このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
                                 猪

       
                                      引佐峠と佐久米との中間付近の赤い三角点

引佐峠から佐久米へ向かう。佐久米から引佐・尉ケ峰まで北へ上るのはよくあることだが、佐久米を目指して南に下ることは少ない。下るということは、帰りが上りとなること、あまり好まれない。だが、今回はあえて南へ下る。南へといっても山道のこと、西へ行ったり、東へ行ったりの ジグザグコースである。

西に行って東へ出ようとした時である。ひとりの男が銃をこちらに向けて立っている。ギクリとする。さすが、山の中で銃に出会うのは気持ちがいいものではない。しばらくわけもわからずにらみあっている。だが、何日か前、猟師に会って、猪狩りについて聞いたのを思い出す。それで、「猪狩りですか?」と、さりげなく聞く。ともかく気持ちがよくないのである。「ああーー」と、相手が答える。ちょっと安心する。だが、すぐ、「今、そちらの方から猪が来る。」と、言われギョッとする。そういえば犬の声が聞こえる。仲間たちの犬が猪をこちらに向けて追い出しているらしい。道理で男がこちらに銃を向けている筈である。そのまま男
は何も言わない。何も言わないが、あきらかに上へ戻れと言っているのである。こんなところで、ごたごたしていたら碌なことない。「じゃ、戻ります。」と、もう一度、さりげなく言って、今来た道を引き返す。この引き返す上りの道のむなしかったこと!とても、さりげなく、とはいかなかった。だいぶ上まで戻った所で、三角点に出会う。赤く塗られている。三角点にはよくある赤だが、この時の赤には何とも嫌なものを感じた。
              
下の方ではまだ犬が吠えていた。銃声が聞こえたような気もしたが、それが銃声であったかどうかははっきりしない。
             
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