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回数乗車券の解説をする上で、便宜的に右画像のような名称を使いました。社章や線別、金額などが表記されている面を表紙、それをひっくり返した面を裏表紙とし、表紙の裏面は表紙裏、裏表紙の裏面は裏表紙裏としました。
回数券は様々な状態で残っています。回数券で最も重要な部分は回数券片ですので、表紙と券片すべて揃っているものが完全な状態ですが、そのようなものはほとんど残っていません。
資料として最適なのは、表紙に券片が1枚以上付いている状態のものです。この状態ですと、どの表紙の時にどの券片が使われていたか分かりますが、これもまたそれほど多く残っていません。
いちばん多く残っているものは券片が付いていない表紙だけのもの。いわゆる「実」のないものですが、発行駅・発行日が判読できるものであれば、それなりに資料的価値はあるでしょう。
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箕面有馬電気軌道開業当初、回数乗車券は普通回数乗車券と区内回数乗車券の2種類が発行されました。
左上は、箕面有馬電気軌道開業10日後の明治43年(1910年)3月20日に梅田駅で発行された普通回数乗車券(20回)です。表紙は箕面有馬電気軌道の社章を真ん中に大きくあしらい、緑色と青色の2色刷りとなっています。回数券片は白地に黒色で印刷されただけの単純なもので、箕面有馬電気軌道の社章と開業当初の区間境界駅6駅が並んでいます。
右上は明治43年10月に宝塚駅で発行された区内回数乗車券(60回)です。表紙は普通回数乗車券とは色違いで、箕面有馬電気軌道の社章が赤色、そのまわりのデザインが緑色で印刷されています。回数券片は水色地に黒色で印刷。箕面有馬電気軌道の社章と、区間境界駅「宝塚」「池田」「大阪」が表記されています。
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明治45年(1912年)、回数券の表紙が紫色のものに変わりました。
画像左上は普通回数乗車券(20回)の表紙と普通回数乗車券(60回)の表紙です。(20回の表紙は回数券片を束ねる部分が切り取られています。)
表紙が紫色のものに変わった直後は、表紙裏には何も印刷されていませんでしたが、大正時代に入ってから表紙裏に2箇条の「御注意」欄が印刷されるようになりました。(画像右上) |
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回数券片には箕面の滝と宝塚の街並みを描いた地紋(画像右上)が印刷されるようになりました。箕面有馬電気軌道の社章は地紋中央に小さく印刷されています。画像左の上が大正5年ごろまで使われた、区間境界駅「池田」表記の券、下が大正5年以降の区間境界駅「花屋敷」表記の券です。 |
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画像左上は大正5年(1916年)に発行された普通回数乗車券(60回)です。4区までの通用対応のため、回数券片の左右に2〜4の文字が印刷され、表紙もそのぶん横幅が広くなりました。
箕面有馬電気軌道時代、回数券の券片は5種類以上の様式がありましたが、4区までの通用対応の券片が箕面有馬電気軌道では一番最後の様式となりました。この箕面有馬電気軌道最後の回数券片は大量に印刷したのか、阪神急行時代に入ってもかなりの枚数が流用されました。箕面有馬電気軌道地紋の回数券片が流用された阪神急行電鉄の回数乗車券につきましては次項で紹介します。 |
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