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普通乗車券
普通片道乗車券
阪神急行電鉄 時代その7
神戸今津宝塚線連絡券について
 阪神急行電鉄では大正9年(1920年)の神戸線開通後、神戸線と宝塚線で別々の運賃制度を採用したため、両線を乗り継ぐ乗客のために神戸今津宝塚線連絡券(以降、神宝連絡券と省略)という乗車券が各駅で発行されていました。

 なお、十三経由「三国」発着の券は神戸線用第2期の項目で前述のとおり、大正10年以降神戸線の運賃体系に組み込まれましたので「三国」発着の神宝連絡券は宝塚経由の「小林」のみ、また「宝塚」発着の連絡券は十三経由の「神崎川」のみの発行となりました。
 西宝線開通後の神宝連絡券の運賃は、阪神急行電鉄沿線御案内には以下のように記載されていますが、さらに細かく設定されていましたので、そのあたりのことは「神宝連絡券(西宝線開通後)」の項目で解説します。
阪神急行電鉄 沿線御案内 昭和3年阪神急行電鉄 沿線御案内 昭和5年
神宝連絡券(西宝線開通前) 大正9年〜大正10年
神宝連絡券(西宝線開通前) 4区券  神宝連絡券(西宝線開通前) 6区券
 画像上の2枚は大正9年(1920年)に発行された神宝連絡券の4区券と6区券です。
 当時はまだ西宝線(西宮北口〜宝塚間)が開通していなかったため、神戸線と宝塚線を乗り継ぐ乗客はすべて十三経由となっていました。券面には「のりかへ十三」と表記されています。
 画像上左の神戸〜三国間片道券は神戸線用の4区券と同額であったため、その後神戸線用4区券で代用されました。
 画像上右の御影〜宝塚間片道券は西宝線の開通で廃止されました。御影〜宝塚間は西宝線開通前が十三経由神宝連絡券で55銭、西宝線開通後が西宮北口経由神戸線用券で31銭ですので、かなりの値下がりとなっています。

神宝連絡券(西宝線開通後) 大正10年〜昭和5年ごろ
神宝連絡券(西宝線開通後) 2区券
 大正10年(1921年)の西宝線開通後、神宝連絡券は十三経由と宝塚経由の二通りできるようになりました。しかし十三経由になるか宝塚経由になるかということは区間ごとに設定されていまして、券面には「のりかへ十三」「のりかへ宝塚」のどちらかが表記されて、その切符の乗り換え駅が決められていました。

 画像上は区間境界駅発行の花屋敷・小林間神宝連絡片道2区券です。経由設定は宝塚だけですので券面には「のりかへ宝塚」となっています。

 区間境界駅発行の神宝連絡券は以下の区間で発行されました。

 神宝連絡券 区間境界駅発行券 (区間境界駅を単色で印刷) 通行税別

 「石橋」−「神崎川」       「のりかへ十三」表記  18銭
 「石橋」−「西宮北口 伊丹」  「のりかへ十三」表記  28銭
 「石橋」−「小林」         「のりかへ宝塚」表記  26銭
 「石橋」−「御影」         「のりかへ十三」表記  38銭
 「石橋」−「神戸」         「のりかへ十三」表記  48銭
 「箕面」−「神崎川」       「のりかへ十三」表記  26銭
 「箕面」−「西宮北口 伊丹」  「のりかへ十三」表記  36銭
 「箕面」−「小林」         「のりかへ宝塚」表記  34銭
 「箕面」−「御影」         「のりかへ十三」表記  46銭
 「箕面」−「神戸」         「のりかへ十三」表記  57銭
 「花屋敷」−「神崎川」      「のりかへ十三」表記  26銭
 「花屋敷」−「伊丹」       「のりかへ十三」表記  36銭
 「花屋敷」−「西宮北口」    「のりかへ宝塚」表記  28銭
 「花屋敷」−「小林」       「のりかへ宝塚」表記  18銭
 「花屋敷」−「御影」       「のりかへ宝塚」表記  38銭
 「花屋敷」−「神戸」       「のりかへ宝塚」表記  48銭

