このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
                           伊良湖岬へ

    
                                                        写真がない

風のない、どんよりと曇った日。

新居海岸の西から伊良湖岬に向かって浜を歩きはじめる。勿論、1回で伊良湖岬まで歩き切ろうとは思ってもいない。何回かに分けて歩くつもりである。

途中まで行くと、波打ち際に数人の男たちがたむろしていて、何となく気味が悪い。クレーン車まで来ている。 立ち止まって、遠くから見ていると、老人が近づいてきて、「砂の下に車が沈んでいる。」と、小さな声
で言う。 「夜、車を乗り入れ、動かなくなって 一晩置いたら、あの始末さ。」 海がめの産卵地の近く、乗り入れ禁止地区である。

車が砂の中にもぐるなんて、と一瞬思う。だが、波打ち際に立っていて、波が打ち返すたびに足元がすくわれ、沈んでいったのを思い出す。ありそうなことだ、と納得する。

その時、男たちがいっせいにこちらを見る。沈んだ車と関係ありそうなこわいオニイサンたちである。立って見ているこちらの姿に気がついたらしい。「へたにからまれてはーー」と、写真も撮らずに退散。それで、写真がない。

別の日、風は強いが快晴、伊良湖 岬をめざす。海の青、波の白が映える。やっぱり、 海には晴れが似合う。

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