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安房合併「論」で浮かび上がった問題点

市町村合併で論戦

 

6月市議会で、安房合併論の問題点が、浮かび上がってきました。

神田議員の質問(6月17日)で、1、合併による普通交付税の配分が安房地域全体で大規模な減額になることは避けられないこと、2、広域合併では旧市町村間の格差が急速に拡大し中心部以外は深刻な過疎化が進行すること、3、鴨川市のかかえる巨額の借金を安房全体で分担することは無視できない問題であることなど、の問題点がはっきりしてきました。

この質問の内容を順次お知らせします。

(目次)

市議会報告№1

1、賛成論も反対論も公平に扱って、論点をあきらかに

2、市長の間違った説明は、早急に訂正を

市議会報告№2

3、合併検討基礎資料調査報告書を広報やインターネットで全面公開を

4、合併後の交付税の減額は大幅な額と見込まれるが・・・

5、全国町村議長会の「小規模町村自立の決議」は尊重すべき

市議会報告№3

  6、広域合併は、他の実例でもかえって行政の非効率をうむ

  7、広域合併は、地域間格差を拡大し、深刻な過疎地域をうみだした

  8、リゾート開発失敗でうまれた鴨川市の巨額な借金を安房全体で背負い込む?

  9、館山市を含まない内房合併論が台頭 町村からは館山市との合併論は聞こえてこない

  10、合併論議を、「まず期限ありき」で進めるべきではない

 

(六月市議会報告№1)

現在と将来の市民生活に
決定的に重要な影響を及ぼす「市町村合併」

神田)現在と将来の市民生活に、決定的に重要な影響を及ぼす市町村合併についてお尋ねします。


賛成論も反対論も公平に扱って、論点をあきらかに

神田)「合併は住民が主役です」とは総務省パンフレットの言葉ですが、これは、合併するとどうなるのか、具体的な内容を市民に示し情報の提供をする責任と義務が市長や私たち議員にもあるということだと思いますがいかがでしょうか。

合併の是非の判断やそのあり方は、充分な事実調査が必要ですし、またその事実の評価をめぐってもいろいろな意見がありうることです。市は合併を論議しようとする以上、賛成論だけでなく反対論も含めて市民が冷静に判断できるだけの充分な情報を提供すべきとおもうがどう考えていますか。

市の広報は、昭和29年の六村合併について元村長の「合併してよかった」という意見を紹介していましたが、六村合併には様々の問題がありました。合併賛成論と言う立場からしか、意見を載せないと言うことでは一方的な見方になりはしないかと危惧します。

具体的な提案ですが、市の広報の特集版をつくって、賛成意見、反対意見を公募して、それぞれ議論しあうとか、また、様々の意見の市民が自由に討論し合える場をつくるなどのことをしてはどうでしょうか。

辻田)市町村合併の議論は、賛成、反対の結論にいたるまでの過程が最も重要なことであり、この過程の情報を提供することが、市民に合併の是非を含めた判断の材料を提供することになると考えています。わが街の将来をどうしたらいいのか、という地域における「賛成論」、「反対論」双方の真剣な議論があってこそ、真の合併論議と言えるものと考えております。


市長の間違った説明は、早急に訂正を

神田)次に、2月に辻田市長は合併問題をテーマにして各地区ごとに住民懇談会を行ないましたが、その座談会で出された質問とその答えについてのメモが議員に配布されました。その内容をみて私は大変驚きました。ちょっと見ただけでも間違った説明だらけです。間違った説明を市民にするなら混乱を招くだけだと大変心配します。
 
例えば、「合併しないと交付税が減ってしまうが、合併すれば交付税は10年間は減らされない」と言う説明を各地でしたようですが、これは間違いです。合併すれば、10年間は今までの市町村があったものとして交付税額を計算するということで、普通交付税の額がこれまでどおり保障されると言うことでありません。すでにこの点については、私たちの指摘に辻田市長自身も間違いをお認めになりました。その回答書もございます。

しかし、市長が間違った事実を説明し、それを聞いた市民が間違った理解をしたという事実は消えません。間違った説明は、訂正すべきと思うがどうですか。これを訂正するのは市長の責任だと思いますがいかがですか?

