このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ふと、丘の上から見ると、船が港に近づいてきている。あわてて走り出す。乗り遅れたら次の便まで2時間半は待たなければならない。さすが、必死である。走っていると、お年寄りの人達に出会う。「15分発だよ。」と、大声で教えてくれる。「間に合う?」と、大声で聞き返す。「あぶないねー。急いで!」と、励まされる。それで、また走る。また、次のお年寄りの人達に出会う。「そちらの道を行くより、あの広場を突っ切った方が早いよ。」と、教えてくれる。手を振って感謝し、広場に向かう。拍手で応援してくれる。港に近づくと、切符売り場の人が、つり銭まで用意して、切符を持ってき てくれる。船にすべり込む。ほっとする。島の人達の好意が身にしみる。 そして、ふと、考える。離島にはお年寄りが多い。そして、皆、いい人達である。そのお年寄りは、若い時、苦労して島を守ってきた人達である。だが、その未来は明るいものだろうか。そうは思えない。若者達が去り、残されたお年寄り達が肩を寄せ合って「やっと生きている」、そんな感じが離島にはある。 だが、島は微動だにせず悠然と海にうかんでいるだけだった。
離島
離島の一つ「神島」(フェリーより)
浜名湖に近い離島を回り、その九つ目の島での出来事である。
ふと、別の島「神島」で、もと海女さんが、香の花を整理しながら、つぶやいた言葉を思い出す。「若い頃は、いじめられたけどねえ。もう、その親達も、仏さんになっちゃって。今からシキミ(香の花)を持って墓参りしようと思ってね。」 だが、今の島のお年寄りに、香の花を持ってきてくれる人が残っていいるだろうか。心もとない。それを思うと、妙に身につまされて、思わず遠ざかりつつある島を振り返った。
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