このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


                           ヒッツキムシ

         
                                              センダングサの種子
              
ヒッツキムシの群落に突っ込む。薮道を自転車で走っていた時のことである。ヒッツキムシと言ってもムシではない。触れるとやたら衣服にくっつく野草の種子の総称であり、俗称である。センダングサの類がその代表である。

歩いている時は気をつけてヒッツキムシは避ける。山道でそんな草に道をふさがれていたら、引き返したくなる。だが、自転車に乗っている時はつい安易になり、「一瞬だ、乗り越えよう。」となる。そして、ひどい目にあう。

ヒッツキムシにぶつかったので自転車を降りる。案の定、無数の種子が付いている。ズボン、上着、靴下、靴のひも、それに軍手。軍手が一番ひどい。ヒッツキムシのすごさに恐怖さえ感じる。道に座ってひとつひとつ取り始める。300までは数えながら丁寧に取ったが、もう駄目。あとは覚えていない。ムシャクシャしながら雑に取る。トゲの部分が衣服に残る。靴下と軍手のヒッツキムシの方は見るのも嫌。家に帰ったら丸ごと捨てることにする。

振り返って、通ってしまったヒッツキムシの群落に目をやる。毒々しい黒い群落である。悪魔の群落である。子供の本などには「自分の子孫を拡げるための自然の知恵に頭が下がる。」なんて書いてあるが、こんな時、そんな心境になれる筈はない。憎らしい、だけである。いや、 恐ろしい。

だが、家に帰って、よくよく考えてみると、ヒッツキムシにはに罪はない。悪いのはこちらである。だが、そうは思わず相手が悪魔に見えてくるのだから妙である。

最近の世の中は住みにくい。しのぎを削り合う世界である。そんな住みにく い世界でひどい目にあえば、何でもないところに悪魔も出てこよう。センダングサの群落に悪魔を見た自分を思う。

でも、センダングサの種子って、ひどい姿をしているなあ、やっぱり!

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