辻田)地区懇談会の中で、特例措置である普通交付税の「合併算定替」や「合併特例債」などの財政支援制度について、千葉県発行の「市町村合併のあらまし」などの資料を参考として説明させていただいた。市民との懇談は、今後も時期を見て実施してまいりますが、市町村合併に対する各種支援制度や安房地域における合併協議等の説明についても、正確な情報を提供し、幅広く市民の声を聞いてまいります。

(六月市議会報告№2)


合併検討基礎資料調査報告書を広報やインターネットで全面公開を

神田)次に、市町村合併検討基礎調査報告(最終案)は、大変不十分なものですが、基礎資料としては、まとまりました。共通の議論をしていくための資料として、その全面公開を急ぐべきです。具体的には、インターネットで公開すれば、だれでもその内容を知ることができることになりますがどうお考えになりますか。

辻田)市町村合併検討基礎調査報告は、安房11市町村が、合併を検討する際の共通資料の作成を目的に、市町村合併検討の基礎データと合併効果と課題に関する客観的な予測を整理したもので、5月末に安房郡市広域市町村事務組合に報告され、市においても全議員に配布した。この調査結果は、市広報やホームページなどを活用し、広く市民に情報提供していきます。

合併後の交付税の減額は大幅な額と見込まれるが・・・

神田)安房11市町村合併では、普通交付税の一本算定による減額規模は、いくらと想定されますか? 三月議会では、普通交付税の減額の規模について、夏ごろまでには計算できると言うことでした。

市町村合併基礎調査の地方交付税見直しでは、小規模町村に付加されている段階補正が合併したことで減額となる規模が約46億円を超えることが示されている。これ以外にもさらに合併したことで減額になる部分があるので、少なく見積もっても60億円ほどの規模になるのではないでしょうか。

合併すれば11市町村で歳出で86億円の経費削減が可能だとしていますが、実際には歳入で交付税が大幅に減額になるので、財政効果は、その差引なので、それほどの効果はないことになると思いますがどうですか。

辻田)合併に係る普通交付税の算定ですが、データの正確性を期するため、交付税算出の基礎となるデータの把握と分析、及び的確な条件設定が必要であり、ある程度の期間を要します。試算の結果が得られしだい、早急に公開してまいりたいと考えています。

全国町村議長会の「小規模町村自立の決議」は尊重すべき

神田)全国町村議会議長会及び都道府県会長会は、さる5月30日に「小規模町村自立に関する決議」をし、合併圧力に批判の意思を表明しました。次のように指摘しています。

「合併を推進することのみが果たして効率的な行政を確保し、真の地方分権の推進に繋がるものか、極めて疑問である。むしろ、住民と行政の協働開係を考えたとき、小規模町村であり続けることも選択の道であると考える。」
いかがお考えになりますか?

国は「押し付けではない、自主的な合併」と言う以上、この決議を尊重すべきと思うがどう思いますか。

辻田)全国町村議会議長会の「小規模町村自立に関する決議」については、5月30日に決議したとうかがっています。

一方で、首相の諮問機関である政府の『地方制度調査会』は、合併しない小規模町村の権限を縮小し、道路整備などの公共事業や福祉などに関する権限を都道府県や隣接都市に集約し、行政運営を効率化する方針を固め、合併を促進する方向で検討していくと報道されました。

市町村の自主的な判断を尊重することが市町村合併の理念であることから、全国町村議長会の決議も考慮した上で、将来のあるべき姿について住民とともに十分に検討し、合併の是非を決定すべきであると考えます。

(六月市議会報告№3)


広域合併は、他の実例でもかえって行政の非効率をうむ

神田)安房11市町村合併で生まれる市は、その面積は576.84平方キロメートルとなり、東京23区の総面積604平方キロメートルにほぼ匹敵する広さになり、関東地区では最大面積の市になるといわれます。

辻田市長は合併による人口規模のことをよく言われますが、面積も大事な点であります。同じ15万人の市であっても、広域合併は各地に出張所を設置しなければならないなど、かえって行政の意思疎通に問題を生じ、非効率性をうむことになると思われますがどのようにお考えですか。

辻田)広域合併についてですが、市町村合併により、特別職・議員・職員の削減、スポーツ施設、文化施設などの公共施設の効率的な配置などにより、行財政の効率化が図られます。また、IT関連施設を充実することなどにより、現在の行政サービスの水準を保ちつつ、広域化に対応できるものと期待しています。


広域合併は、地域間格差を拡大し、深刻な過疎地域をうみだした

神田)広域合併は、これまで以上に地域間格差を拡大することになります。広域合併の具体例に、福島県いわき市がある。旧平市では、人口が 40パーセントも増えたが、逆に旧田人村では55パーセントも減少している。

地域の格差が広域合併で、より促進された結果になった。広域合併はこのような地域間格差をより拡大する問題点があるのではないか。

辻田)安房の合併では、そういうことはないと思います。

神田)それでは、館山市の六村合併はどうだったかお尋ねします。昭和29年の合併以降、旧村(現在の地区)ごとの人口の動向はどうでしょうか。各地区別に見るともっとも落ち込みの大きい地区はどこで、どのくらい減っていますか。逆に増えているのはどこで、どのくらい増えていますか。

参事)昭和の合併直後の昭和30年から平成12年の45年間で、館山市の人口は14パーセントの減少でした。最も減少したのは、富崎地区で60パーセントの減少、続いて船形地区で44パーセントの減少でした。増えたのは館野地区で32パーセント増、館山地区で14パーセント増などです。

コメント)合併後の地域間格差の拡大は深刻です。館山市には三つの鉄道駅があります。館山駅に集中的に資金が投下され、那古船形駅や九重駅は整備がされません。中心部だけで、周辺は放置されるということが象徴的に示されています。辻田市長の「安房の合併ではそういうことはない」という発言に六村合併後の館山市の人口動態からの現実からも納得する市民はないと思います。
(参照 
館山市の地区別人口動態


リゾート開発失敗でうまれた鴨川市の巨額な借金を
安房全体で背負い込む?

