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安房11市町村合併に反対する
館山市議会(定数25)の多数は、安房11市町村合併に反対でしたが、17日の市議会の合併問題研究会のなかで、そのことがあらためて再確認されました。(賛成9、反対12、欠席4)
辻田館山市長は、合併任意協の会長として安房11市町村合併案を10月25日予定の任意協議会で提案するとの報道がされました。市議会の反対を押し切ってまで、なぜ安房一本にこだわった合併を急いですすめようとするのでしょうか?
私は、合併なら全て反対ではありませんが、安房11市町村合併には反対です。なぜ反対するのかその意見を述べます。
◎これまでの論戦で浮かび上がった安房11市町村合併の問題点
一つは地方交付税が大幅に減額になる問題です。
安房郡市各市町村は財政基盤が弱く、その財源は自前の市町村税は27%にすぎず、40%を地方交付税に依存しています。(平成12年度市町村決算・・「市町村合併検討基礎調査最終報告書」より)地方交付税は、安房市町村の存立にかかわる最も重要な財源になっています。
安房郡市全体の普通交付税の総額は約190億円程ですが、合併するとこれが40〜50億円規模の大幅減になると確実に見込まれます。「合併しないと地方交付税が減らされる」と間違った宣伝が意図的に流されましたが、事実は全く逆です。合併すると地方交付税はその制度の仕組みとして大幅に減るのです。この大幅減は、安房の各地域で住民生活の存立基盤の崩壊を招く規模になります。
合併によって地方交付税が一気に大幅減少するのを避けるために、10年間はこれまでの市町村があったものとして交付税を計算し、その後5年間で徐々に本来の交付税に減らしていくというのが、「合併算定替」といわれる特例措置ですが、大幅減額の時期を先延ばしするだけで、地方交付税が大幅に減ることに変わりはありません。合併の検討では、目先のことだけでなく安房地域全体の将来をもっと先まで見据えなければなりません。
二つ目には深刻な過疎が加速される問題です。
合併は中心となる地域と周辺部の格差を拡大します。館山市は昭和29年に周辺六村を編入合併し48年が経過しました。館山市の一地区となった旧富崎村の人口は、この間に60パーセントも減少しました。首長も議会も予算ももたない一地区となることは地域の活力を失わせ、過疎化に拍車をかけることになりました。
安房の11市町村の住民施策を比較すると町村の方が、館山市よりも良いというケースがかなりたくさんあります。財政力がなくてもそれぞれの町村が実状にそってきめ細かな施策をしているからです。安房11市町村の面積は、ほぼ東京23区に匹敵します。広大な安房地域が一つの市となれば、住民福祉や農業振興などそれぞれの市町村の実情にそったこれまでのきめ細かな施策は不可能となります。その結果、取り残された各地で深刻な過疎化がすすむのはさけられません。
三つ目は鴨川市の巨額債務負担の問題です。
鴨川市は市債残133億円の他に、リゾート開発の失敗で101億円の債務負担をかかえています。この債務負担は、住民1人当り33万5千円程になります。鴨川市を除く安房10市町村の債務負担は32億円で住民1人当りでは2万7千円程です。(「合併検討基礎調査最終報告書」より)
住民1人当りでは、鴨川市は安房の他市町村の何と12倍もの債務負担となり、その多さでは、全国690余市のなかでも最悪と評価される状況なのです。安房がひとつになれば、住民1人当り9万円の債務負担となるので、鴨川市には都合がよいのですが、他の市町村の住民は、一人当り債務負担が3倍以上に増えるのです。この鴨川市の巨額債務負担の問題をどうするかは、避けて通ることのできない問題となっています。
◎昭和の合併で財政破綻。
財政再建に導入された館山市の都市計画税
館山市は周辺六村を合併した昭和29年に大赤字を計上し、財政破綻(2億2千万円の予算規模で3100万円の歳入不足)しました。急いで合併したためにその直後に問題が噴きだしたのでした。
当時も現在と同様に、合併しても、合併前の町村に配分された地方交付税の合計を配分するという「合併算定替」がありましたが、実際に配分された地方交付税は大幅に減額となったことが財政破綻の最大の原因でした。さらに、また、旧村から引き継いだ債務の支払が多額であったことや、未収租税債権は、回収見込みのない不良債権が多額であったことなども原因でした。
破綻した財政を再建するために、合併後のバラ色の「新市建設計画」は棚上げとなり、大増税・公共料金全面値上げ、徴税強化、住民施策の全面切り捨てが行なわれました。この時の増税策として導入されたひとつが都市計画税で、安房郡市で館山市だけが課税しています。「昭和の合併」で生まれた都市計画税は、館山市民に今でも重税(現在は約6億円)をもたらしているのです。
合併前後の決算書や議会議事録、県への合併報告書、市広報誌、館山市史などが合併の「失政」が市民に被害をもたらした当時の状況を今に伝えています。
◎館山市議会は、安房一本の合併に賛成は少数。
市町村間で広がる「温度差」
安房郡市合併任意協議会(以下「任意協」)の最大のテーマは「合併の枠組」を決めることですが、辻田館山市長や本多鴨川市長の推す安房一本論はすでに現実性を失いつつあります。特に、任意協で、館山市議会代表が、「館山市議会は、合併研究会をつくり論議してきたが、安房一本論賛成は二人だけで、ほとんどは小さな合併を考えている」と発言したことが流れを変えました。30日の第2回任意協では、ある町議会代表から、「そもそも合併の必要があるのかどうか、その是非を含めて考えるべき」との発言があり、「各市町村の首長と議会の意向が全く違うのでは、話にならない」等の発言が続きました。こうしたなかで「安房一本で温度差が縮まった」という辻田会長の見当違いなまとめ発言が会場の失笑をかい、すかさず「各市町村の温度差はひろがったと感じる」と反論されるありさまでした。
枠組み論議は始められたばかりで私が指摘した三つの問題点等はまだ協議されていません。にもかかわらず、なぜことさらに、辻田合併協議会長(館山市長)は、安房11市町村合併を押し付けようと急ぐのでしょうか?
合併のあり方を論議するのに、まず合併特例法の期限ありきの進め方は、本末転倒です。
◎合併は住民が主役で 50年100年を見据えた論議を
「合併は住民が主役」は総務省のパンフレットの言葉ですが、合併の是非を含めて、この問題はひろく住民全体の問題として共に考えていかなければならない課題です。
48年前の「昭和の合併」は、今でも館山市政に深い傷跡を残しました。さらにこれからの50年、100年後を見据えて、どのように安房地域を考えていくのか、住民全体が考えていくべき課題です。様々な合併論などの議論が起きることを期待します。
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