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館山市在住の平本紀久雄さんと浅野ふみ子氏、中島誠氏の三者による「千葉の農漁業・環境を考えるてい談」を赤旗新聞102日と3日付が掲載しました。「館山の海と漁業を考える」貴重な記事ですので、ご紹介します。


NEWSペーパー 10月号

イワシやウミホタルから 千葉の農漁業・環境を考える
◎ 上 ◎
2002年10月2日付『しんぶん赤旗』
 千葉県館山市に在住し、漁業・環境問題にとりくむ元イワシ予報官の平本紀久雄さん。千葉県の日本共産党の浅野ふみ子と中嶋誠党県政策委員長との鼎談(ていだん)が実現しました。話題は、漁業の自給率、自然保護、イワシ、ウミホタルと広がって・・・。

漁業衰退で海岸を見張る人がいなくなる

中嶋・浅野 本を読んで、ぜひお会いしたいと思っていました。

平本 海は、問題だらけです。例えば海岸侵食は全国的にひどく、千葉がワースト3位。中心が九十九里浜です。原因は、屏風ヶ浦と大東岬のコンクリート化です。年間約20万㌧の砂が持っていかれ侵食する。道路がえぐられ、一宮の「はだか祭り」では走る距離を短くしました。漁業が衰退すると海岸を見張る人がいなくなるんです。

浅野 なるほど。

平本 漁業の自給率は、6割以下。日本では、40年前から栽培漁業による漁業回復が命題でしたが、生産が上がっていません。成功したサケの人工増殖は百年かかった。業者が欲しがるヒラメは、千葉では水温が高く生産が不安定。マダイは欲しがらない。高級魚ほど輸入に頼る。底が浅いんです。一次産業は見えるところで生産し食べる、を基本に据えないと。

浅野 本当ですね。

平本 千葉の飯岡でわずかにとれる、イシカワシラウオは、波の静かな砂利の上に付着卵を生む。だから海岸を年中、浚渫(しゅんせつ)してたら絶対とれなくなる。オスはぺたっと吸い付くので「ペタ」ともいいます。脳の形が透けて「葵の御紋」に見えるので、昔、佃の漁師は徳川家に献上していたそうです。

味も良かったアサリでさえ・・・

中嶋 東京湾横断道建設の漁業への影響は?

平本 一つは、汚れに強いアサリでさえ悪くなった。船橋のアサリはタネをまかなくても自然に再生産し、味も良かったのに。

中嶋 三番瀬など本当に心配です。

平本 直接、原因か分かりませんが漁場環境も悪化した。東京湾横断道路の建設時、館山の漁業者も補償金をもらったんですね。館山では今、北条海岸をコンクリート化し大桟橋をつくる計画が始まり、反対運動をしてます。ヘッドランド(突堤)の考案者が「北条海岸でやってはだめだ」と。潮流を変えると、黒潮からの外洋水が季節風で吹き寄せられて描く、三日月型の海岸線を壊すのです。これが図面です。

浅野 650メートルの突堤!

平本 「飛鳥」(豪華客船)を着けるそうです。60億円かけて。でも必要ないでしょ。本当の目的は、沖の自衛艦を接岸させたいんだと思う。ここは日本一のウミホタルの産地です。桟橋の工事が始まるとウミホタルが危ない。戦前は軍事目的に利用しようとました。今は観光の目玉。平和利用の方がいいですね。

浅野 でも、そこに桟橋をつくると。
 
平本 大問題です。地元では生きたイワシをカツオのエサにする、エサイワシ産業が三3(約100人)残ってます。1軒の年収が約2億、計6億円。エサを現金で100万単位で買っていくエサ買いさんがいる。のべ約3000人が一泊して約1900万円、民宿に入る。その他いろいろで10億円産業です。これをどうするのか。安定し、がんばっている漁業なのに。館山に、これに代わる産業はありません。

 【平本紀久雄】水産学博士。県水産試験場でイワシの群れの動きを予報する予報官として漁師から絶大な信頼を得る。現在は「千葉の海と漁業を考える会」などで活動。『イワシ予報官の海辺の食卓』など著書多数。

(つづく)
◎ 下 ◎
2002年10月3日付『しんぶん赤旗』
始末が悪い観光ハコモノ

浅野 私は土木技師をしていたのですが、長野のように大型開発をやめ環境を守りたいと思います。大型開発は環境と、さまざまなバランスを壊しますよね。

平本 ええ。観光のハコ物は始末が悪い。特に海では後戻りも難しい。館山は昔、船交通で江戸に近かったので進んでたんです。例えば鏡ヶ浦は幕末、近江八景になぞらえた鏡ヶ浦八景として、観光・避暑地でした。ところが鉄道・道路の時代になり遅れをとった。「観光の時代だ。ハコ物を」は、時代錯誤です。

中嶋 漁港整備そのものが漁業者の首を絞めるんですね。
 
平本 漁業者は千葉で約7000人、全国で26万人です。一番後継者がいないのが旧安房郡市。それで保障にぶら下がらざるを得ない。後継者問題は致命傷です。今、安定しているのは定置網で、髪の色がカラフルな若者が、がんばってます(笑い)。後は将来にわたり、どう受け入れるか。

浅野 水産高校の統廃合問題もありますが。

平本 それなんです。嘱託の時に高校生と接したのですが、銚子、勝浦、安房の水産高のうち安房水産が一番、漁業に就きたい子が少なかった。南ほど漁業の状況が悪いから。漁業の維持を真剣に考えないと。

中嶋 若者がやりたがらない原因に収入問題がある。調べてみたら、沿岸漁業の平均年収は200万円そこそこ。農業も外国産をバンバン入れて。

平本 農業も漁業も買い手の市場でしょ。売り手が値段つけられない。ここを何とかしたい。「この値じゃなきゃ売らないよ」「誰々さんのとったものでなきゃ」と。勝浦の春から秋にかけてのカツオはブランド物です。冬のキンメダイ、カジキも。儲かるようにしたい。漁協がその役割を果たしてないのです。

食料自給率高めないと

中嶋 真剣に食糧自給率を高めないと。中国産なら安い。が、そこに依拠せず農・漁業者が意欲を持てるよう、国がお金を出して価格保障しようじゃないかと。農・漁業が衰退し後継者もない、青年は仕事がない。両方を解決できる。ここにお金を使うべきだと強く思います。平本さんと一緒だと思いました。

地場ものを食べる運動を

浅野 県も言ってますね、千葉で取れたものを千葉で消費しようと。でも保障は何もない。

平本 本当にそうです。地場のものを食べようという運動をしなきゃ。

中嶋 今、BSE、ハムや牛乳問題など、食糧問題に関心が高まっています。「農・漁業を守れ」の声を広げましょう。

(おわり)

浅野ふみ子のホームページ より転載)

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