神田)市町村合併基礎調査報告書の債務負担行為支出予定額として鴨川市に100億5千2百万円があります。館山市をはじめとした鴨川を除く安房の10市町村の合計額は、31億6千3百万余円ですから、鴨川市だけで館山市を含む安房の10市町村の合計よりも3倍以上にもなる巨額であります。合併すれば、合併した市町村の住民全体で負担することになるのではと危惧します。
その中味は何か、合併すれば館山市民も負担すべきものとして納得できるものなのか、この100億規模の債務負担行為の内容について、ご説明ください。

少し前ですが週刊「ダイアモンド」誌が、「この街が倒産する」と言う特集を組み、全国691都市の財政破綻度ランキングをつくり公表しました。そのなかで、後年度へのツケの割合、すなわち債務負担の一般財源に対する割合では、鴨川市は全国第7位でした。上位ランキング都市は東京周辺の都市やニュータウンなどの都市基盤整備を進めている都市で、いずれも人口急増地で、そのための先行投資としての借金でした。
その中で、鴨川市は異色です。人口が減少している都市では、ダントツであり、全国最悪というありがたくない位置にありました。

その指摘によれば、債務負担の中味は、リゾート開発だそうで、「鴨川市は通年型・本格滞在型のリゾート地への転換をめざし、コンベンションホールや観光物産センター、大学のセミナーハウスなどの誘致・建設を進めている。その用地の取得と造成に債務負担行為がなされている」ということです。このとおりだとすれば、鴨川市が行なったリゾート開発の失敗のツケを安房郡市の市町村全体で負担すると言うことになるのではないでしょうか。

辻田)鴨川市の債務負担行為支出予定額ですが、主に太海多目的公益用地取得事業に係る債務負担行為支出予定額とうかがっています。
また、合併に伴う合併関連市町村の債務負担等の分担については、合併協議会において、議論していく検討課題であると認識しています。

コメント)鴨川市の大規模な借金を背負い込むことは、感情をまじえず、冷静にみておく必要があります。この問題は、合併におけるきわめて重要な問題となるからです。辻田市長にはその認識は大変弱いと思いました。

 

館山市を含まない内房合併論が台頭
町村からは館山市との合併論は聞こえてこない


神田)辻田市長は県の合併モデルにそって安房一本化論を主張し、安房全体が合併重点支援地域に指定されました。しかし、県の合併モデル案はあくまでも参考例に過ぎないとも言われました。実際に、他の町村では、内房合併論など別の合併論もあるようです。辻田市長は、この内房合併論に対して、どのようにお考えになりますか。

辻田)合併パターンは、現在までのところ、合併重点支援地域の指定を受けた安房11市町村による合併を視野に入れて、関係市町村間で協議をかさねているところです。
今後も引き続き、千葉県から示された3つのパターンを含め、地域住民の意向を尊重しながら、関係市町村間で十分な協議を行なうとともに、結果としてそれ以外の合併パターンが出てきた場合には、その時点で、関係市町村の自主的な判断を尊重しつつ、考えてまいりたい。

コメント)三芳の安藤村長は、3万人の人口規模を想定した合併を摸索すると村議会で表明しました。鋸南町の白石町長は、内房合併論を提唱しています。館山市を含む合併をという町村長の積極的な声は聞こえてきません。千葉県の合併案でというのは辻田市長だけということになるのかもしれません。
辻田市長は安房一本論を強調し、すでに基本的には首長の理解を得ていると強調してきましたが、事実は大違いでした。


合併論議を、「まず期限ありき」で進めるべきではない

神田)合併論議は、最初の枠組みの段階から長期の検討を要することになると思われます。合併の是非を含めて充分な論議をすべきで、合併特例法の期限を理由に、まず期限ありきのすすめ方はすべきでないと思うがどうお考えですか?

辻田)合併特例法の期限についてですが、地方分権、情報化、国際化のためには市町村合併が必要であり、合併特例法の有利な制度を利用することが合併の糸口につながるものと考えています。
館山市としては、千葉県より合併重点支援地域の指定を受けた以上は、合併特例法の期限を一つの目安として合併の是非を枠組みなどをふくめ、関係市町村間で十分な合併協議を重ね、後世に悔いを残さぬように努力してまいりたいと考えています。


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