このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ある男から聞いた話もひっかかっている。男の言葉を借りれば、 「昔、佐鳴湖の近くには織屋が多かった。故郷を遠く離れて、たくさんの女工が来ていたが、その女工に主人がよく手をつけた。だが、 子供が
佐鳴湖
雨の降る前、静かな佐鳴湖
佐鳴湖は浜松の西部にある湖で、一周すると歩いて約90分。よく整備されているので、本来なら歩くにはよい所である。だが、何となく歩く気がしない。別に全国ワーストワンの湖だからというわけではない。まず、人が増え、やかましくなった。平気でゴミを捨てる。犬の散歩はいいが糞の始末をしない奴さえ いる。
だから、山では普通の「こんにちは」の挨拶が素直に出ない。 街中の匂いがする。
できると、主人は知らん顔、邪けんにする。若い女工は途方にくれて佐鳴湖に身を投げた。一度、子供の好奇心から 、引き上げられた女工を見に行ったが、その姿がものすごく、毎夜うなされた。」 町に近づくにつれ、人間の泥臭さが鼻につくようになる。
やはり歩くなら、たとえ藪山と言われようと人里離れた方がいい。それに「藪山」という言葉も好きである。普通は「里山」ということが多いが、それは春、秋に歩く人の言葉である。夏、冬に歩いたら「藪山」がぴっ
たりである。夏はヘビ、クモ、生い茂った雑草。冬は冷たい木枯らし。尾根では吹き飛ばされても文句は言えない。人はまず通らない。怪我をしても助けてくれる人はいない。それが「藪山」である。
だが、その「藪山」の感触がいい。
トップページヘ
次のページへ
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |