方交付税は制度的に大幅に減るのです。そのため、安房の各地域で住民生活の存立基盤の崩壊を招くことになります。

二つ目には深刻な過疎が加速される問題です。
 合併は中心となる地域と周辺部の格差を拡大します。館山市は昭和29年に周辺六村を編入合併し48年が経過しました。館山市の一地区となった旧富崎村の人口は、この間に60パーセントも減少しました。首長も議会も予算ももたない一地区となることは地域の活力を失わせ、過疎化に拍車をかけることになりました。広大な面積の安房地域がひとつの市となれば、これまでのきめ細かな市町村の行政は不可能となり、各地で深刻な過疎化がすすむのはさけられません。

三つ目は鴨川市の巨額債務の問題です。
 鴨川市はリゾート開発の失敗で101億円の債務負担をかかえていますが、これは住民1人当り33万5千円程になります。鴨川市を除く安房10市町村の債務負担は32億円で住民1人当りでは2万7千円程です。住民1人あたりでは、鴨川市は安房の他市町村平均の何と12倍もの債務負担です。鴨川市の債務負担は、全国690余市のなかでも最悪と評価される状況なのです。安房がひとつになれば住民1人当り9万円の債務負担となるので、鴨川市には都合がよいのですが、他の市町村の住民は、合併によって住民ひとりあたりの債務が3倍以上に増えるのです。この鴨川市の債務の問題をどうするかは、避けて通ることのできない問題となっています。


◎昭和の合併で財政破綻の歴史

 館山市は周辺六村を合併した昭和29年に大赤字を計上し、財政破綻(2億2千万円の予算規模で3100万円の歳入欠陥)した歴史があります。当時も現在と同様に、合併しても、合併前の町村に配分された交付税の合計を配分するという「合併算定替」がありましたが、実際に配分された交付税は大幅に減額となったことが財政破綻の最大の原因でした。さらに、また、旧村から引き継いだ債務の支払が多額であったことや、未収租税債権は、回収見込みのない不良債権が多額であったことなどでした。破綻した財政を再建するために、大増税・公共料金値上げ、住民施策の全面切り捨てが行なわれ、合併後の「新市建設計画」は棚上げとなり忘れ去られてしまうことになりました。
合併前後の決算書や議会議事録、県への合併報告書、市広報誌、館山市史などが合併の失政で住民に被害をもたらした当時の状況を今に伝えています。

◎館山市議会は、安房一本の合併に賛成は二人だけ

 9月4日に安房郡市合併任意協議会が設置されました。任意協の最大のテーマは「合併の枠組」を決めることになり、辻田館山市長や本多鴨川市長の推す安房一本論はすでに現実性を失いつつあります。特に、任意協の場で、館山市議会代表が、「館山市議会は、合併研究会をつくり論議してきたが、安房一本論賛成派は二人だけで、ほとんどは小さな合併を考えている」と発言したことが流れを変える力になりました。30日の第2回任意協では、ある町議会代表から、「そもそも合併の必要があるのかどうか、その是非を含めて考えるべき」との発言までがとびだしました。「各市町村の首長と議会の意向が全く違うのでは、話にならない」、「各市町村の温度差はひろがったと感じる」、など任意協議会の協議は、暗礁に乗り上げようとしています。

◎ホームページで全て公開に 住民主役の合併

「合併は住民が主役」は総務省のパンフレットの言葉ですが、私も、合併の是非を含めて、この問題はひろく住民全体の問題として共に考えていかなければならない課題だと思います。そのために、市内全戸を対象にしたビラを発行するとか、安房郡市で発行されている地方紙に合併問題の論文を寄稿するなどしてきました。さらに、合併問題を中心テーマにした「神田もりたかの市政報告」のホームページを立ち上げ、安房の合併を考えるこれまでの論文などを掲載し、そこを合併問題の考える住民の資料倉庫にしています。

また、第一回任意協議会の枠組み協議は傍聴者を排除して、非公開にされましたが、この非公開協議の議事録をいち早くこのホームページにUPするなど、このホームページの存在自体が合併推進派の「秘密主義」を打破する力になっています。「合併は住民が主役」を実践する活動には、ホームページはどうしても必要なメディアとなっていると思います。

なお、「神田もりたかの市政報告」のアドレスは、http://www.h5.dion.ne.jp/~moritaka/です。是非ご覧下さい。

                                          神田もりたか  10月11日記す
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