神宝連絡券(西宝線開通後) 5区券
 区間境界駅発行券は上述のとおりですが、神戸線と宝塚線の乗り換えの便宜を図るために、区間境界駅ではない中間駅では中間駅発行の神宝連絡券も発行されました。

 画像上は石橋・花屋敷〜御影間の神宝連絡片道5区券です。この「石橋・花屋敷」という区間境界駅併記の神宝連絡券は区間境界駅ではなく中間駅で発行された券のため、区間境界駅が赤色で印刷され、ひと目で判別できるようになっていました。

 この券が発行された当時、石橋駅から「御影」までは十三経由で39銭(宝塚線1区8銭+神戸線3区10銭と通行税1銭。宝塚経由の設定は無し)、花屋敷駅から「御影」までも宝塚経由で39銭(宝塚線1区8銭+神戸線3区10銭と通行税1銭。十三経由の設定は無し)でした。すなわち、石橋駅では「御影」までの4区(「のりかへ十三」表記)の神宝連絡券、花屋敷駅では「御影」までの4区(「のりかへ宝塚」表記)の区間境界駅発行の神宝連絡券が売られていたわけです。
 しかし、上の券は5区券です。この文章で区間境界駅「石橋」「花屋敷」とせず、石橋駅・花屋敷駅としたことにお気づきになられましたでしょうか?
 つまり、区間境界駅「石橋・花屋敷」と併記されている神宝連絡券は、実際には石橋駅と花屋敷駅では売られておらず、売られたのはその中間駅にあたる池田駅と能勢口駅の2駅だけだったのです。(もちろん、神戸線の区間境界駅「御影」側の御影駅・岡本駅・芦屋川駅などでは池田駅・能勢口駅に向かう人のために売られていました。)
 池田駅も能勢口駅も十三経由の場合、「石橋」「三国」の2つの区間境界駅を越えるので宝塚線が2区16銭、「三国」から「御影」までが神戸線3区なので30銭、通行税1銭込みで47銭。宝塚経由の場合、「花屋敷」「宝塚」の2つの区間境界駅を越えるので宝塚線が2区16銭、「宝塚」から「御影」までが神戸線3区なので30銭、通行税1銭込みで47銭だったわけです。
 池田駅と能勢口駅発行の券、つまり「石橋」と「花屋敷」が赤色で印刷された券は「西宮北口」以西では十三経由、宝塚経由でも同じ運賃だったわけで、券面には「十三廻り」「宝塚廻り」と表記されているわけです。
 
 中間駅発行券ならびに迂回券の神宝連絡券は以下の区間で発行されていました。

◆ 神宝連絡券 中間駅発行券および迂回券 (宝塚線側の区間境界駅を赤色で印刷) 通行税別

 「宝塚」−「神崎川」         (宝塚駅で発行なし)        「のりかへ十三」表記     34銭
 「三国」−「小林」           (三国駅で発行なし)        「のりかへ宝塚」表記     34銭
 「石橋」−「小林」           (石橋駅で発行なし)        「のりかへ十三」表記     38銭
 「花屋敷」−「伊丹」         (花屋敷駅で発行なし)       「のりかへ宝塚」表記     38銭
 「箕面」−「西宮北口」        (迂回券)               「のりかへ宝塚」表記     44銭
 「石橋 花屋敷」−「西宮北口」   (石橋駅・花屋敷駅で発行なし) 「十三廻り」「宝塚廻り」併記 36銭
 「石橋 花屋敷」−「御影」      (石橋駅・花屋敷駅で発行なし) 「十三廻り」「宝塚廻り」併記 46銭
 「石橋 花屋敷」−「神戸」      (石橋駅・花屋敷駅で発行なし) 「十三廻り」「宝塚廻り」併記 57銭


 長い間発行されていた神宝連絡券ですが、昭和5年ごろに各駅常備の神宝連絡券は廃止されたようで、同じ様式でどの駅でも発行できる準常備式の乗車券に変わりました。そして神宝統一期の昭和17年に神宝連絡券自体が廃止となりました。
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