このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
軽トラックの方は向きを変えこちらへやってくる。そして、急に目の前で止まる。男が降 りてきて「朝鮮人参、食うか?」と、変な事をいう。一瞬、ギクリとする。 「あいつ、ひどい運転しやがったので、追ってきたんだ。」 と、男はつけ加える。 どうやら男には言いたいことがあるらしい。男がひとりでしゃべるのを聞いていると、 男の方に分がある。だが、 しょせん一方的な話、と思っていると、男は荷台から袋を取り出してきて、「これが今、山で掘ってきたばかりの人参だ。」と言う。 言うだけのことを言って気が済んだらしい。「爪でむいて食べてみろ。」と、人参を差し出しながら手本をみせてくれる。 食べてみる。 確かに朝鮮人参である。 こんな山中に人参が自生しているとは知らなかった。 荷台を見ると、箱の中には、山では採ることが禁止されている野草が根っこごと放り込まれている。だが、それをとがめるほどの勇気はない。 だから、男が立ち去る時も、何も言わず、ただ 「さよなら」をしただけである。 男は多くの山にも登っているらしい。山の絵を描くのが好きだという。だが、山の男ではない。山の男は喧嘩もしないし野草を採ることもない。
トンネル
本坂旧道のトンネル
本坂峠からの細い山道を下り、本坂の旧道、自動車道に出た時である。大きな声がトンネルの手前から聞こえてくる。見ると軽トラ ックと普通車が止まっていて、二人の男がにらみ合っている。険悪な雰囲気である。しばらく見ていると、普通車から女の人が出てきて、何か言い始める。奥さんらしい。謝っているようである。 それで解決したのか、 ま もなく普通車はトンネルの向こうに消えていく。この狭いトンネル付近では、よく問題が起こる。
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